推し活×福利厚生|推し活休暇・推し活手当の企業事例と制度設計

ライブのために休みを取る、遠征費の一部を補助してもらう。社員の推し活を支える福利厚生には、さまざまな形があります。特別休暇を新たに設ける制度と、今ある休暇をまとめて取りやすくする制度では、準備することも現場の負担も違います。
人事・労務担当者が導入や見直しを考える際に役立つよう、調査結果と5社の公式発表から、対象者・日数・支給条件を読み解きます。
推し活を支援する制度はどのくらいある?
マイナビキャリアリサーチLabの2026年調査では、回答した中途採用担当者816名の11.0%が、勤務先に従業員の推し活を支援する制度があると答えました。従業員50名以下の企業では3.6%、51〜300名では9.1%、301名以上では16.6%でした。これは回答企業の割合で、日本の全企業を網羅した導入率ではありません。
同調査は2026年7月1〜7日に、20〜59歳の正社員20,545名と中途採用担当者816名を対象に実施されました。社員への質問では32.3%が現在推し活をしていると回答しています。
| 調査項目 | 回答対象 | 結果 |
|---|---|---|
| 推し活を支援する制度がある | 中途採用担当者816名 | 11.0% |
| 現在推し活をしている | 正社員20,545名 | 32.3% |
| 推し活のために仕事を頑張る | 推し活をしている正社員 | 62.8% |
| 推し活がしやすい会社に魅力を感じる | 推し活をしている正社員 | 56.4% |
| 推し活の月間平均支出 | 推し活をしている正社員 | 1万4,125円 |
後半3項目は、正社員全員の回答ではなく、推し活をしている人の回答です。制度への関心を知る手がかりにはなりますが、制度を導入すれば離職率や生産性が改善するという効果まで、この調査で確かめられたわけではありません。
支援の方法は「休暇」「費用」「時間」から考える
各社の事例には、特別休暇の付与、連休取得の促進、活動費の補助、早退を含む時間の調整という違いがあります。自社の働き方に合わせて比較すると、制度名だけでは見えない課題が分かります。
休暇を取りやすくする
- 特別休暇の新設と既存休暇の連続取得を分ける
- 日数・申請時期・業務の引き継ぎを決める
活動費を補助する
- 対象支出・金額・利用回数の上限を決める
- 必要な証憑と個人情報の扱いを整理する
時間を調整する
- 特定の曜日や時間から参加できるようにする
- シフトや周囲との業務分担を調整する
手当の支出がない休暇制度でも、代替要員の確保やシフト調整は必要です。「費用をかけずに導入できる」と見積もる前に、休む人の仕事を誰がどう引き受けるかまで考えておきたいところです。
公式発表から見る5社の制度
夢展望:年度ごとに日数を定める特別休暇
夢展望は2025年11月28日、推し活休暇の新設を発表しました。一定の就業要件を満たす全社員が対象で、通年で任意に申請できます。
日数は年間概ね2〜3日。ただし、毎年固定で3日が増えるのではなく、年間休日数との調整で会社が年度ごとに定める特別休暇です。目的には推し活やイベント参加のほか、リフレッシュ、自己研鑽も含まれます。制度名を推し活休暇としながら、利用目的を広く設定している事例です。
K Village:自己負担の条件を定めた2種類の手当
K Villageは2025年7月に「#推韓(おしかん)サポート」を開始し、2026年2月10日に利用100件突破を発表しました。
| 手当 | 支給の条件 | 金額・回数 |
|---|---|---|
| 渡韓手当 | 航空費を自己負担した渡韓 | 1回1万円、上期・下期各1回まで |
| エンタメ推し活手当 | 税込8,000円以上のチケット代を自己負担した参加 | 1回1万円、上期・下期各1回まで |
両方を年2回ずつ利用すれば、合計上限は4万円という計算です。全社員へ毎年一律4万円を支給する制度ではありません。正社員に加え、アルバイトや役員の利用も報告されています。
公表された「100件」は延べ利用件数で、100人の別々の社員が利用したという意味ではありません。導入の発表に加えて利用件数を継続して把握することは、自社で制度を見直す際にも参考になります。
NSグループ:5連休以上の取得と自社施設の優待
NSグループは2025年3月19日、全国ツアー遠征連休制度などを発表しました。
案内画像には室内装飾や旅行、アフタヌーンティーの写真が並んでいます。連休を取りやすくする仕組みと、自社施設を使った社員優待という、別々の支援をまとめて紹介した画像です。
「全国ツアー遠征連休制度」は、年1回以上、5連休以上の取得を義務化する内容と案内されています。新たな有給の特別休暇を全員に5日間追加する、という説明ではありません。未取得時に上司へペナルティを課すという説明も、同社独自の運用です。
同発表ではあわせて、2025年1月から実施している推し活アフタヌーンティーの社員半額優待も紹介されています。遠征のための休みと、身近な施設で楽しむ機会の両面から支える取り組みです。
ジークレスト:推しの記念日に取る1日休暇
ジークレストは2017年12月4日、同月から始める福利厚生制度「STYLEプラス」を発表しました。その一つが、推しの記念日に1日休暇を取れる「推しメン休暇」で、お祝いの支援も案内されています。女性向けイベントへの参加補助は別の制度として掲載されています。
この発表にあるのは2017年当時の制度内容です。現在も同じ条件で続いているとは限らず、発表資料だけでは支援の具体的な内容までは分かりませんが、記念日に着目した制度設計の一例として参考になります。
favy:水曜16時以降の活動と少額補助
favyは2023年4月1日の公式ブログで、水曜出勤日の16時以降の活動に対し、最大2,000円を年5回まで補助する制度を紹介しています。
対象は人や物、2次元・3次元を問わず、パートナーや子どもとの外食も例に挙げています。社員の提案と投票から制度化された点も特徴です。丸1日の休暇だけでなく、時間の調整と少額補助を組み合わせる方法が見えてきます。曜日や金額は2023年4月当時の発表に基づく条件です。
自社で検討するときに決めておくこと
- 01目的と対象を決める推し活だけか、リフレッシュや家族との時間も含めるかを考える
- 02支援の方法を選ぶ特別休暇・連休取得・実費補助・時間調整を勤務形態に合わせる
- 03申請と引き継ぎを整える対象者・証憑・個人情報の範囲と、休む際の業務分担を決める
- 04規程を確認し利用状況を記録する労務・税務上の扱いを確認し、利用件数や困りごとから見直す
制度を設計する際は、金額や日数とあわせて対象者と利用目的も明確にします。正社員だけかアルバイトなども含むのか、推し活に限定するか自己研鑽などにも使えるかを検討します。制度名を先に決めるよりも、誰にどのような機会を用意したいかを具体的にすると、条件を考えやすくなります。
現場では、申請できることと実際に休めることをつなぐ準備が必要です。申請が集中する時期、引き継ぐ業務、代替要員を確保する方法を確認します。支給額だけでなく、シフトを調整する担当者や同僚に負担が偏らないかも考えておきます。
申請書には、支給条件を確認するために必要な情報だけを求める設計が考えられます。チケットの金額や自己負担を確かめることと、推しの名前や活動の細部まで上司に説明することは別です。職場で趣味を知られたくない人も利用しやすいよう、確認する項目や閲覧できる担当者を決めます。
休暇の新設や変更は就業規則との関係を、手当は税務上の扱いを、それぞれ専門家に確認します。導入後は利用件数だけでなく、申請をためらう理由やシフト調整で困った点も集めると、規模や勤務形態に合う制度へ改善する材料になります。
関連記事:社内推し活とは /推し活マーケティングとは /推し活の市場規模はいくら? /推し活疲れとは
よくある質問
推し活を支援する制度がある企業はどれくらいありますか?
マイナビキャリアリサーチLabが2026年7月に実施した調査では、有効回答した企業の中途採用担当者816名のうち、社員の推し活を支援する制度があると答えた割合は11.0%でした。従業員規模別では50名以下が3.6%、51〜300名が9.1%、301名以上が16.6%となっています。
推し活休暇にはどのような仕組みがありますか?
会社によって設計が異なります。夢展望の発表では年間休日数との調整により年度ごとに会社が定める概ね2〜3日の特別休暇、ジークレストの2017年発表では推しの記念日に取得できる1日の休暇、NSグループの発表では年1回以上・5連休以上の取得を義務化する仕組みが案内されています。
推し活手当はどのような条件で支給されていますか?
公表事例ごとに支給条件が定められています。K Villageの発表では、航空費を自己負担した渡韓や、税込8,000円以上のチケットを自己負担したエンタメ参加に対し、それぞれ1回1万円を上期・下期各1回まで支給するとしています。favyの2023年4月時点の制度では、水曜出勤日の16時以降の活動に対して最大2,000円を年5回まで補助する仕組みでした。
対象はアイドルやアニメの推し活だけに限定されていますか?
対象を広く設定している事例があります。夢展望は推し活やイベント参加のほかリフレッシュや自己研鑽も目的に含めており、favyの2023年発表でも人や物・次元を問わず、パートナーや子どもとの外食も対象の例に挙げています。
企業が推し活関連の福利厚生を検討する際、金銭以外にどのような課題がありますか?
休暇取得や早退に伴うシフト調整・代替要員の確保、申請時に趣味やプライバシーに関する個人情報をどこまで記載させるかという運用ルール、正社員以外の雇用形態を対象に含めるかといった点の整理が必要です。



