ウマ娘LA公演中止で旅費も返金へ/三菱UFJニコスが推し活決済開始/藤枝市が推し活協議会設立【週刊推し活ニュース 2026年10月23日号】

2026年10月16日〜22日の発表から、推し活マーケティング・ファンビジネスのニュースを9本選びました。毎日の支払いや引越しの荷造り、好きなものを飾る額縁のように、これまで推し活と結びつけて考えてこなかった暮らしの場面に、企業や自治体が入り口をつくり始めています。
全16本の完全版は、noteで公開しています。本記事では企業と自治体の取り組みから9本を紹介します。
今週のハイライト
『ウマ娘 プリティーダービー』は、米ロサンゼルスで予定していた初のワールドツアー公演を、公演に必要な米国ビザが取得できず中止しました。運営はチケットの払い戻しに加えて、現地に参加する予定だった人の宿泊費と交通費も返金すると発表しています。
三菱UFJニコスは、推しのキャラクターを券面に表示できるプリペイドカードのアプリ「応援+カード」を始めました。アート引越センターは、9月に企画を発表していた引越しプラン「推し活パック」の中身とキャンペーンの詳細を明らかにし、11月から始めます。どちらも、引越しや買い物のような手続きの中に、推しと過ごす時間を大切にしたい気持ちを受け止める仕組みを用意しています。
地域では、静岡県藤枝市が地域を応援してくれる人を「エダオシ」と呼ぶ「藤枝推し活協議会」を設立し、富山県上市町は地元の鉄道を応援するファンクラブを年内につくります。カルビーの「堅あげポテト応援部」は10周年を迎え、部員と一緒に決めた味のポテトチップスを発売します。
海外公演の中止でも、遠征するファンの負担まで受け止める
ウマ娘 — LA公演の中止で、宿泊費と交通費も返金へ
『ウマ娘 プリティーダービー』は、現地時間10月22日・23日に米ロサンゼルスのピーコックシアターで予定していた初のワールドツアー公演を中止しました。半年以上前から準備していた、公演に必要な米国ビザの承認が下りず、19日に状況を知らせたうえで20日に中止を発表しています。現地観覧と配信のチケット、ライブビューイング、JTBとの公式ツアーは払い戻しの対象です。さらに21日には、現地に参加する予定だった人の宿泊費と交通費も、領収書の提出を条件に返金する予定だと発表しました。
出典:オリコンニュース
研究所メモ: 遠征では、飛行機やホテルの費用がチケット代より大きくなることも少なくありません。海外公演は、ビザのように主催者だけでは決められない手続きに左右されます。中止という残念な結果でも、ファンの負担にまで目を向けた対応は、このあとロンドン、ソウル、横浜と続くツアーへの信頼にもつながるのだと思います。
引越しや毎日の支払いにも、推しと過ごす時間を持ち込む
三菱UFJニコス — 推しのデザインで支払う「応援+カード」
三菱UFJニコスは10月19日、カードの券面にアニメやゲームのキャラクターを表示できるプリペイド決済アプリ「応援+カード」を始めました。第1弾として、ブルーロックやSV.LEAGUE、大阪ブルテオン、ChroNoiRを含む10コンテンツ・28種類のデザインから選べます。15歳以上が申し込め、アプリのダウンロードとバーチャルカードの発行は無料です。支払った金額に応じてポイントがたまり、限定グッズやデジタルコンテンツと交換できます。
出典:三菱UFJニコス「応援+カード」公式ページ、Impress Watch
研究所メモ: スマートフォンでの毎日の支払いが、そのまま推しを応援する行動になる仕組みです。コンテンツの側から見ると、ライブやグッズの発売がない時期にもファンとの接点が続くのだと思います。大手のカード会社が「応援」を名前に掲げた決済を始めたのを見ると、推し活が日々のお金の使い方にまで広がってきたのだと感じます。
アート引越センター — 「推し活パック」の中身とキャンペーンが決定
アート引越センターは10月16日、9月に企画を発表していた推し活向けの引越しプラン「推し活パック」の詳細を明らかにし、11月1日から始めます。グループ会社と共同開発した梱包資材「推しごとボックス」は、Sサイズの段ボールにウレタンのクッションと動かせる仕切りを組み合わせたもので、フィギュアやCDを形に合わせて収められます。同じ11月1日から、にじさんじの壱百満天原サロメさんたち5人とのキャンペーンも始まり、見積もりや引越しの完了に合わせて、ライバーの複製直筆メッセージ入りの壁紙やカードが届きます。
出典:アート引越センター「推し活パック」開始とにじさんじコラボの発表
研究所メモ: 9月25日号で紹介した企画の続報です。引越しの荷造りでいちばん気をつかうのはグッズ、という人は多いと思います。アクリルスタンドの角やCDケースの割れを心配する気持ちに、引越し会社が専用の資材で応えています。暮らしの節目にも推しとの生活が続くように手伝う入り方は、ほかのサービス業にも参考になりそうです。
推しのものを飾る仕事と売る場所が、街の中で広がっている
額縁のタカハシ — 推し活の需要で額装が好調、本店を移転
長野市の額縁のタカハシは10月22日、本店を市内の川中島町原から篠ノ井岡田へ移し、営業を始めました。信濃毎日新聞は、推し活の需要を受けて額装サービスが好調だと伝えています。預かった品物を額縁に収めるこのサービスはネット注文が好調で、旧本店が手狭になったといい、同社の売上高は8億円を超えています。新本店ではネット通販の部門と工場を広げ、店舗の接客スペースも広げました。
出典:信濃毎日新聞
研究所メモ: グッズやチケット、思い出の品を、しまっておくより飾って毎日眺めたいという気持ちに、老舗の技術が応えています。推しのものは形や大きさがさまざまで、ひとつずつ合わせて額を選ぶ手間がかかります。その手間を店の技術とネット注文で引き受けたことが、新しいお客さんとの出会いにつながったのかもしれません。
文教堂 — 本店の2〜4階を中古ホビーショップに
書店チェーンの文教堂は、川崎市の溝ノ口本店での書籍販売をやめ、2〜4階を中古ホビーショップ「駿河屋 溝ノ口店」に変えます。12月10日のグランドオープンを予定し、アニメグッズやフィギュア、ゲーム、トレーディングカードを中心に、約30万点の新品と中古品を売り買いする拠点にします。書籍販売は近くの溝ノ口駅前店にまとめます。同社の2026年8月期決算では書籍、文具・雑貨、トレーディングカードの部門が好調で、前の期の4,100万円の営業赤字から7,800万円の営業黒字に転じました。
出典:AdverTimes.
研究所メモ: 書店がアニメグッズやトレカの売り場を広げていく流れは、好きな作品やキャラクターのための買い物が、街の書店の売り場の中心になりつつあることを表しているのかもしれません。買い取りと販売を同じ店で行えば、ファンがグッズを手放したり探したりする場所にもなりそうです。
ファンが選んだ味や言葉を、商品と試合会場で形にする
カルビー — 「堅あげポテト応援部」10周年の共創商品
カルビーは10月22日、ファンコミュニティ「堅あげポテト応援部」の設立10周年を記念した共創商品『堅あげポテト 贅沢海鮮だし味』を、11月2日から全国のコンビニで期間限定発売すると発表しました。コンビニ以外の店舗では11月9日からです。応援部で「10周年にふさわしいおめでたい味」を募集して決選投票で味を決め、パッケージも部員のイラストを基に投票で選びました。応援部には、2026年9月時点で約6.8万人の部員が所属しています。
研究所メモ: 味のアイデアからパッケージまで、ファンが選んだものが店頭に並ぶのは、部員にとって誇らしい瞬間だと思います。ファンミーティングでの試食や、部員と一緒に作ったノベルティのシールまで、一緒に祝う場面がいくつも用意されています。
大阪ブルテオン — 選手の公式写真で作る応援広告を今季も受付
ジェイアール東日本企画の応援広告サービス「Cheering AD」は10月21日、男子バレーボールSVリーグの大阪ブルテオンの応援広告を、今シーズンも受け付けると発表しました。ファンが選手の公式写真やチームロゴを使って広告をつくり、ホームゲーム会場の大型ビジョンで放映します。アリーナMCやコートアナウンサーによるメッセージの読み上げも予定しています。昨シーズンは一部の試合で広告枠が完売し、追加販売を行いました。
出典:Cheering AD「大阪ブルテオン応援広告、今シーズンの受付スタート」
研究所メモ: アイドルのファンの間で広がってきた応援広告が、スポーツの会場でも根付き始めています。好きな選手の写真と自分の言葉が試合前の会場に大きく映るのは、ファンにとって忘れられない体験になりそうです。今週は三菱UFJニコスの応援+カードにも大阪ブルテオンのデザインが入り、チームを応援する方法がまたひとつ増えました。
自治体が、離れて暮らす人や鉄道ファンを応援の仲間にする
藤枝市 — 地域を応援する「エダオシ」を増やす協議会
静岡県藤枝市は10月22日、地域を応援する人を増やすための「藤枝推し活協議会」を設立したと発表しました。10月5日に設立総会を開き、藤枝を好きになって何度も訪れ、地域を応援してくれる人を「藤枝推し」、略して「エダオシ」と呼んで、産学官で増やしていきます。住まいを2か所に持つ二地域居住や、離れた場所から地域に関わる関係人口を広げるねらいです。第一弾として11月13日に東京で開くファンミーティングは、募集開始から約2週間で定員40人が埋まりました。
研究所メモ: 住む人を増やすだけではなく、離れていても何度も訪れて応援してくれる人を大切にする考え方は、ファンクラブづくりとよく似ています。音楽イベントの運営支援や農作業の手伝いのように、関わる入り口を市内の3つのエリアごとに用意しているのも具体的です。
上市町 — 富山地方鉄道を応援する「カミイチ鉄道ファンクラブ」
富山県上市町は、町内を走る富山地方鉄道を応援する「カミイチ鉄道ファンクラブ」を年内に設立します。町のインスタグラム公式アカウントに登録すると入会でき、地域の住民と全国の鉄道ファンが集まるコミュニティにして、鉄道と地域の魅力の発信やイベントを行います。クラブの運営やイベントの企画を担う地域おこし協力隊は、富山地鉄の契約社員として働く「企業雇用型」で募集しています。経営難に直面する富山地鉄の利用を後押しするねらいです。
出典:北國新聞・富山新聞
研究所メモ: ファンクラブという形なら、毎日電車に乗る人だけではなく、遠くから応援したい鉄道ファンも仲間に加われます。入会をインスタグラムの登録だけにしたのは、気軽に参加してほしいという気持ちの表れだと思います。路線を守りたいという地域の思いを、ファンの輪で支えようとする取り組みがどう育っていくのか、見守りたいと思います。
今週の所感
海外公演を中止した『ウマ娘』は、チケットだけでなく、遠征するファンの宿泊費と交通費まで返金の対象にしました。応援する人が公演のためにどれだけの準備をしているかに目を向けた対応だと感じます。
今週は、支払いや引越し、額縁、書店の売り場のように、これまで推し活のニュースとして扱われることの少なかった業種から、ファンの暮らしに寄り添う動きが集まりました。グッズを安全に運びたい、推しのデザインで支払いたい、大切なものを飾りたいという気持ちは、どれもファンの毎日の中にあります。
自治体の動きからは、「推し活」という言葉が、地域とのつながり方を表す言葉としても使われ始めていることがうかがえます。藤枝市や上市町の取り組みは、住む人の数だけでなく、離れていても応援してくれる人との関係を育てようとしています。
カルビーの応援部や大阪ブルテオンの応援広告のように、ファンが選んだ味や言葉が商品や会場の演出になる場面も増えています。ファンの声を聞く場を持つことが、長く応援してもらえる関係につながるのだと思います。
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