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FRUITS ZIPPERはなぜバズった?——「NEW KAWAII」の設計

多様性を肯定する概念がファンの参加を開いた。 短尺動画で真似できるサビが投稿を生んだ。 後続グループが応援の入口を増やした。

6章

EPISODE 1629:37

この回の最初の章原宿から世界へ――KAWAII LAB.という土台

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原宿から世界へ――KAWAII LAB.という土台

FRUITS ZIPPERの躍進は、突然現れた一曲の奇跡だけではありません。原宿カルチャーを背景に持つアソビシステムが、KAWAII LAB.というプロジェクトを立ち上げ、そこから新しいアイドルを育てる仕組みを用意したことが出発点でした。

2022年2月に始動した7人組は、「原宿から世界へ」という短い言葉で、自分たちの出自と行き先を同時に示しました。既存のかわいいを守るだけでなく、いろいろな個性を肯定する場所としてブランドを定義したのです。

ファンにとって、この宣言は好みを押しつける標語ではなく、自分の好きな色や服装を持ち込める入口です。写真や振付をまねる前に、ここでは自分なりのかわいさを出してもよいと思えるため、初めて見た人も文化の外側に置かれません。ライブへ行く服を考える時間や、友人へ曲を紹介する言葉までが、ブランドへ参加する小さな実践になります。

運営側には、原宿という出発点を衣装だけで再現せず、楽曲、SNS、ライブの言葉遣いまで一つの価値観でつなぐ仕事が残ります。どの接点から入っても同じ約束が感じられることが、流行語をブランドへ変える条件です。海外へ届ける場面でも、見た目の記号だけを輸出せず、自分らしさを肯定する意味を説明できれば、「原宿から世界へ」が単なる地名のコピーではなくなります。

KAWAII LAB.の文化とメンバーの物語

プロデューサー木村ミサが掲げた「NEW KAWAII」は、ピンクやフリルだけを指す記号ではありません。好きな服、好きな表現、好きな生き方を自分で選ぶことまで含め、ファンが自分の言葉で参加できる概念に広げました。

経験者や再挑戦を選んだメンバーが集まり、それぞれの過去を抱えてもう一度夢を目指す姿も、KAWAII LAB.の文化を具体的に見せています。ファンは完成した姿だけでなく、次の成長を一緒に見届けられます。

応援する側が見極めたいのは、個性という言葉が紹介文だけにあるのか、歌割り、衣装、トークで一人ずつ違う魅力として扱われているのかです。苦手や遠回りまで消さずに見せるほど、誰か一人の経験がファン自身の記憶と結びつきます。推しを一人に決められない時期も、比較を急がず、それぞれの得意な場面を知る時間として楽しめます。

企業が同じ考え方を取り入れるなら、全員を同じ型へ寄せてから多様性を語るのでは足りません。本人が選べる表現の範囲を用意し、紹介する順番や露出量が一部へ偏っていないかを振り返ることで、メッセージと運用を一致させられます。成功した一人の見せ方を全員へ当てはめず、本人の言葉で更新できるプロフィールや企画を持つことも、長い成長物語を支えます。

FUNNEL一曲のバズが、グループの支持に変わるまで
  1. 短い動画で耳に入るサビだけを聴く
  2. 曲名を知る検索して確かめる
  3. グループ名を覚える誰の曲かが分かる
  4. メンバーを見分ける推しが決まる
  5. 活動を追うライブ・新曲・配信

推し活未来研究所による整理。曲は広がってもグループ名が残らない、という落ち方が最も多く起きます。

15秒のサビがファンの投稿を生んだ

作詞作曲のヤマモトショウは、サビを前半と後半の約15秒ずつに分ける「二段サビ」を意識しました。これは広告用に曲を短くしたのではなく、ユーザーが踊り、真似し、別の動画へ重ねることを曲の構造へ織り込んだ設計です。

歌詞も、アイドルが一方的に「私はかわいい」と宣言する形から、かわいさを見つけてくれるファンを肯定する形へ反転しています。応援する行為が歌の中で意味を持つと、視聴者は観客から魅力を一緒に作る当事者へ移れます。

具体的には、サビだけでも動きの区切りと表情の見せ場が分かるため、完璧に踊れない人も好きな部分だけを切り取れます。上手さを競う参加ではなく、友人と撮る、衣装の色を合わせる、推しのパートを選ぶといった複数の遊び方が残ります。顔を映さない、見るだけにするという距離も含めて選べるほど、投稿できる人だけの文化になりません。

楽曲を届ける側は、投稿数だけでなく、初投稿の人がいるか、どのパートが使われたか、その後にフル尺やライブへ移ったかを見るべきです。短い動画を終点にせず、音源、メンバー紹介、出演情報へ自然に進める導線が次の応援を作ります。振付動画だけでなく歌詞の背景や制作の意図も並べれば、踊らない人にも楽曲を深く知る道が開きます。

同じサビでも生まれる関係は違う

WATCH完成形を眺める

高度な振付を作品として受け取り、拍手や再生で応援する。

JOIN自分の形で参加する

好きな動きや言葉を選び、投稿を通じて文化へ返す。

メンバーを消耗させない持続可能な運営

プロデュースでは、歌やダンスだけでなく、目標へ努力する姿勢や周囲への感謝を重視し、メンバーの心身を守りながら活動を続ける考え方が語られています。

ファンが安心して応援するには、自分の購買や拡散が無理な活動環境を支えていないと感じられることも大切です。タレントを守る運営は、長く続くファンダムの土台になります。

ファン側の判断材料は、休演の有無だけではありません。予定変更を責める言葉が出ていないか、欠席時にもグループとして公演を支えられるか、復帰を急がせない説明があるかを見ると、健康を掲げる姿勢が実際の仕組みになっているか分かります。応援の側も、欠席を埋めるための過剰な詮索を控え、公式の説明を待つことで、その仕組みに参加できます。

運営には、本人の努力へ依存せず、相談先、代替できる進行、十分な準備時間を平時から整える視点が必要です。守る仕組みを舞台裏に閉じず、説明できる範囲で共有することは、ファンに応援のペースを選び直してもらうことにもつながります。長く会える見通しそのものが、短期の露出とは別の応援理由になります。

一組の成功を箱全体の成長へ変える

FRUITS ZIPPERの成功後、CANDY TUNE、SWEET STEADY、CUTIE STREETなど後続グループが登場し、一組からKAWAII LAB.全体へ出会いの入口が広がりました。合同イベントやSNSで別グループを知れるため、ファンは一組だけでなく箱全体を応援できます。人気を一度で消費せず、複数の物語を行き来できる設計です。

箱推しは、すべてのグループへ同じ金額を使うことではありません。合同ステージで気になる曲を見つけ、公式動画で名前を知り、次は単独公演を選ぶというように、関心の深さを自分で調整できることが安心につながります。

事業側は先行グループの型を複製するのではなく、後続ごとの音楽、語り口、参加方法を区別しながら、共通の価値観だけを渡す必要があります。入口が増えても違いが分からなければ選べないため、グループ間の送客と固有性を同時に設計します。合同企画の後に各組の代表曲や次の予定へ分かれる案内があれば、先行組の知名度を後続組の名前まできちんと渡せます。

箱全体の成長を確かめるときは、合同投稿の反応だけでなく、そこで初めて知ったグループの曲が後から聴かれたか、単独の発信にも会話が続いたかを見ます。先行組のファンへ移動を求めるのではなく、新しい好みを足せる案内にすることで、一組への愛着と箱への関心を競わせずに済みます。新しい入口が元の推しを離れる合図ではないと伝われば、ファンは安心して箱の中を歩けます。

KAWAII LAB. REVIEW一曲の反応を箱の文化へ育てる確認

まとめ:ファンが参加できるかわいいの設計

ファンが生んだ「なぁになぁに?」のような言葉を公式が取り入れる逆輸入も重要です。公式がすべてを決めるのではなく、コミュニティで生まれた文化を拾い上げることで、応援の痕跡がブランドの一部になります。

短尺動画で曲を知った人がフル尺を聴き、メンバーの物語を追い、合同の場から別のグループへ出会う。入口ごとに次の選択が用意されることで、一度の話題が箱全体を歩ける関係へ変わります。ファンが自分の速度で居場所を増やせることが、事業の持続性にもつながっています。

この事例を一つの施策へ縮めるなら、短いサビでも合同イベントでもなく、ファンが返した表現を次の入口へ渡す編集です。自分のかわいさを持ち込める約束、メンバーを追える物語、別のグループへ進める道がつながることで、参加した痕跡が文化の成長として残ります。

KAWAII LAB. CYCLE一曲のバズを箱全体の成長へ変える流れ
  1. 宣言NEW KAWAIIで価値を示す
  2. 参加15秒の振付を真似する
  3. 共感再挑戦の物語を追う
  4. 来場SNSからライブへ向かう
  5. 循環後続グループへ出会う

曲、物語、現場、箱の入口がつながることで、応援が一組で途切れません。

バズを次の居場所へつなぐ

  1. かわいいを再定義した多様性を肯定する概念がファンの参加を開いた。
  2. 曲を参加型にした短尺動画で真似できるサビが投稿を生んだ。
  3. 箱全体を育てた後続グループが応援の入口を増やした。