推し活×ビジネス

推し活×旅行会社|JTBの​ロケ協力から​考える​作品と​土地の​つなぎ方

推し活×旅行会社・観光地のイメージ

作品やアーティストの世界観と、実在する土地や風景をどう結びつけるか。旅行会社や地域の観光に関わる企業にとって、作品を好きな人がその土地に関心を持ったとき、何を案内するかが企画の論点になります。地域振興の視点から見た聖地巡礼は推し活×自治体、移動手段そのもののタイアップは推し活×鉄道・航空で整理しました。本稿では、旅行企業が作品制作の段階から関わるロケーション協力と、その後の聖地案内や旅行商品化との違いを、公表されている事実をもとに掘り下げます。

旅行企業の関わり方は「ツアー販売」だけではない

推し活と旅行会社の接点というと、コンサート遠征の交通・宿泊パックや、作品の舞台を巡るバスツアーの販売がまず思い浮かびます。しかし実際の企画では、旅行商品を発売する前の段階、つまり作品の世界観を形にする制作工程から旅行会社の知見が使われるケースがあります。

その具体例が、2026年6月30日にJTBが発表した、Studio STELLAR(星街すいせい)との共同企画「PROJECT Stargazer」です。この企画は6月29日に始動し、同日に公式YouTubeチャンネル「Suisei Channel」で公開された新曲「星をみる少女」のミュージックビデオにおいて、JTBがロケーションスカウトで協力したことが明かされました。

ここで注目したいのは、JTBが担った役割が「既存の聖地へファンを連れて行くツアーの販売」ではなく、「国内外から楽曲の世界観に合う場所を調査し、制作に協力する」という工程だった点です。発表内の本人コメントではカザフスタンの荒野に言及されており、日常の延長では出会いにくい風景を作品に取り込むために、JTBが制作のための場所探しを担ったという具体的な役割が分かります。

JTBと星街すいせいの共同企画PROJECT Stargazerの発表ビジュアル
画像引用:JTB2026年6月30日発表「プロジェクト スターゲイザー」/©Studio STELLAR ©2026 JTB Corp.

公開された発表ビジュアルを見ると、暗い星空を背景にして、左側に星街すいせい、中央にStargazerのロゴ、そして右側に塔とアンテナのような構造物が配されています。中央のロゴの下には「Hoshimachi Suisei × JTB」と記されており、アーティストのキャラクター、企画名、旅行企業名、そして象徴的な風景を一枚の画面でつなぐ構成になっています。

ただし、このビジュアルや発表内容を読み解く際には、表現されている世界観と、現時点で手配可能な旅行サービスとを分けて受け止める必要があります。画像に描かれた塔やアンテナのような構造物について、実際の所在地がどこであるか、あるいは一般の旅行者が立ち入って見学できる場所なのかといった点は、この画像からは特定できません。また、2026年6月30日の発表時点では、ファンが購入できる募集型旅行商品や、具体的な旅行日程、料金、撮影地の自由見学に関する条件は示されておらず、今後の展開については公式サイトで案内される予定となっています。

「ロケ協力」「聖地案内」「旅行商品化」の3つの段階

旅行企業や企画担当者がコンテンツと土地をつなぐ際、またファンが発表を見て行動を起こす際には、「制作へのロケーション協力」「ファン向けの聖地案内」「購入できる旅行商品化」という3つの段階を区別しておくと混乱が防げます。

図解作品と土地をつなぐ際に区別したい工程(企画上の整理)
  1. 1. ロケーション調査・制作協力楽曲や映像の世界観に合う場所を国内外から探し、作品づくりを支える段階
  2. 2. 企画発表・世界観の共有ビジュアルやMVを通じて作品と企業の関わりを示し、今後の展開を予告する段階
  3. 3. 聖地案内・旅行商品化の検討一般の入場可否や交通・宿泊の手配条件を調べる検討。JTBが旅行商品化を発表した意味ではない

第1の段階は、まさに「星をみる少女」のミュージックビデオで行われたようなロケーションスカウトです。ここでは「映像として楽曲の世界観に合致するか」が重視されます。コメントで触れられたカザフスタンの荒野のように、広大で非日常的な風景が選ばれることもありますが、それはあくまで作品表現のための選定です。

第2の段階は、共同企画の始動を発表し、ファンと世界観を共有する場面です。PROJECT Stargazerのビジュアルのように、キャラクターと風景、企業名を並べて提示することで、「これからどんな展開があるのだろう」という関心を生みます。この時点では、まだ具体的なツアーの募集や現地の見学案内が始まっていないこともあります。

第3の段階が、実際にファンが現地を訪れるための案内や、旅行商品の造成・販売です。もし特定の場所を聖地巡礼の対象として案内したり、ツアーとして販売したりするのであれば、一般の旅行者が安全に立ち入れるか、受け入れ施設があるか、移動手段と宿泊枠をどう確保するか、そして料金をいくらに設定するかという実務の設計が不可欠になります。発表資料に「ロケーションスカウトで協力」と書かれていることと、「誰でも同じ場所へ行けるツアーが発売された」ということは同義ではありません。この境界線を正確に把握することが、ファンにとっても企画者にとっても出発点になります。

ファンの視点:発表や映像を見て現地へ関心を向けたときに確認すること

ここからはまず、作品やアーティストを応援するファンの立場で、こうした共同企画やミュージックビデオの舞台に魅力を感じたときの向き合い方を整理します。

好きなアーティストの映像に印象的な風景や建物が登場し、そこに大手旅行会社の名前がクレジットされていれば、「いつか自分もあの景色を見に行きたい」「公式のツアーが出るのではないか」と期待するのは自然なことです。しかし、映像で見た場所をすぐに行き先として決める前に、いくつか確認しておきたい手順があります。

一つ目は、公式発表の文面で「現在募集している企画」と「今後の予定」を見分けることです。PROJECT Stargazerの発表でも、6月30日時点で明かされたのは企画の始動とMVへのロケーション協力、そして今後公式サイトで展開を案内するという予定でした。まだ旅行日程や料金、申し込み条件が出ていない段階では、公式の続報を待つのが確実です。

二つ目は、映像やビジュアルの風景から、現地の公開条件を推測しないことです。たとえば発表ビジュアルの右側に描かれた塔とアンテナのような構造物や、MV内の風景を見て、個人で場所を特定し訪問しようと考える人がいるかもしれません。しかし、撮影や制作協力で使われた場所が、一般の観光客に開放されているとは限りません。立ち入りが制限されている区域や、事前の許可が必要な施設、あるいは観光インフラが整っていない場所である可能性もあります。

三つ目は、海外の風景が関わるときの手配と条件の確認です。発表の本人コメントにはカザフスタンの荒野への言及がありましたが、もし海外の土地に関心を持ち、個人やグループでの訪問を検討する場合には、一般的な観光地以上に事前の確認が求められます。現地までの移動経路や宿泊の手配が可能かという旅行手配の基本に加え、目指す場所が一般公開されているか、入場条件や現地のルールはどうなっているかを、公式の案内や公的な情報源で確かめる必要があります。特定の国や地域への最新の渡航可否や安全条件は時期によっても変わるため、作品のイメージだけで判断せず、公式な案内が出るか、あるいは通常の旅行手配として安全に訪問できる条件が揃っているかを基準に行動を選ぶことが大切です。遠征や聖地訪問の準備を進める際にも、まずは公開されている条件の確認を最優先にしてください。

旅行企業・企画者の視点:世界観の共有から体験設計へどう橋渡しするか

次に、立場を旅行会社や地域の観光企画担当者へ移し、作品やアーティストと組んで企画を組み立てる際の論点を考えます。

この事例で確認できる旅行企業の役割は、制作に適した場所を調べることです。旅行日程や料金を案内する業務とは、確かめる相手や条件が違います。撮影のための利用と一般の旅行者の訪問を分け、それぞれに必要な情報を用意することが企画上の論点になります。

図解ロケーション協力と一般向け旅行商品・聖地案内の設計上の違い

作品制作へのロケーション協力

  • 楽曲や映像の世界観に合う風景・施設を国内外から調査する
  • 制作スケジュールや撮影・表現の要件に合わせて場所を選定する
  • 一般の旅行者が立ち入れる場所であるとは限らない

一般向けの聖地案内・旅行商品化

  • 参加者が安全に移動・滞在できる日程と交通・宿泊枠を確保する
  • 施設の一般公開条件や入場ルール、受け入れ可能人数を明確にする
  • 旅行代金や申し込み条件を定め、公式サイト等で案内を整える

訪問企画を検討するなら、候補地の管理者、一般公開の範囲、交通・宿泊や休憩場所を確かめます。映像の撮影に使えた場所でも、参加者が同じように歩けるとは限りません。JTBの発表資料には、一般向けの受け入れ条件や旅行商品は示されていません。企画側も、発表ビジュアルだけから訪問先や日程を案内しないようにします。

PROJECT Stargazerの発表済み計画とは別に、自社の企画で現地への案内が難しい場合は、権利者や土地の管理者と相談のうえ、別会場の展示やオンライン企画を検討する選択肢もあります。

旅行商品・観光施策の推し活設計に関するご相談は株式会社KAZAORIまで。推され度チェック(無料診断)もご利用ください。

関連記事:推し活×自治体/推し活×鉄道・航空/聖地巡礼とは/遠征持ち物チェックリスト

よくある質問

JTBと星街すいせいの「PROJECT Stargazer」ではツアーが発売されたのですか?

2026年6月30日のJTB発表時点では、購入できる旅行商品や旅行日程、料金、撮影地の見学条件は示されていません。6月29日公開のミュージックビデオ「星をみる少女」におけるJTBのロケーションスカウト協力と企画始動が公表されており、今後の展開は公式サイトで案内される予定です。

ロケーション協力と聖地ツアーの商品化は何が違うのですか?

ロケーション協力は、楽曲や映像の世界観に合う場所を国内外から調査し、作品制作を支える工程です。一方、旅行商品化は交通・宿泊・現地での体験枠を確保し、一般の参加者が予約・購入できる日程と料金、安全管理や入場条件を整えて販売する段階を指します。

ミュージックビデオや発表ビジュアルに映った場所へ、ファンはすぐに行けますか?

映像やビジュアルに風景や構造物が描かれていても、実際の所在地が公表されているとは限らず、一般の立ち入りや見学が認められているかも別問題です。公式の案内が出る前に現地を特定して向かうのではなく、公開範囲や入場条件に関する公式情報を確認する必要があります。

旅行会社が作品やアーティストの企画に関わる強みはどこにありますか?

既存のツアーを売るだけでなく、国内外の土地や施設に関する調査力を制作段階から提供できる点にあります。作品の世界観に合う風景を探す段階から関わることで、将来的な情報発信や関連企画へつなげる土台を作れます。

企画担当者がロケ協力から観光案内へ広げる際に注意すべきことは何ですか?

制作時の撮影許可と、公開後に不特定多数のファンが訪れる際の受け入れ条件を混同しないことです。私有地や特殊な施設、海外の遠隔地などが関わる場合、現地に行けるか、見学できるか、旅行商品として手配できるかを段階ごとに切り分けて案内を設計する必要があります。