サンリオキャラクター大賞が最多7,064万票/吉野家のドラクエコラボが6時間完売【週刊推し活ニュース 2026年7月3日号】

2026年6月26日〜7月2日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードは、推し活の担い手が、自治体・巨大資本・学習企業にまで広がったでした。
サンリオキャラクター大賞は総得票数7,064万7,379票(前年比112%)と過去最多を更新し、ポムポムプリンが2年連続の1位に輝きました。ファンの投票行動そのものが企業にとっての市場データになっています。同じ週、吉野家×『ドラゴンクエストウォーク』のコラボどんぶりが発売から約6時間で完売、任天堂と「サーティワン」アイスクリームが初コラボを発表しました。
資本の動きも目立ちました。ソニー・ピクチャーズが没入型施設運営のCosmへ1億ドル(約161億円)を出資。大分県の別府市公営事業局は、既存アニメの誘致ではなく自らオリジナルIP『地獄降輪』を立ち上げるという、これまでとは逆方向の一手に出ています。
自治体が、推し活の手法で関係人口を増やしにいった
別府市公営事業局×Pictoria — オリジナルIP『地獄降輪』でファンコミュニティを設計
別府市公営事業局(大分県)とAI・IP創出事業のPictoriaが、新規IPプロジェクト『地獄降輪』を始動しました。キャラクター原案にアニメ監督の内海紘子氏を迎え、「別府競輪×地獄めぐり」の擬人化という切り口で展開します。既存の有名アニメを誘致する従来型の自治体タイアップとは異なり、自治体自らがIPを保有する点が特徴です。6月4日のティザーPV公開、6月11日のキービジュアル・声優陣発表を経て、6月26日には特別番組を生配信しました。ターゲットは、これまで公営競技業界との接点が薄かった若年層・女性層です(AdverTimes.)。
背景には、別府競輪場が抱える来場者減少と高齢化があります。既存作品とのタイアップでは一過性の盛り上がりに終わっていた課題を、自社IPの長期育成で乗り越えようとしています。
研究所メモ: 期間や活用に制限が伴うライセンスIPと違い、自社保有のIPなら地域のニーズに合わせて柔軟に展開し続けられます。一過性のタイアップで終わらせず、何年もかけてファンコミュニティを育てる前提に立った投資判断です。地域資産としてのIPという発想は、自治体に限らず長期的な関係人口づくりを考える企業にも応用できます。
岡山県新見市×VTuber — バスガイド起用と「まちスパチャ」実績レポート
VTuberを活用したシティプロモーション事業を手がける株式会社uyetは6月25日、「まちスパチャプロジェクト」の実績レポート第一弾として、岡山県新見市での取り組みをまとめた資料を公開しました。同プロジェクトは10代〜30代のVTuberファン層に「推せるまち」との出会いを届ける企画で、2023年12月の開始以来、岩手県八幡平市・熊本県玉名市など8つの自治体で実施されています(Mogura VR)。7月1日からは新見市との共同企画も始まり、時雨ミト・ナナホシナナの2名がバス車内のモニターに登場し、観光地「羅生門」や特産品「千屋牛」を案内するバスツアーを10月末まで実施します(Mogura VR)。
研究所メモ: 実績レポートを自治体担当者限定で配布する設計が興味深いところです。派手な施策より先に、効果測定の型を横展開しやすい形にしている。8自治体という実施数の多さは、1回限りの企画では終わらせない運営体制があることの表れで、地域プロモーションを検討する企業にとって参考になる事業モデルです。
エンタメIPの担い手に、大手資本が相次いで入った
代アニG、グリー — 三菱地所の追加出資とサエッタとの10年協業
三菱地所が運営するCVC「BRICKS FUND TOKYO」は6月26日、教育起点のエンターテインメントIP事業を展開する代々木アニメーショングループへ追加出資したと発表しました。同グループは2026年3月、代々木アニメーション学院とVOISING、ウタイテ、ASOBI GODの4社が経営統合して誕生した会社です。三菱地所グループが持つ商業施設などのアセットを活用し、リアルとデジタルを掛け合わせたコンテンツビジネスを目指します。一方、グリーエンターテインメントは同日、アニメーション制作のサエッタと今後10年にわたる企画・制作の協業合意を締結。サエッタをハブに「ハヤブサフィルム」を主な制作ラインとして想定し、2030年放送予定の新規プロジェクトも始動しています(AdverTimes.)。
研究所メモ: 両社に共通するのは、企画・開発だけでなくファンとの接点まで見据えた基盤づくりです。10年という協業期間の長さは、単発ヒットではなく作品を継続的に生み出す体制への投資だと分かります。IPビジネスへの参入を検討する企業にとって、どの工程に資本を入れるかという視点が問われる事例です。
ソニー・ピクチャーズ×Cosm — 没入型施設に161億円を出資
ソニー・ピクチャーズエンタテインメントは6月25日、没入型エンタメ企業Cosmへ1億ドル(約161億円)の戦略的投資を実施すると発表しました。シリーズCラウンドのリード投資家として少数株を取得し、Ravi Ahuja会長兼CEOがCosmの取締役会に加わります。Cosmは「Shared Reality」という独自技術で、ディスプレイとライブプログラミングを組み合わせた没入型体験を提供する企業です。現在ロサンゼルス・北ダラス・アトランタの3拠点が稼働中で、2026年9月にはデトロイト、2027年初頭にはクリーブランドでも開業予定です(Mogura VR)。
研究所メモ: 自社の映画・テレビIPを、会場という物理的な体験と組み合わせる投資です。配信という画面の中の接点だけでなく、ファンが体を運ぶ場所に資本を投じる判断は、コンテンツ企業がどこまで「体験」を自前で持つべきかという問いを含んでいます。
外食チェーンが、限定コラボで来店の理由を作った
吉野家×ドラクエウォーク — コラボどんぶりが約6時間で完売
吉野家は7月2日から『ドラゴンクエストウォーク』とのコラボキャンペーンを開始しました。公式通販限定「ドラクエウォークコラボセット」(メラミン製コラボどんぶり1個、冷凍牛丼の具2袋)を数量限定で発売したところ、7月2日10時の販売開始から約6時間で完売。吉野家は追加の受注生産に向けて準備を進めています。店舗でのコラボキャンペーンは全国の吉野家で8月26日まで実施されます(インサイド)。
研究所メモ: どんぶりという食器そのものをコラボグッズにした設計です。食事のたびに手に取る道具をIP化することで、1回の来店では終わらない継続的な接点になります。即日完売という結果は、需要を見誤った側面もありますが、追加受注生産という発表自体が話題の持続につながっています。
映画ちいかわ×ココイチ — 島カレーとグッズで公開前の来店を作った
カレーハウスCoCo壱番屋は「ちいかわ」とのコラボ企画「ココイチ×映画ちいかわ カレー大作戦」を7月16日から8月31日まで実施すると発表しました。対象メニューは「オリジナル島カレー」(税込1,210円)で、注文するとオリジナルステッカーが1枚もらえます。コラボドリンクは第1弾・第2弾の2種展開で、それぞれ注文するとオリジナルフィギュアが手に入ります。ほかに1,000円以上のレシート応募キャンペーンやX上のフォロー&リポストキャンペーンも用意され、7月24日公開の『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』と合わせた展開です(超!アニメディア)。
研究所メモ: メニュー・ドリンク・レシート・SNSと、来店から会計後まで複数の接点にグッズを分散させています。1回の来店で1つのグッズしか渡さない設計は、複数回の来店を誘う仕掛けとして機能します。映画公開の2週間以上前から助走を作っている点も、外食コラボの型として参考になります。
メーカーが、キャラクターを新しい商品カテゴリーへ運んだ
任天堂×サーティワン — 「どうぶつの森」で初のアイスクリームコラボ
任天堂の『どうぶつの森』と「B-Rサーティワン アイスクリーム」が初めてコラボし、7月1日からオリジナルデザインの商品を展開しています。森・砂浜・海をイメージした3種のフレーバーに加え、限定カップやキャラクター「たぬきち」のチャーム付きスプーンを用意。ゲーム側にも「サーティワン島」が7月1日から登場し、『あつまれ どうぶつの森』からショッピングエリアやミュージアムを訪れられます(AdverTimes.)。
研究所メモ: 店舗の商品とゲーム内コンテンツを、同じ7月1日に同時公開している点がポイントです。実店舗だけ、あるいはゲーム内だけで完結させず、両方に「行く理由」を用意することで、どちらか一方のファンをもう一方に橋渡ししています。
DNP — アニメと日本工芸を組み合わせた海外向けブランド「AN-IPPON」
大日本印刷(DNP)は6月30日、日本のアニメIPと日本各地の工芸品を組み合わせた海外向け新ブランド「AN-IPPON」を立ち上げました。第一弾として『NARUTO-ナルト- 疾風伝』と石川県の九谷焼、山形県の米沢織、福島県会津地方の赤べこがコラボした商品を発売。DNPが北米で運営する「東京アニメセンター」2拠点で先行販売し、2026年内には「アニメイトロサンゼルス」でも販売を始めます。北米拠点を2026年度までに10拠点へ拡大し、関連事業で2028年度に単年20億円の売上を目指します(AdverTimes.、DNP 大日本印刷株式会社)。
研究所メモ: アニメIPの発信力を、工芸品という別業界の海外進出の起爆剤に転用した構図です。工芸産地単独では難しい認知獲得と販路開拓を、版権交渉から販売まで一貫して担う企業が代行する。IPを持たない伝統産業や地場産業が海外展開を考える際の、外部連携の型を示しています。
ファンの熱量が、データと課題として可視化された
にじさんじ運営 — 銀テープ争奪などライブでのマナーに注意喚起
ANYCOLORは公式X上で、VTuberグループ「にじさんじ」の自社主催ライブにおける観客のマナーについて注意喚起を行いました。公演中に銀テープなどのグッズを取得する目的で観客が自席を離れて立ち歩いたり、急な移動をしたりするケースが増加しており、「大変憂慮すべき状況」だとしています。同社はこうした行為について、けがや事故につながる危険な行為であるとともに、演出の妨げや周囲の観客への迷惑にもつながると指摘し、マナーの遵守と協力を求めました(インサイド)。
研究所メモ: 会場が満員に近づくほど、グッズという「モノ」への欲求が安全と衝突しやすくなります。運営が公式に注意喚起を出すこと自体、ライブ演出の一部としてグッズ配布を設計する企業にとって、演出効果とリスク管理を同時に考える必要があることを示しています。
サンリオキャラクター大賞 — 総得票7,064万票でポムポムプリンが2連覇
「2026年サンリオキャラクター大賞」の最終順位が発表され、総得票数は前年比112%、過去最多となる7,064万7,379票を記録しました。「ポムポムプリン」が30周年のアニバーサリーイヤーに700万票以上を集め、2年連続・通算5度目の1位に。2位シナモロール、3位ポチャッコ、4位クロミ、5位ハローキティと続きました。結果発表は6月27日・28日にパシフィコ横浜で開催の「サンリオフェス2026」で行われ、来場者数は2日間で2万人を超え、オンラインは100万人以上が視聴しました(アニメ!アニメ!、eeo)。
研究所メモ: 投票イベントが単なる人気投票にとどまらず、来場2万人・視聴100万人超のライブコンテンツとして成立している点が本質です。ファンの投票行動そのものが、翌年のグッズ展開やキャラクター起用の意思決定材料になる。ファン参加型の企画を設計する企業にとって、投票を最終目的にせず、その先の商品化まで見越した設計が問われます。
進研ゼミ×ぷよぷよ — 学習教材にゲームを組み込んだ
ベネッセコーポレーションは7月25日、通信教育講座「進研ゼミ 小学講座」のタブレット教材「チャレンジタッチ」で、セガのパズルゲーム「ぷよぷよ」とコラボした「タッチでぷよぷよ」の提供を始めます。対象は小学1〜6年生で、提供期間は10月24日まで。今年3月の大規模リニューアルで「ゲーム×学習」「人×AI」「保護者サポート」の3軸を刷新しており、学習後にアバターを獲得したり学習ゲームで遊べたりする「ごほうび型」のゲーミフィケーションを取り入れています(AdverTimes.)。
研究所メモ: 知名度の高い既存IPを、自社サービスの継続率を上げる装置として使っています。ファンを増やすためのコラボではなく、すでにいる会員の離脱を防ぐためのコラボという点が、他業種のIP活用と一線を画します。会員基盤を持つサブスクリプション型の企業ほど、この使い方は応用しやすいはずです。
プロ野球のグッズが、日用品売り場に定着してきた
阪神タイガース、埼玉西武ライオンズ — ドンキとしまむらが球団グッズを展開
ドン・キホーテは6月30日から、関西の一部店舗限定でプロ野球「阪神タイガース」の応援タオルを発売しました。藤川監督と12選手を合わせた全13種のフェイスタオル(約34×80cm)で、店内の手書きPOP文字「ドンキ文字」に球団ロゴと選手カラーを組み合わせたデザインです。価格は各2,200円(税込)(インサイド)。しまむら公式オンラインストアでも7月1日15時から、プロ野球「埼玉西武ライオンズ」の寝具・インテリア商品を発売。ロゴ入りフラットシーツやシートクッションのほか、マスコット「レオ」を大きくデザインしたバット型抱き枕、ユニフォーム型ポーチに収納できる冷感ケットなどをラインナップしています(インサイド)。
研究所メモ: どちらも球団の公式グッズ売り場ではなく、日用品を扱う小売チェーンの棚を球団カラーに染めています。ユニフォームやグッズを新調しなくても、タオルや寝具といった生活必需品を買い替えるタイミングで応援が生活に入り込む。ファン単価ではなく購入頻度を上げる設計として、他のスポーツIPにも転用しやすい手法です。
PR TIMES発、推し活ビジネスの新展開3本
OSHIAI、クオン、note — AIとデータでファンの熱量を扱う3社の新展開
AI推し活アプリ「OSHIAI」を運営するOSHIAI株式会社は6月29日、アイドルやVTuberの公認AI「アイ」とドラマのような物語世界に入り込める新機能「ドラマモード」をリリースしました。「もしも無人島で2人で遭難したら」といった「IFシリーズ」と、教師や同居生活など物語仕立ての「ドラマシリーズ」の2系統を用意し、ユーザーの会話に応じて物語が即興で変化する仕組みです(PR TIMES)。クオン株式会社は7月2日、ファンコミュニティ運営を支援するAIクラウド「IKURA AI System」の正式版を、月額37,500円(税抜)で提供開始。1996年創業のクオンが四半世紀で培った運営知見と5つの特許技術をAIに組み込み、これまで大企業中心だったコミュニティ運営を中小企業や個店にも開く価格設定です(PR TIMES)。note株式会社は同日、noteへの推し活記事のデータとLLM解析を組み合わせた「推しアーティストランキング」を発表。総合1位はアルバム『ARIRANG』で考察記事が集まったBTS、急上昇部門は1位がM!LKで、「#推し活」タグの投稿数は前年同期比約3.2倍に増えています(PR TIMES、note株式会社)。
研究所メモ: 3本に共通するのは、ファンの熱量を数値やAIで扱いやすい形に変換する動きです。OSHIAIは会話という体験そのものを商品にし、クオンは運営ノウハウをAIで安価に開放し、noteは投稿データを企業が参照できるランキングに変えました。推し活市場を狙う企業にとって、直接ファンに接触する手段だけでなく、ファンの熱量を測る手段そのものも競争領域になりつつあります。
今週の所感
今週は、推し活の「担い手」が、想像より広い範囲に広がっていることが分かった週でした。
別府市公営事業局が自らIPを立ち上げ、岡山県新見市がVTuberでバスツアーを企画する。教育企業のベネッセがゲームを学習継続の装置に使い、ドン・キホーテやしまむらが球団グッズで棚を彩る。企業が推し活に参入する経路は、コラボ商品の発売だけではなくなっています。ファンの熱量に接する場所を、業種を問わず自社の中に作れるかどうかが問われている、という印象を強く受けました。
一方で、サンリオキャラクター大賞やnoteのランキングのように、ファンの行動そのものがデータ化され、翌年以降の意思決定材料になる流れも確実に進んでいます。ファンマーケティングの基本設計や推し活マーケティングの設計原則とあわせて、自社にとっての参入経路を考えてみてください。
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