推し活×ビジネス

Z世代の​推し活消費|データで​見る特徴と​企業の​向き合い​方

「Z世代は推し活にお金を使う」「SNSで見つけて、すぐ買う」——そんな説明は分かりやすい反面、世代の中にある大きな違いを見えなくします。

推し活に関するデータを見ながら企画を考える若い世代と担当者

実際の推し活は、グッズを買うだけではありません。情報を見る、曲を聴く、作品を作る、ひとりで現場へ行く、仲間に共有する、ときには少し離れて休む——そのすべてが一人の生活の中で行き来します。

この記事では、調査主体が自ら公開した一次資料だけを使い、Z世代と推し活消費の特徴を整理します。企業担当者が、若者をひとまとめにせず施策へ落とし込むための見方も解説します。

前提:「Z世代」の年齢は調査ごとに違う

「Z世代」を扱う調査でも、対象とする年齢の範囲は同じとは限りません。そのため、数字を見るときは世代のラベルより、誰に、いつ、どのように聞いたかを確認する必要があります。

たとえば若者マーケティング機関SHIBUYA109 lab.は、主に15〜24歳を「around20」として調査しています。一方、推し活アプリOshibanaの調査は10〜50代の利用者を対象とし、結果には10代の回答が多く含まれます。どちらも若年層を知る手がかりですが、日本のZ世代全体をそのまま代表する数字ではありません。

この記事では、異なる調査の数値を足したり、母集団を無視して比較したりしません。企業が自社の企画で使うときも、まずこの読み方を守ることが重要です。

データ1:推しは「買う対象」より、日常の行動を動かす存在

SHIBUYA109 lab.の推し活変遷レポートは、2018年以降に15〜24歳を対象として行った複数の調査を再編集したものです。同レポートが参照する2022年5月のウェブ調査では、一都三県の15〜24歳女性の学生525人のうち、8割以上が「推しがいる」と回答しました。また、推しをきっかけに聴く音楽が変わったという回答や、語学や進路への関心が生まれたというインタビュー参加者の声も紹介されています。

ここから見えるのは、推し活消費が単発の買い物ではなく、生活の選択に意味を与える行動だということです。

  • 推しが使う・語るものを調べる
  • 推しに会うために予定や移動を組み立てる
  • 推しの世界観に合わせて服や持ち物を選ぶ
  • 好きな理由を誰かに伝える
  • 自分で応援アイテムや作品を作る

企業側が「何を売るか」だけを考えると、この広がりを取りこぼします。商品、情報、場所、記録、交流までを一つの体験として見る必要があります。

データ2:消費と創作がつながっている

同じSHIBUYA109 lab.のレポートは、コロナ禍以降に推しグラス、硬質ケースデコ、カンペうちわ、ペンライトデコなどの「創作推し活」が広がった経緯を整理しています。完成品を買うだけでなく、自分の推しに合わせて手を加える過程そのものが体験になるという変化です。

企業にとっての示唆は、完成された正解を一つだけ渡すより、ファンが自分の推しに合わせられる余白を残すことです。

一方的に渡す設計参加の余白がある設計
色や組み合わせが固定推しカラーやパーツを選べる
公式の完成見本だけを提示ファンのアレンジ例も紹介する
購入で体験が終了作る・撮る・共有する導線が続く
正しい楽しみ方を限定複数の使い方を歓迎する

ただし、余白は「ファンに制作や宣伝を無償で任せる」という意味ではありません。素材の利用範囲、二次創作のルール、投稿時の注意を分かりやすく示し、安心して参加できる土台を公式が用意します。

データ3:SNSは一枚岩ではなく、発見・表現・交流で使い分ける

SHIBUYA109 lab.「Z世代のSNS利用最新動向2025」は、2025年7月に一都三県の15〜24歳女性の学生413人を対象に行ったウェブ調査と、別途実施したインタビューです。「お出かけする場所や体験をどこで見つけるか」という設問では、Instagramが64.6%、TikTokが39.0%、Xが35.1%、動画配信サービスが30.5%、検索エンジンが28.8%でした。

この数字は15〜24歳女性という限定された対象の結果ですが、企業が「SNSか検索か」の二択で考えないための材料になります。最初の発見はSNSでも、営業時間、料金、規約、アクセスの最終確認は公式サイトや検索から行われます。

同調査では、投稿内容やつながる相手に応じたSNSの使い分け、短時間で消える投稿や閉じたコミュニティを好む傾向も示されました。つまり、公開投稿の数だけを見て「反応がない」と判断すると、保存、友人間の共有、鍵付きアカウントでの会話を見落とします。

施策では、接点の役割を次のように分けると整理しやすくなります。

  1. 発見 — 一目で世界観と参加理由が伝わる短い動画や画像
  2. 確認 — 価格、期間、在庫、権利、会場ルールを載せた公式ページ
  3. 参加 — 投票、選択、メッセージ、制作など自分のペースで関われる場
  4. 記録 — 写真を撮りやすく、顔や個人情報を出さずにも残せる工夫
  5. 再訪 — 次の情報や振り返りへ迷わず進める導線

データ4:「みんなで盛り上がる」と「ひとりで楽しむ」は両立する

ブックリスタ「おひとり様推し活」調査は、2026年2月13日〜3月16日に推し活アプリOshibana上で行われた、全国の推し活ユーザー250人へのオンライン調査です。回答者の50.4%が10代で、「推し活は基本ひとりで行う」が59.2%。ひとりで推し活をする人に理由を複数回答で尋ねた結果、「自分のペースで動ける」が91.7%でした。

これは推し活アプリ利用者の調査であり、若者全体の結果ではありません。それでも、イベントや店舗を「友達と来ることが前提」で設計しない重要性は読み取れます。

  • 一人でも入りやすい受付表示にする
  • 写真をスタッフに頼める、またはスマホ台を置く
  • 交流を希望する人と、静かに楽しみたい人の導線を分ける
  • 二人組限定の特典だけにしない
  • 待ち時間を一人でも確認できるようにする

コミュニティを作ることと、交流を強制することは別です。つながる自由と、ひとりでいる自由を両方用意することが、参加の間口を広げます。

データ5:熱量が高いほど、休める設計が必要になる

ブックリスタの推し活モチベーション調査は、2026年2月13日〜3月19日に推し活アプリOshibana上で行われた、全国の推し活ユーザー277人へのオンライン調査です。回答者の52.9%を10代が占め、推し活へのモチベーション低下を経験した人は70.8%、推し疲れを経験した人は55.1%でした。

この結果もアプリ利用者という偏りを含みますが、「好きなら、供給が多いほど喜ぶ」「熱心なファンほど、何度でも買う」という前提に注意を促します。情報、限定品、ランキング、購入特典が重なると、応援が義務のように感じられることがあります。

詳しい要因は推し活疲れの記事でも整理しています。企業ができるのは、熱量をさらに煽ることだけではありません。

  • 販売期間、総額、特典条件を早めに明示する
  • 無料・低価格・高付加価値の参加方法を並べる
  • すべて集めなくても体験が成立するようにする
  • 売り切れや追加販売の方針を分かりやすく伝える
  • 離れても戻りやすい情報設計にする

企業の向き合い方:5つの実践原則

1. 世代ではなく、行動と背景を見る

「Z世代向け」だけでは対象が広すぎます。推しのジャンル、ファン歴、参加できる地域、使える予算、一人参加か同行かまで分けて考えます。企画前に少人数でも本人へ聞き、社内の思い込みを修正しましょう。

2. 買う以外の参加を用意する

見る、選ぶ、作る、メッセージを送る、現地で撮る。参加の段階が増えるほど、予算や距離の違う人も関われます。ファンマーケティングの視点で、購入後も関係が続く設計にします。

3. カスタムできる余白と公式の安心を両立する

推しカラーや配置を選べる一方で、権利、禁止事項、個人情報、再投稿の範囲は明確にする。自由と安全をセットで渡すことが、創作を支えます。

4. SNSだけで完結させない

SNSは発見に強くても、重要条件が投稿の中に埋もれると不信につながります。詳細を集約した公式ページを用意し、どの投稿からでも同じ正本へ到達できるようにします。

5. 短期売上と長期の信頼を分けて測る

売上、参加数、再参加、保存・共有、問い合わせ、満足理由を並べて見ます。大きく売れた施策でも、疲労や不公平感が残れば、長期では成功とは言えません。推し活マーケティングの目的は、ファンの熱量を使い切ることではなく、応え続けることです。

企画前に使えるチェックリスト

確認すること担当者への問い
調査の条件対象年齢、性別、人数、時期、募集方法を確認したか
ファン理解実際のファン本人に企画を見てもらったか
参加の幅見るだけ、無料、低価格、有料の選択肢があるか
一人参加同行者がいなくても迷わず楽しめるか
情報の正本価格・期間・規約を一か所で確認できるか
権利と安全画像利用、撮影、個人情報、転売への方針が明確か
疲れさせない設計限定や購入競争を重ねすぎていないか
振り返り売上以外の声と再参加を確認する方法があるか

推し活未来研究所メモ:若者を「攻略対象」にしない

Z世代の推し活を理解する目的は、若者の財布を開く方法を探すことではありません。推しを通じて何を大切にし、どんな距離なら心地よく参加できるのかを知ることです。

データは企画の答えではなく、本人に聞くための良い問いを作る材料です。「Z世代はこうだ」と言い切るほど、目の前のファンは見えなくなります。調査条件を読み、本人の声で修正し、休む自由まで守る。その姿勢自体が、企業の信頼として伝わります。

まとめ

一次調査から見えるZ世代の推し活消費には、日常との近さ、創作の余白、SNSの使い分け、ひとり行動、そして推し疲れという複数の面があります。どれか一つだけを切り取り、「若者はこう動く」と決めつけることはできません。

企業がすべきことは、世代を攻略することではなく、異なる参加の仕方を選べる場を整えることです。推し活市場全体の数字と定義は推し活の市場規模【2026年版】もご覧ください。若年ファンへの調査設計や推し活施策のご相談は、株式会社KAZAORIまで。

よくある質問

Z世代とは何歳の人を指しますか?

調査によって対象とする年齢の範囲が異なります。この記事では、各調査が定めた年齢と条件をその都度示し、異なる対象の数字を同じ母集団の結果として扱わないようにしています。

Z世代は全員、推し活にお金を使うのですか?

いいえ。推しの有無、使える予算、好きな参加方法は一人ひとり異なります。推し活も購入だけではなく、見る、聴く、作る、投稿する、現場へ行くなど幅広い行動を含みます。

Z世代向けの推し活施策で最も大切なことは何ですか?

世代イメージで決めつけず、対象となるファン本人を観察し、参加方法を選べるようにすることです。無料で見る入口から有料の特別体験まで段階を用意し、買わない自由も守ります。

SNSはどの媒体を使えばよいですか?

一つに決めるより、発見、詳しい確認、交流、記録という役割で分けるのが現実的です。媒体の流行だけでなく、自社の対象ファンが実際に何をどこで見ているかを小さな調査で確かめましょう。

推し活施策の成果は売上だけを見ればよいですか?

売上に加え、参加率、再参加、保存や共有、自由記述の満足理由、問い合わせや離脱の要因も見ます。短期の購入額だけでは、長く推される関係を測れません。