推し活ビジネス戦略

LABUBUはなぜ世界で売れた?——POP MARTの推し活戦略

ブラインドボックスが商品に発見の体験を足した。 店舗や自販機が日常の出会いを増やした。 交換と投稿がキャラクターを育てた。

6章

EPISODE 2423:02

この回の最初の章小さな雑貨店から始まった

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小さな雑貨店から始まった

POP MARTは2010年、北京の大学街で始まった小さな雑貨セレクトショップでした。現在は世界30カ国以上に500店超の直営店と2300台以上の自販機型店舗を展開し、キャラクタービジネスの大きな存在になっています。

創業初期、経営が苦しい時期に日本製のソニーエンジェルを販売したことが転機になりました。商品を棚に並べる店から、キャラクターとの出会い方をつくる会社へと軸足を移したのです。

この転換で重要なのは、人気商品を仕入れるだけでなく、どの棚で見つけ、どの大きさの箱を手に取り、持ち帰った後にどう楽しむかまでを一続きにした点です。初めての人には入口が分かりやすく、すでに好きな人には次のシリーズを探す理由が生まれます。

セレクトショップ時代の発見は、棚にある多様な商品から「自分の好き」を見つけることでした。キャラクター事業へ軸を移した後も、その感覚は一箱との偶然の出会いとして残っています。運営側は売れ筋だけを前へ出すのではなく、初見でも表情やテーマを比べられる並べ方を作ることで、知識がない人にも選ぶ楽しさを開けます。

小さな雑貨店から始まったという出発点は、いまの規模からは想像しにくいものです。最初から世界展開を狙っていたわけではなく、扱う商品が変わる中で見つかった形でした。

この順番は珍しくありません。計画から生まれたのではなく、反応を見て寄せていった結果であることのほうが多い。

開封動画を楽しむ人、飾るために一つ選ぶ人、シリーズを集める人では、同じ商品でも買う理由が違います。人気商品の購入者を全員コレクターと考えず、公式の商品説明や販売方法を分かりやすくすることが、初めて買う人の安心にもつながります。

ブラインドボックスの発見

中身の見えないブラインドボックスは、何が出るか分からない開封の瞬間を商品価値に加えました。箱を選ぶ時間から開封後の反応まで、購入の前後が一つの体験になります。

偶然性は楽しさを生む一方、欲しいキャラクターを選べない負担もあります。通常商品や交換の場、分かりやすい販売ルールを併設し、開ける楽しさと選べる安心を分けることが大切です。

ファン側は「何が出ても楽しめるシリーズか」「欲しい一体だけが目的か」を買う前に分けると、ランダムを娯楽として選べます。後者なら、開封済み商品の正規販売や信頼できる交換を選ぶほうが、予算も気持ちも守りやすくなります。

同じ一箱でも、満足の基準は二つある

DISCOVERY偶然を楽しむ買い方

どの一体との出会いも歓迎し、開封の瞬間まで含めて体験として選ぶ。

TARGET一体を選ぶ買い方

欲しいキャラクターを決め、通常販売や条件の明確な交換で探す。

価格帯を抑えたことも、広がりの条件でした。一つが数千円なら、試しに買う人は限られます。

FUNNELブラインドボックスが人を引き込む段階
  1. 見た目に惹かれる店頭・SNS
  2. 一つ買ってみる価格が手ごろ
  3. 開封が楽しい中身が分からない
  4. 揃えたくなるシリーズの存在
  5. 交換・再訪へ仲間と会う理由

推し活未来研究所による整理。最初の一つを買う心理的な負担が低いことが、この仕組みの入口です。

この仕組みが強いのは、買う前に何が入っているか分からないことです。選ぶ手間がないので、迷いにくい。同時に、狙ったものが出るまで買い続ける動機にもなります。

だからこの形式は、設計次第で楽しさにも負担にもなります。価格と種類数の組み合わせが、遊びの範囲を決める。

キャラクターを育てるコレクション

LABUBUのようなキャラクターは、表情、衣装、仲間、物語の断片を商品ごとに増やします。違う一体を迎えるたび世界が少しずつ見え、単発のかわいさが継続的なコレクションへ変わります。

2024年の売上は130.4億元、調整後純利益は34億元と報告されました。海外売上の伸びも含め、商品だけでなく開封体験を各地域へ運ぶ仕組みが成長を支えています。

少し不機嫌で完璧すぎない表情は、ファンが自分の気分を重ねる余白になります。公式が物語を説明し切らないからこそ、一体ごとの写真や飾り方に持ち主の解釈が宿ります。

運営にとっては、新作を増やすこととキャラクターの輪郭を守ることが同時に必要です。衣装やテーマを変えても表情や世界観の核が読み取れれば、コレクターは「同じものの色違い」ではなく、物語の新しい場面として受け止められます。

キャラクターを育てる発想も、この会社の特徴です。一つの当たりに頼らず、複数の系列を並行して育てています。

店と自販機を世界へ置く

ショッピングモールや空港、駅に店舗やROBO SHOPを置くと、ファンは専門店を目指さなくても日常の移動中にキャラクターと出会えます。便利な販売設備が、新規ファンとの偶然の接点にもなっています。

世界展開では同じ商品を輸出するだけでなく、立地、言語、決済、地域ごとのコレクター文化まで理解する必要があります。キャラクターを変えずに、出会い方を現地へ合わせる翻訳が求められます。

店舗はシリーズを見比べ、スタッフへ質問できる場所、ROBO SHOPは移動の途中で短時間に選べる場所と役割が違います。運営は在庫の置き方や案内を同じにせず、その接点で初めて買う人が次にどこへ進めばよいかを示す必要があります。

海外や旅行先で見つけた一体は、その土地の記憶と結びつきます。一方、地域限定という言葉だけを強く出すと、体験より入手競争が前へ出ます。企業は限定の理由や販売条件を説明し、常設商品にも世界観へ入れる選択肢を残す。ファンは移動費や在庫の不確実さまで含め、自分が楽しめる買い方かを判断できます。

この分野は模倣も早い。似た形式の商品が次々に出るため、キャラクターそのものの強さが問われます。

店舗と自販機を各地に置く戦略には、明確な意図があります。ネット通販だけなら、探している人にしか届きません。人が通る場所に置けば、探していない人の目にも入ります。

しかも実物を見られることが、この商品では重要です。写真では伝わらない大きさや質感がある。偶然の出会いと、実物の確認を同時に作れるのが店頭の役割です。

人気が出たあとに難しくなるのは、供給の調整です。品切れが続けば熱は冷め、作りすぎれば価値が下がります。

二次流通の価格が跳ね上がる状況も、長い目では有利に働きません。買いたい人が定価で買えない状態が続くと、新しい人が入ってこないからです。

開封の先にあるファンダム

店舗は販売場所であると同時に、開封から交換までを共有する舞台です。友人と箱を選び、店頭で開け、交換し、写真を投稿する一連の行動が、所有をコミュニティの経験へ広げます。

限定カラーやシークレットは動機になりますが、希少性を強調しすぎると転売価格が話題の中心になります。公式価格、再販、購入制限を明確にし、集める喜びが投機へ偏らない運用が必要です。

交換では、箱やカードの有無、傷、受け渡し方法を先に確認するだけでも行き違いを減らせます。価値を相場だけで決めず、互いが納得した一体を託すことが、知らない人との接点を安心できるファン交流へ変えます。

POP MARTの成長は、フィギュアを売っただけの話ではありません。出会う、開ける、集める、交換する、飾るという行動をつなぎ、買った後も続く文化へ育てた事例です。

COLLECTOR CHECK一箱を選ぶ前後に確かめたいこと

ファンダムができると、商品の意味も変わります。誰が何を持っているかが共有され、交換や見せ合いが生まれる。

その段階まで来ると、企業が管理できる範囲を超えます。文化として広がったものは、もう会社のものではない。

まとめ:商品ではなく発見を売る

DISCOVERY LOOP一箱をファンダムへ変える五つの瞬間
  1. 出会う店や自販機で偶然見つける
  2. 選ぶ箱とシリーズを見比べる
  3. 開ける結果を友人と共有する
  4. 交換する欲しい一体を縁に変える
  5. 飾る写真と物語を日常へ残す

販売の前後を切らず、次の出会いまで循環させます。

出会いの設計が、フィギュアを継続的な関係へ変えます。

  1. 開封する瞬間も体験になるブラインドボックスが商品に発見と会話の体験を足した。
  2. 店や売り場で偶然の出会いをつくる店舗や自販機が日常の移動中にも新たな出会いを増やした。
  3. 交換や写真で楽しみが続く交換と投稿が一体ごとの物語とキャラクターを育てた。

開封の瞬間を共有する文化も、この商品を押し上げました。動画にしやすく、見る側も結果を待つ楽しみがあります。

買った人が宣伝役になる構造は、意図して作れるものではありません。商品の形そのものが、共有されやすいかどうかで決まります。