推し活×ビジネス

推し活マーケティングとは?​参加条件と​特典設計を​実例から​考える

ノートパソコンと資料が並ぶオフィスの机

推し活マーケティングは、ファンが推しを応援したり、好きなものを集めたり、記念日を祝ったりする場面に、自社の商品やサービスを役立てる企画です。キャラクターを起用するだけでなく、参加する人が、予算や時間に合わせて楽しみ方を選べる条件を整えることも含まれます。

吉野家と白銀ノエルのアプリ企画、進撃の巨人とGiGOのキャンペーンを例に、会計の単位、特典の受け取り方、告知する日程を読み解きます。これから企画する企業や店舗の担当者に向けた解説です。

ファンの行動と、自社の商品を使う場面をつなぐ

推しカラーで持ち物を揃える、生誕祭を祝う、好きな対象の魅力を周りに伝える布教など、ファンにはさまざまな楽しみ方があります。自社の企画では、そのどの場面に関わるかを具体的にします。

例えば、カフェならグッズを置いて撮影しやすい席や、記念日を祝うサービスを用意する方法があります。雑貨店なら色ごとに商品を探しやすくする工夫が考えられます。こうした案は、特定作品とのタイアップとは別に、自社で提供できる機能から検討できます。

市場規模も参考にはなりますが、客単価をそのまま決める数字にはできません。CDGとOshicocoの第3回調査は、2026年1月15〜22日に日本在住の15〜69歳男女23,125人を対象に実施され、人口推計の性年代構成に合わせて集計されました。推し活をしている人の年間支出は平均209,716円、中央値4万円でした。支出対象は2025年1〜12月で、市場規模は約4.1兆円と推計されています。

これはさまざまな活動を合わせた年間支出の回答です。平均額を見て、誰もが自社商品に同じ金額を使えると判断することはできません。価格や参加条件は、自社の商品を使う場面と、対象者が負担できる範囲を確かめて決めます。調査の前提は推し活の市場規模でも整理しています。

吉野家×白銀ノエル:ポイント交換の条件を具体的に示す

吉野家の公式案内に掲載されたアプリポイントキャンペーンは、2026年1月26日11時〜4月30日20時に行われた企画です。会計前に専用バーコードを提示し、1会計の値引き後税込500円ごとに1ポイントを貯め、特典と交換する仕組みでした。

白銀ノエルのアクリルスタンド、どんぶり、名札、ステッカー、どんぶり型ライトを並べた吉野家の特典一覧
画像引用:吉野家公式「吉野家×白銀ノエル『こんまっする!』アプリポイントキャンペーン」/©COVER

画像には、制服姿などのアクリルスタンドに加え、どんぶり、名札、どんぶり型のライトが並びます。飲食店の器や店員の名札という、自社に結びつく要素をキャラクターと組み合わせたデザインです。写真のアイテムには、それぞれ異なる交換ポイントが設定されていました。

必要ポイント交換する特典選び方・仕様
3ポイントステッカー2枚セット全2種から1種を選択
10ポイント名札ポイントを使って交換
20ポイントアクリルスタンド全3種から1種を選択
45ポイントどんぶりメラミン製
90ポイントルームライトポイントを使って交換

選べる絵柄と必要ポイントを並べて示すことで、利用者は欲しい特典の交換条件を確認できます。材質は写真だけで判断せず、公式案内のメラミン製という表記を確認します。

会計・反映・交換は、それぞれ別のルール

この企画では複数レシートの合算はできず、デリバリーと一部店舗は対象外でした。ポイントは会計日を含めて4日以内に付与され、特典と交換すると、その分が残高から減ります。

計算例として、480円の会計を2回しても合算して1ポイントにはできません。また、残高が20ポイントのときに20ポイントのアクリルスタンドと交換すれば、残高は0になります。「一度20ポイントに達すれば、その後の交換でも20ポイントが残る」という仕組みとは違います。

付与が即時ではないことも、来店前に知りたい情報です。会計直後に交換画面が使えると考えている人には、反映までの期間を示す必要があります。企画側も、会計時の操作、ポイントが付く時期、交換後の残高を別々に案内すると、利用者が確認する場所を整理できます。

交換期限は2026年5月14日24時、発送は10月下旬予定と告知されていました。食事でポイントを貯める期間と、交換を申し込む期限、受け取りの予定が異なる設計です。別途行われた、アプリ画面の提示による数量限定・ランダム配布のプレゼントとも、条件を分けて読む必要があります。公式FAQでは、交換グッズの転売など第三者への譲渡も断っています。

進撃の巨人×GiGO:景品・配布カード・物販を分ける

GENDA GiGO Entertainmentの2025年9月5日発表では、9月20日〜10月19日に行う「進撃の巨人×GiGOキャンペーン」を案内しています。こちらでは、同じ施設で楽しめる要素に、異なる入手方法がありました。

  • クレーンゲームの限定景品:ビッグジオラマアクリルフィギュア全4種、B2タペストリー全4種
  • 対象台の利用特典:500円投入するごとに、フォト風カード全4種からランダムで1枚。絵柄は選べず、数量限定
  • ポップアップストア:全国4店舗で、スタンディの展示と有料グッズ販売を実施

500円で必ずクレーン景品が取れる、という案内ではありません。対象台の利用で受け取るカードと、プレイで獲得する景品は別です。オンラインクレーンの参加条件も、店頭と分けて案内されています。

ポップアップはブシロードクリエイティブが主催し、期間は9月20日〜10月5日でした。キャンペーン全体の10月19日より先に終了します。景品の取り扱いや入荷状況にも店舗差があるため、同じキャンペーン名だけで、すべての店舗で同じ内容を同じ日まで楽しめるとは判断できません。

同じ「500円単位」でも、受け取り方が違う

図解2事例で異なる特典の条件

吉野家×白銀ノエル

  • 1会計の値引き後税込500円ごとに1ポイント
  • 反映は会計日を含めて4日以内、合算不可
  • 貯めたポイントを消費して特典と交換する
  • 交換期限と後日の発送予定を別に案内

進撃の巨人×GiGO

  • 対象クレーン500円利用ごとに特典カード1枚
  • カードはランダム・数量限定で、景品獲得とは別
  • ポップアップでは有料グッズも販売
  • 4店舗の物販はキャンペーン全体より早く終了

吉野家のポイント交換とGiGOのカード配布では、金額の単位が同じでも、手元に届くものや必要な手続きが違います。企画者は、値段や特典の写真だけでなく、何をすれば何が受け取れるのかを、一つずつ説明する必要があります。

自社の企画で決める順序と、振り返る指標

図解ファンが参加方法を選べる企画へ
  1. 利用する場面を決める撮影・記念日・食事など、自社商品が役立つ場面を確かめる
  2. 会計と特典のルールを決める金額条件、合算、選択式かランダムか、素材や仕様を定める
  3. 日程と店舗条件を揃えて告知する付与・交換・発送の時期と、別企画の終了日を明示する
  4. 参加状況と困りごとを記録する交換数や問い合わせ内容を把握し、次回の案内と条件に反映する

最初は、店頭やSNSで、自社の商品がどのように使われているかを見るところから始められます。撮影に使いやすい色、グッズを置ける空間、持ち運びやすい大きさなど、具体的な使い方を確認し、必要なら利用者に聞きます。価格の入口をいくつか用意する場合も、年間平均支出から一律に決めず、利用場面に照らして検討します。

運営では、会計担当者と案内ページで説明が揃うようにします。合算の可否、対象の注文方法、ポイントの付与時期、品切れ時の案内などを、利用者もスタッフも確認できる場所にまとめます。

終了後は売上に加え、特典ごとの交換申込数や、条件について寄せられた質問を振り返ります。ある段階の交換が少なくても、それだけで原因を価格と決めつけず、在庫、告知、手続きの分かりやすさなどを確認します。ファンの投稿や店頭での声も、次に何を改善するかを考える材料になります。

関連記事:推し活とは【完全ガイド】 /推し活の市場規模 /推し活イベントの企画方法 /推し活マーケティングの失敗事例

よくある質問

推し活マーケティングと一般的なキャンペーンの違いは何ですか?

推し活マーケティングは、ファンが推しを応援したり、好きなものを集めたり、記念日を祝ったりする場面に、自社の商品やサービスを役立てる企画です。特定作品とのコラボに加え、色別の商品陳列や撮影しやすい場所づくりなど、自社で提供できる機能から検討する方法もあります。

市場推計の平均支出額をそのまま客単価の目標にしてもよいですか?

年間支出の平均を、自社商品の目標客単価にそのまま使うことはできません。CDGとOshicocoの調査では、推し活をしている人の2025年の支出は平均209,716円、中央値4万円でした。さまざまな活動を合わせた年間の回答なので、自社の商品を使う場面と対象者の予算は別に確かめます。

飲食や店頭のコラボ企画で、参加前に確認したい条件は何ですか?

1会計あたりの金額条件や複数レシートの合算可否、ポイント付与までの日数、対象外となる注文方法(デリバリーなど)、そして特典が選択式かランダムかといった参加ルールです。これらが曖昧だと店頭での戸惑いにつながります。

コラボを実施しなくても推し活向けの施策は始められますか?

始められます。既存の商品を推しカラーで選びやすく並べたり、グッズを置いて撮影しやすい場所を整えたりするなど、今ある商品や店舗をファンの活動に使いやすくする工夫から着手できます。

企画の成果は売上以外にどのような指標で測ればよいですか?

交換段階ごとの申込数や、対象外注文・合算不可に関する問い合わせ件数、期間中の再来店頻度、SNSでファンが自発的に使い方を紹介してくれた投稿の内容などを合わせて確認すると、次回の条件設計に役立ちます。