Jリーグと推し活|ポケモン100万個配布に学ぶ「推しとの出会い」の作り方
考えてみれば、スポーツ観戦は日本でいちばん歴史の長い「推し活」かもしれません。

推しのユニフォームを着て、推しカラーのタオルを掲げ、遠征してスタジアムに通い、チャント(コール)を歌う——サポーターが何十年も前からやってきたことは、いま推し活と呼ばれる行動の原型です。
この記事では、2026年の大型事例「ポケモン×Jリーグ」を入口に、Jリーグが30年以上かけて作り上げてきた「推される仕組み」を掘り下げます。
この記事の背景:研究所は2025年4月のnote記事「スポーツファンを”推し”に変える驚くべき仕掛けとは」以来、Jリーグ100年構想の分析、FC今治・長崎の現地研究、Podcast第59回のポケモン×Jリーグ取材(2026年8月4日配信、Spotify・YouTube)と、Jリーグの推し活化を継続的に追いかけています。本記事はその集大成を2026年の最新データで更新したものです。
事例: ポケモン×Jリーグ60クラブ、「出会い」を100万個配る
2026年に話題をさらったのが、ポケモンとJリーグ全60クラブのコラボレーションです。クラブごとにパートナーポケモンを設定し、コラボグッズを100万個規模で配布しました。
この施策の設計で注目すべき点は3つあります。
1. いきなり売らず、まず配った
- まず「クラブ×ポケモン」という出会いを無料で大量に配る
- 受け取った人が「うちのクラブのポケモン」に愛着を持つ
- 愛着が生まれてから、応援・来場・グッズ購入という行動が続く
布教の構造と同じで、推させるのではなく、推せるきっかけを配る。100万個という数字は目先の効率だけを見れば最適解ではありません。それでも配ったのは、「今日の来場者ひとり」ではなく「10年通ってくれるファンひとり」を取りにいく長期設計だからです。
2. 「ランダムじゃない」のにコレクションできる
いま、グッズの売り方でファンがいちばん嫌うのは中身が選べないランダム商法です。のべ35,866件が回答したランダムグッズに関する消費者意識調査2026では、「嫌い・非常に嫌い」が89.9%にのぼりました。
ポケモン×Jリーグの巧みさは、組み合わせがクラブごとに決まっていること。自分では選べないのに、ランダムの不快感はゼロ。それでいて「他クラブのポケモンも集めたい」というコレクション性は残る——ランダムグッズへの逆風が強まる時代の、模範解答のような設計です。
3. 相互に「沼の入口」を交換した
クラブにとってポケモンは新規ファン(子ども・家族層)の入口になり、ポケモンにとってクラブは地域との接点になる。どちらかがどちらかに乗っかるのではなく、お互いのファンダムへの入口を交換する構造になっています。詳しい分析は研究所のnote解説とPodcast第59回でどうぞ。
100年構想は「一生の推し」の設計図だった
Jリーグが1993年の開幕時から掲げてきた100年構想は、推し活の言葉に翻訳すると驚くほど現代的です(研究所の分析記事)。
- ホームタウン制 — 「どこを推すか」を地元が与えてくれる。推しに出会う最初のハードルを、生まれた場所が解決する
- 昇降格の物語 — J1からJ3まで、勝っても負けても物語が終わらない。降格の悔しさすら「来季も推す理由」になる
- 世代の継承 — 親がスタジアムに連れて行き、子が箱推しを受け継ぐ。ファンの新規獲得を「家族」が担う
アイドルの推し活が「出会い→熱狂→卒業」というサイクルを持つのに対し、Jリーグは卒業のない推し活を最初から設計していた——これが、30年かけて積み上がった最大の資産です。
「試合のない日」も推せるクラブが強い
2026年のJリーグ観戦の変化を象徴するのが、スタジアムの聖地化です(FC今治・長崎の研究記事)。
- 長崎スタジアムシティ(2024年開業)— スタジアムにホテル・アリーナ・商業施設を一体化。試合のない日も「推しの本拠地」に人が集まる、国内最大級の民間主導プロジェクト
- FC今治の里山スタジアム — 「勝敗以外の来場理由」を意図的に増やし、地域の日常にクラブを組み込む設計
推し活の言葉でいえば、これは聖地の常設化です。ライブが終われば解散する「現場」と違い、スタジアムは365日そこにある。試合日以外の362日をどう推してもらうか——Jリーグの先進クラブは、この問いにハコごと答え始めています。
サポーター文化は「推し活の先輩」
推し活の言葉でスポーツ観戦を翻訳すると、共通点の多さに驚きます。
| スポーツ観戦 | 推し活での言い方 |
|---|---|
| ユニフォーム・タオマフ | 推しカラーグッズ・参戦服 |
| チャント・応援歌 | コール |
| アウェイ遠征 | 遠征 |
| 選手の背番号を背負う | 推しの名前を身につける |
| ホームスタジアム | 聖地・ホーム |
| ファンクラブ・シーズンチケット | FC会員・全通 |
ビデオリサーチの2026年調査では「推しがいる人」が4割を超えました(出典つきのデータまとめ)。スポーツファンの多くは、自分が推し活をしていると自覚し始めています。「推し選手」「箱推し(クラブ推し)」という言葉がスポーツ紙の見出しに載る時代です。
スポーツ界が推し活市場で持つ3つの強み
- 物語が毎週更新される — 勝敗・移籍・成長。スポーツは供給が構造的に途切れないコンテンツです
- 地域と結びついている — ホームタウン制は、聖地巡礼と地域経済の仕組みを最初から内蔵しています
- 世代を超えて推せる — 親子三代で同じクラブを推す文化は、他のジャンルにはなかなかない資産です
一方で課題もあります。若年層・女性ファンの新規獲得では、エンタメ界の推し活設計(推しカラー展開、トレカ、SNS施策、生誕祭的な選手誕生日企画)から学べる余地が大きく、実際にBリーグ・プロ野球も含めた「推し活シフト」が加速しています。
推し活未来研究所メモ
ポケモン×Jリーグが示したのは、スポーツ×IPコラボの本質が「グッズの相乗り」ではなく「出会いの設計」だということです。そしてJリーグには、出会いのあとの受け皿——100年構想が育てた「一生の推し」の仕組みと、聖地化するスタジアム——がすでにあります。出会いを配る力と、推し続けられる器。この2つが揃ったとき、スポーツクラブは推し活市場でエンタメIPと並ぶ存在になる、と研究所は見ています。
スポーツ団体・クラブの推し活施策のご相談は、株式会社KAZAORIまで。推され度チェック(無料診断)はスポーツチーム向けの診断にも対応しています。
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よくある質問
スポーツ観戦も推し活に含まれますか?
含まれます。特定の選手やクラブを応援し、ユニフォームやタオルを身につけ、スタジアムに通う行動は推し活そのものです。近年は「推し選手」という言葉も一般化しています。
ポケモン×Jリーグのコラボとは何ですか?
2026年に話題になった、ポケモンとJリーグ全60クラブによるコラボ施策です。クラブごとにパートナーポケモンを設定し、コラボグッズを100万個規模で配布。「推しとの出会い」を大量に生み出す設計として注目されました。
Jリーグの100年構想とは何ですか?
1993年の開幕時にJリーグが掲げた「スポーツで、もっと、幸せな国へ。」という長期理念です。ホームタウン制と地域密着を軸に、地元のクラブを世代を超えて応援し続けられる仕組み——推し活の言葉でいえば「一生の推し」を作る構想です。


