推し活と幸福度|調査の数字から考える楽しみと負担
推しの配信がある日を楽しみに仕事を終える。試合を見たあと、友人との会話が弾む。「推しがいると毎日が楽しい」という実感と、調査で示される幸福度は、どのようにつながるのでしょうか。

推し活をする人の幸福度が高かった調査もあれば、独自の総合指標で全体平均と近かった調査もあります。結果を比べるには、何を誰に尋ねた数字かを確かめる必要があります。調査を読み解きながら、自分の楽しみと負担を振り返る方法も考えます。
ASAKOの調査では、推し活をする人の幸福度が高かった
ASAKOの第5回ウェルビーイング調査は、2025年11月に全国の20〜80代2,800人を対象に実施されました。推し活をしている人の幸福度は67.3%、自己肯定度は50.6%。同社は、推し活をしていない人より、それぞれ3.9ポイント、7.5ポイント高かったと報告しています。
| 指標 | 回答者全体 | 推し活をしている人 |
|---|---|---|
| 幸福度 | 63.8% | 67.3% |
| 自己肯定度 | 43.9% | 50.6% |
表の「全体」には推し活をしている人も含まれます。同社が示した3.9ポイント、7.5ポイントは、表の二列をそのまま引いた差ではありません。ASAKOの調査解説
ここから言えるのは、調査した集団の間に差があったことです。回答者一人ひとりが推し活を始める前より幸せになった、という変化まで測った結果ではありません。
体験した人の多さと、大切に思う程度は違う
「Pontaリサーチ」調べでは、推し活を通じた直近1カ月のポジティブな体験で「癒される・安心」が35.6%と最多でした。一方、幸福感にとっての重視度は「毎日が楽しい」が最上位です。図の左は体験した割合、右は大切に思う程度を示しており、同じ順位を測っているわけではありません。
調査は2025年8月1〜11日に、国内在住の15〜89歳のPontaリサーチ会員9,904人を対象に実施されました。うち推し活をしている回答は3,573件で、集計値は人口構成比に合わせて補正されています。調査結果と集計条件
身近な例で考えると、曲を聴いて安心する日が何度もあっても、自分が特に大切にしたいのは、友人と感想を話す時間かもしれません。よくある体験と、その人にとって重い意味を持つ体験は、分けて尋ねる必要があります。
指標が違えば、同じ推し活でも見え方が変わる
同じPontaリサーチの独自指標「ととのい度」では、推し活をしている人の総合値は49.8点で、していない人も含む全体平均は50.1点でした。また、ネガティブな体験では「お金の浪費」が17.1%と最多でした。数値はすべて「Pontaリサーチ」調べです。ロイヤリティ マーケティングの公表資料
ASAKOの幸福度は割合、Pontaリサーチの「ととのい度」は独自の点数です。回答者も質問も違うため、「片方は高かったのに、片方は低い。どちらかが間違いだ」とは判断できません。二つの数値を平均して、一つの幸福度にすることもできません。
そもそも、満足する時間があることと、生活全体に負担がないことは別です。ライブそのものは楽しくても、帰宅後の睡眠や支払いが気になる場合があります。一つの「楽しかった」という回答だけで、その人の暮らし全体まで説明しようとしないことが大切です。
何を測っているか
- 楽しさ、自己肯定度、生活全体など、質問の内容
- 体験した人の割合か、大切さの点数か
- 一定期間の経験か、回答時点の気持ちか
誰を比べているか
- 調査対象の年齢や地域、回答者の集め方
- 推し活をしている人と、していない人の差か
- 同じ人の以前と今の変化を調べたものか
公表資料の読み方を整理した図です。異なる指標の数値を一つにまとめるものではありません。
集団に差があっても、理由は一つに決められない
推し活をしている人の幸福度が高かったとしても、「推し活が幸福度を上げた」と結論を急ぐことはできません。もともと時間やお金に余裕のある人が活動を始めやすい可能性や、年齢、健康状態、生活環境などの違いも考える必要があります。どの説明が当てはまるかは、別の検証を要します。
たとえば、ある人がライブへ行くようになった時期と、仕事の負担が軽くなった時期が重なっていたら、気持ちの変化の理由を一つだけに絞るのは難しいはずです。これは説明のための仮の例ですが、出来事の前後が分かっても、その間に何があったかを考える必要があることを示しています。
同じ人の経過を調べることや、生活上の違いを考慮することは、理由を考える材料になります。ただし、それだけであらゆる原因を確定できるわけではありません。企業の説明で使う場合も、調査が示した集団の差は、参加者全員に同じ効果があるという約束の根拠にはなりません。
自分の一週間は、楽しかったことと無理をしたことから振り返る
調査の平均値は、自分の楽しみ方を採点する基準にはなりません。推し活をしていても気分が晴れない日があって構いませんし、あまりお金を使わずに楽しむ人が、支出の多い人より満足していないとも限りません。
一週間を振り返るなら、「何が楽しかったか」「何を無理したか」「次に一つ変えるなら何か」を短く書く方法があります。配信を見て元気が出たことと、夜更かしで翌朝がつらかったことは、両方書いておけます。点数を付ける必要はなく、同じ状態の日が続いているかを確かめるための記録です。
- 01楽しかった場面を残す曲、試合、作品、会話など、自分にとってよかったことを書く
- 02負担になったことも書く睡眠、移動、支払い、交流で無理した部分を見る
- 03次に変えることを一つ選ぶアーカイブで見る、予定を減らす、予算を確認するなど
- 04しばらく試して見直す続ける量を決めつけず、そのときの生活に合わせる
日常を振り返るための例です。幸福度の測定法や、心の状態を診断するチェックではありません。
たとえば、深夜の配信を見ることは楽しみでも翌日がつらいなら、公式アーカイブの期間を確かめ、後から見る日を作れます。グッズの購入が楽しみだったのに支払いが心配になってきたら、次の買い物の前に、送料や遠征費を含めた支出を見直す方法があります。
友人との会話が支えになる一方で、購入数を比べる話題に疲れるなら、話したい内容や会う頻度を変えられます。「応援すること」は続けたまま、負担になっている部分だけを減らしてみても構いません。推しとの距離感 や推し活家計簿 でも、具体的な調整方法を扱っています。
楽しめない自分を、調査の数字で責めない
「推し活をする人は幸せらしいのに、自分はつらい」と感じても、その調査が個人の気持ちを判定するわけではありません。生活の事情が変わったり、作品を見る余裕がなくなったりすれば、以前と同じ楽しみ方が合わなくなることもあります。
厚生労働省の若者向けサイトでは、体を動かす、気持ちを書く、音楽を聴くなど、その日の体調や気分に合わせたセルフケアを紹介しています。つらいときに、それらを全部こなす必要はありません。眠れない、食事を取れない、仕事や学業が難しい状態が続くときは、推し活の工夫だけで抱えず、身近な人や地域の相談先、医療機関に話すことも考えてください。日本の公的なセルフケア案内
研究所メモ|売上と一緒に、満足した点と負担だった点を聞く
企業や運営が購入額、来場回数、視聴時間を測ることには、それぞれ事業上の目的があります。ただし、それらの数値だけでファンの幸福度や愛情の強さまで説明することはできません。
イベント後のアンケートなら、よかった体験に加え、待ち時間、移動、案内の分かりやすさ、支出への納得なども尋ねられます。回答しない人や、しばらく来場していない人の経験が集計から抜けることにも注意が必要です。参加を増やす提案を考える前に、今の参加方法を選びやすくできるか、負担を減らせるかを検討したいところです。
よくある質問
推し活をしている人は幸福度が高いのですか?
ASAKOの2025年調査では、実施者の幸福度は非実施者より高かったと報告されています。一方、Pontaリサーチの独自の総合指標は全体平均と近い数値でした。対象者や質問、指標が違うため、同じ尺度の数字として比較することはできません。
推し活を始めれば幸せになれますか?
紹介した調査が示すのは集団の間の差や回答の傾向で、推し活を始めたために幸福度が上がったと証明するものではありません。生活環境や、もともとの時間・お金の余裕など、別の要因も考える必要があります。
体験した割合と、その体験の重視度はどう違いますか?
体験した割合は、その経験をしたと答えた人の多さです。重視度は、回答者が幸福感にとってどれくらい大切かを答えた点数です。よくある経験が、最も大切と評価されるとは限りません。
自分の推し活の負担を振り返るには、どうすればよいですか?
楽しかった場面、無理したこと、次に一つ変えたいことを短く書く方法があります。点数で診断するものではありません。睡眠や食事、仕事や学業への影響が続く場合は、身近な人や地域の相談先、医療機関に話すことも考えてください。



