博報堂が推し活専門チーム「偏愛会議」始動/伊藤園がWBC2026のパートナーに【週刊推し活ニュース 2025年12月26日号】

2025年12月19日〜12月25日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードは、推し活が企業の「本業」として組み込まれ始めたでした。
博報堂が12月18日に専門チーム「偏愛会議」を発足させ、自社調査で「推している人・モノ・コトがある」と答えた人が53.7%に上ることを明らかにしました。デロイト トーマツの調査でも、Z世代のうち特に15〜19歳の層で「推し活」への消費意欲が2024年より高まっていることが分かっています。推し活はもはや一部の熱心なファンの話ではなく、生活者の半数以上が関わるテーマとして扱われ始めています。
店舗やインフラの側でも動きがありました。ファミリーマートは新テーマ「あそべるコンビニ」を掲げ、店内にクレーンゲームやアミューズメントマシンを設置。マルチコピー機「ファミマプリント」も、ファンサうちわやブロマイドを作れる「推し活プラットフォーム」に生まれ変わりました。HIKKYは2026年7月開催の「バーチャルマーケット2026 Summer」を発表し、企業の出展・協賛募集を始めています。
博報堂やデロイトが、推し活を数字で読み解き始めた
博報堂「偏愛会議」始動 — 生活者と共に推し活を研究
博報堂は12月18日、「推し活」や「界隈」など強い「好き(偏愛)」を持つ生活者と共に研究を行うコミュニティ型プロジェクト「偏愛会議」を開始したと発表しました。社内の専門組織「生活者発想技術研究所(発想技研)」が主導し、アイドル・音楽・アニメ・キャラクター・スポーツなど多様なジャンルの偏愛を持つ外部研究員が参加します。同研究所が2025年3月に実施した調査では、10〜60代のうち「推している人・モノ・コトがある」と回答した人が53.7%、「所属していると思う界隈がある」と回答した人が53.3%と、いずれも過半数を占めました(AdverTimes.)。
研究所メモ: 推し活が若年層発の文化ではなく、50〜60代にも広がっていると調査で裏付けられた点が重要です。企業が「推し活マーケティング」を語るとき、ターゲットを若年層に限定する前提そのものを見直す必要があります。過半数という数字は、社内の企画会議で「推し活は一部の熱心なファンの話」という前提を崩す材料になります。
デロイト トーマツ調査 — Z世代の「ご褒美消費」
デロイト トーマツは11月28日、国内15〜79歳を対象とした「国内Z世代意識・購買行動調査」の結果を発表しました。今後消費を増やしたいものについての設問では、ミレニアル世代以降では上位に入らない「推し活」が、Z世代、特に15〜19歳の層で2024年の調査より高い回答数を示しました。EC利用率もZ世代は各カテゴリで全世代平均を上回り、衣料品やラグジュアリーでは4割以上がECを利用しています(AdverTimes.)。
研究所メモ: ミレニアル世代以降では上位に来ない「推し活」が、Z世代の中でもさらに若い15〜19歳層で伸びている点が示唆的です。推し活消費は年齢が下がるほど強まる傾向があり、今のティーン層がそのまま成人しても消費の軸として残る可能性があります。EC利用率の高さと合わせると、デジタル起点の推し活マーケティングは今後さらに重みを増します。
大谷翔平とWBC、スポーツ球団がファンに動いた
伊藤園×大谷翔平選手 — WBC2026へグローバル戦略加速
伊藤園は2024年に大谷翔平選手とグローバルアンバサダー契約を締結し、2026年3月開催の「World Baseball Classic(WBC)」でオフィシャルグローバルパートナーに就任しました。大会公式のグリーンティーに「お~いお茶」が採用され、観戦チケットが当たるキャンペーンも実施されます。同社は2001年にニューヨーク現地法人を設立し、2003年から海外展開を本格化。2025年からはMLBおよびロサンゼルス・ドジャースとも日米の緑茶カテゴリでパートナーシップ契約を結んでいます(AdverTimes.)。
研究所メモ: 2001年の海外法人設立から20年以上かけて積み上げた土台の上に、大谷選手本人が「愛飲している」という事実が乗った構図です。契約前から実際に使っていたという裏付けが、単発のCM起用ではなく大会全体のパートナー契約にまで発展しました。長期のブランド投資と、本人の実際の習慣が一致したときに初めて大きな話が動く事例です。
福岡ソフトバンクホークス — 球団自ら映画製作、没入体験を提供
福岡ソフトバンクホークスは、1年間のシーズンに密着した長編ドキュメンタリー『映画 HAWKS SPIRIT -273日の記憶-』を12月26日から全国公開します。球団による映画製作は今年で3作目。配給はローソン・ユナイテッドシネマ、製作は球団自身で、興行収入の範囲内で製作費を捻出しています。協賛社はエム・ティ・ネット、九州旅客鉄道など6社。球団公式YouTubeは広く知ってもらいたい情報を、月額制の「ホークスTV」はコアファン向けの専門的なコンテンツを担い、映画は「球場に近い臨場感」を届ける役割を担うと、制作担当の南出敏伸氏は説明しています(AdverTimes.)。
研究所メモ: 無料のYouTube、月額課金のホークスTV、そして劇場公開の映画と、メディアごとに役割を明確に分けている点が参考になります。同じファンでも熱量に応じて届け方を変え、最も熱心な層には最も没入感の高い体験を用意する。ファンクラブや会員制サービスを持つ企業にとって、コンテンツの階層設計そのものがヒントになります。
サンリオが侍ジャパンと大相撲で応援グッズを広げた
サンリオ×侍ジャパン、サンリオ×大相撲 — 伝統組織との接点づくり
サンリオのキャラクターと野球日本代表「侍ジャパン」がコラボした「侍ジャパン×サンリオキャラクターズ」のグッズが発売され、オンラインモール「HIGHGO MALL」で先行予約が始まりました。ハローキティ、マイメロディ、シナモロール、ポムポムプリンが侍ジャパンのユニフォームをまとった、ぬいぐるみマスコットや缶バッジなど全19アイテムをラインナップ。予約は2026年1月5日までで、2026年2月〜3月にはポップアップショップの展開も予定されています(超!アニメディア)。
日本相撲協会も、サンリオキャラクターズとのコラボアイテムを2026年1月7日より公式通販サイト「SuMALL」および大相撲一月場所会場の売店で発売します。ハローキティ、クロミ、ポムポムプリン、シナモロールが行司や呼出し、化粧まわし姿のお相撲さんに扮し、番付などに使われる毛筆文字「相撲字」をあしらったタオルやエプロンなど全7アイテムを展開。一月場所の会期は2026年1月11日から25日までです(インサイド)。
研究所メモ: プロ野球日本代表と大相撲という、いずれもファン層が広く年齢の高い伝統組織が、同じ週にサンリオと組んだ点が目を引きます。応援グッズという既存の需要に、なじみのあるキャラクターを重ねることで、普段グッズを買わない客層にも手が伸びやすくなる。伝統ある組織ほど、キャラクターとの掛け合わせで新しい客層への入り口を作れる余地が大きいと分かります。
飲食大手がキャラクターをコラボ商品に落とし込んだ
くら寿司×シナモロール、マクドナルド×ドラゴンクエスト — 定番メニュー化
くら寿司は2026年1月9日より全国店舗で「シナモロール」とのコラボキャンペーンを開催します。お皿を5枚返却して挑戦できる「ビッくらポン!」ではフィギュアストラップなど全6種の景品が登場するほか、税込2,500円の会計ごとにクリアファイルなどのオリジナルグッズを先着30万名に配布。1月4日からはコラボ限定の恵方巻の予約も始まります(アニメ!アニメ!)。
日本マクドナルドでは『ドラゴンクエスト』とのコラボ第2弾として、「ドラクエバーガー」3商品と限定ドリンク2商品の全5商品が2026年1月7日より発売されます。シリーズ累計の出荷・ダウンロード販売数は世界で9,500万本以上。12月27日からは乃木坂46の一ノ瀬美空が出演する新TVCMの放映も始まります(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: どちらも「食べ終えたら終わり」の外食体験に、ガチャ的な楽しみや来店回数を増やす仕掛けを重ねています。くら寿司の先着30万名という規模、マクドナルドの9,500万本という実績のどちらも、単発のコラボではなく長年蓄積したファン基盤があってこそ成立する数字です。外食チェーンにとって、コラボは客単価だけでなく来店頻度を上げる手段として機能しています。
サントリー×ドラゴンクエストVII、明治×パティシエ2人 — 飲料・菓子のコラボ
サントリー食品インターナショナルは『ドラゴンクエストVII Reimagined』とのコラボレーションを発表し、「C.C.レモン」「デカビタC」「なっちゃん」「POPメロンソーダ」の4ブランドでオリジナルパッケージの「モンスターボトル」全10種を2026年2月中旬より数量限定で発売します(インサイド)。
明治は、「きのこの山」とクラブハリエ山本隆夫シェフ、「たけのこの里」とシェ・シバタ柴田武シェフがコラボしたバレンタイン商品を発表しました。両シェフの名前に「山」「たけ」の文字が入ることから生まれた企画で、2026年1月16日からJR名古屋タカシマヤのバレンタイン催事で販売。シェフの“推し活”を楽しめるアクリルスタンドも付属します(AdverTimes.、株式会社 明治)。
研究所メモ: サントリーは既存の定番飲料にゲームのパッケージを重ね、明治は自社ブランド名と職人の名前の一致という偶然を企画に変えています。どちらも新しい商品を一から作るのではなく、すでにある資産(定番飲料、ブランド名)を出発点にしている点が共通します。ゼロから話題を作るより、手元にある資産の意外な組み合わせを探すほうが、コストをかけずに驚きを作れます。
コンビニと専門店が、店舗をファンの拠点に変えた
ファミリーマート — 「あそべるコンビニ」で店舗をアミューズメント化
ファミリーマートは12月17日、衣食住に「遊」を加えた新テーマ「あそべるコンビニ」を発表しました。店内にクレーンゲームやアミューズメントマシンを設置する「お買い物アトラクション」を展開し、プレイ料金は1回100円。アミューズメントマシン「ポケモンフレンダ」の筐体も都内2店舗で試験導入されています。マルチコピー機「ファミマプリント」は、ファンサうちわやブロマイドを作れる「推し活プラットフォーム」として機能を拡張。会場では『呪術廻戦』『原神』とのコラボ商品も先行公開されました(PR TIMES、family.co.jp)。
研究所メモ: コンビニという最も日常的な場所に、ゲームセンターと推し活グッズ制作機能を同時に持ち込んだ点が大胆です。全国2万店舗規模のインフラをそのまま推し活の拠点に転用できれば、専用施設を持たない企業でも広い接点を作れます。既存の店舗網をどう転用するかという発想は、小売業以外の企業にも応用できます。
コメダ珈琲店、CAPCOM STORE、ニューエラ×PlayStation — 売り場の拡張
BANDAI SPIRITSは「一番くじ 珈琲所コメダ珈琲店〜ほっこりなひととき〜」の全ラインナップを発表しました。A賞は「コメダブレンド」デザインの卓上加湿器、ラストワン賞は約56cmの「クリームソーダ」クッションで、2026年1月9日よりファミリーマートや書店などで1回700円で順次発売されます(インサイド)。
カプコンは2026年2月13日、アンテナショップ「CAPCOM STORE」の新店舗を池袋PARCOにオープンすると発表しました。2019年11月開業の渋谷PARCO店に続く都内2店舗目、国内では6店舗目となります(インサイド)。
ニューエラは、30周年を迎えた「PlayStation」との初コラボレーションコレクションを2026年1月8日に発売します。ロゴやコントローラーの「△〇×□」マークをあしらったヘッドウェアやアパレルなど幅広いアイテムを、全国のニューエラストアで展開します(インサイド)。
研究所メモ: 自社ブランドを一番くじの題材にする、専門店の出店を増やす、他業種ブランドと初コラボする。3社とも手法は違いますが、いずれも「すでに持っているファンをどう拾い上げるか」という発想が共通しています。新しいファンを開拓するより、すでにブランドを知っている人の購入機会を増やすほうが、投資対効果を見積もりやすい打ち手です。
企業のXR・メタバース活用が、ライブと交流を広げた
アイマス如月千早 武道館公演 — ソニーのロボット技術「groovots」導入
アイドルマスターシリーズの如月千早による日本武道館単独公演「OathONE」が2026年1月24日・25日の2日間開催され、ソニーが開発するロボットシステム「groovots」が演出に導入されることが発表されました。LEDパネルを備えたロボットが映像や音響と連動した空間表現を行うもので、幅約0.3メートル・高さ約1.3メートルのロボット複数台に加え、約2メートル四方の大型モデルも初投入されます。バンダイナムコとソニーの業務提携の一環で、演出の企画・制作をバンダイナムコエンターテインメントが、技術ディレクションをソニーPCLが担当します(Mogura VR)。
研究所メモ: アニメキャラクターの単独ライブという、これまでも技術投資が続いてきた領域に、ソニーの本体技術がそのまま持ち込まれた点が新しさです。演出のためだけに開発した特殊効果ではなく、他分野に転用できる汎用ロボット技術を使っている。エンタメ企業とメーカーの提携は、単発の演出協力ではなく技術の実証の場としても機能し始めています。
HIKKY「バーチャルマーケット2026」、MIXI「ALTERNIGHT ZONE」、ABEMAでホロライブ2025 — メタバースの拡張
HIKKYは「バーチャルマーケット2026 Summer」を2026年7月11日から26日までの16日間開催すると発表しました。体験型イベント「VketReal 2026 Summer」も7月25・26日に東京・秋葉原のベルサール秋葉原で並行開催。バーチャル会場は秋葉原とニューヨークのブロードウェイがモチーフで、企業の出展・協賛募集も始まっています(Mogura VR)。
MIXIは12月22日、競輪投票サービス「TIPSTAR」と連携したメタバース新サービス「ALTERNIGHT ZONE」の提供を開始しました。アバターで競輪観戦やアミューズメントコンテンツを楽しめる仕組みで、実際の競輪場を模した「メタバース平塚競輪場」も登場します。対象年齢は20歳以上、提供エリアは日本国内です(Mogura VR)。
ABEMAは12月28日、特別番組「アベマでホロライブ2025」を昼12時から深夜0時までの12時間、全編無料で放送します。5期生の単独ライブなど過去のライブ5本を含み、うち2作品は国内での全編無料公開が初めてです(Mogura VR)。
研究所メモ: 物販の場(HIKKY)、ギャンブル観戦の場(MIXI)、ライブ視聴の場(ABEMA)と、それぞれ全く違う目的でメタバースやオンライン配信を使っていますが、共通するのは「ファンが集まる理由」を先に決めてから場を作っている点です。技術ありきではなく、何のために人を集めるかを先に定義することが、メタバース活用を単なる話題作りで終わらせない条件だと分かります。
今週の所感
今週は、推し活が「マーケティング施策の一つ」から「経営インフラの一部」へ位置づけを変えつつある週でした。博報堂は専門組織を立ち上げ、デロイト トーマツは購買行動データとして数値化し、ファミリーマートは店舗設備そのものを推し活仕様に作り替えました。単発のコラボ商品ではなく、継続的な体制づくりに投資する企業が増えています。
ソニーのロボット技術がアイドルの単独ライブ演出に採用され、HIKKYやMIXIがメタバース空間を新たな交流拠点として立ち上げたのも今週の特徴です。リアルの店舗とバーチャル空間、双方でファンとの接点を広げる動きが並行して進んでいます。一方で、サンリオと侍ジャパン、大相撲の組み合わせのように、老舗の組織が若い世代向けのキャラクターと組む例も目立ちました。
企業が推し活と向き合う体制は、単発キャンペーンから恒常的な仕組みへと移行しています。推し活マーケティングの設計原則やファンマーケティングの基本とあわせて、自社がどの段階にいるか見直してみてください。
週刊推し活ニュースは、推し活×ビジネスの1週間を毎週まとめてお届けします。過去の号は推し活×ニュースカテゴリからどうぞ。



