『汝、星のごとく』の聖地巡礼|大島の椋名海岸、大三島のローソンと大山祇神社、今治港のはーばりーへ【推し活×聖地巡礼】
瀬戸内の島で育った井上暁海と、母親とともに島へ転校してきた青埜櫂。凪良ゆうの小説『汝、星のごとく』は、高校で出会った二人の、17歳から32歳までの15年を描く恋愛小説です。2023年に本屋大賞を受賞し、2026年10月9日には横浜流星と広瀬すずの主演、藤井道人の監督で映画が公開されました。
映画の撮影は、愛媛県今治市の島々と市街地で行われました。今治港の「はーばりー」の前は作中で夜空を彩るおんまく花火の会場、大島の椋名海岸は二人が海沿いを走る場面、伯方島の高校は二人が出会う場面、大三島のローソンはバスを降りてアイスを分け合う場面に登場します。今治地方観光協会が公開しているロケ地と関連施設をもとに、今治市街から大島・伯方島・大三島へ、しまなみ海道沿いの13か所が並びます。
出典:映画公式サイト、映画『汝、星のごとく』×今治特設サイト、講談社・原作『汝、星のごとく』

今治港から大島・伯方島・大三島へ、映画の場面に出会う13か所
1はーばりー(今治市みなと交流センター)|おんまく花火の港

今治港に建つ「はーばりー」は、船の待合所や観光案内所が集まる今治市みなと交流センターの愛称です。港を意味する「ハーバー」と今治の「バリ」を組み合わせた名前で、市民の応募から選ばれました。船を思わせる外観で、展望デッキや館内から港を見渡せます。
建物の前は、今治市民のまつり「おんまく」のフィナーレを飾るおんまく花火大会の会場です。夜空に咲く花火は、原作でも映画でも二人の高校時代と再会をつなぐ重要な場面として描かれます。撮影でははーばりー4階の会場も使われ、夕暮れのおんまくの人波で埋まる商店街でも撮影が行われました。
公開前の2026年8月9日、1万発を打ち上げる中四国最大級の花火大会に約25万人が集まる中、横浜流星と広瀬すずが浴衣姿で会場にサプライズで登場しました。冬の撮影から8か月ぶりの今治です。20時の開始に先立つ点火式で打ち上がったのは、本作をイメージしたコラボ花火「第1部 幾千の星たち」。主題歌「夕星」とともに、櫂と暁海のイメージカラーの青と黄色が夜空に開き、広瀬は、黄色から先端だけ青に変わっていく花火に切なさを感じたと話しています。横浜も、撮影で過ごした今治の海辺で市民と一緒に花火を見上げられた喜びを語りました。
3階には今治地方観光協会があり、入口横の通路にロケ地スタンプラリーのNo.8を置いています。協会の業務時間は8時30分〜17時30分(土日祝休み)ですが、休みの日も同じ場所でスタンプを押せます。
- 場所
- 愛媛県今治市片原町1丁目100-3
- 作品との関係
- おんまく花火大会の会場に面し、4階の会場も撮影に使用
- 館内施設
- 船の待合所、展望デッキ、3階に今治地方観光協会
- スタンプ設置
- 3階観光協会入口横の通路にロケ地スタンプラリーNo.8、土日祝も押印可能
出典:今治特設サイト・おんまく花火とはーばりー、今治特設サイト・凱旋キャンペーンの報告、今治市・広報いまばり特集号の発表
2アポニー(Coffee Shop Apony)|ほのかが暁海に櫂の近況を伝える喫茶店

今治市街の広小路通りに面したビルの2階にある、1975年創業の純喫茶です。櫂の母・ほのかが、暁海に櫂の近況を知らせる場面がこの店で撮影されました。入口に下がるレトロな看板が目印で、店内には操舵輪の飾りとワインレッドのソファが並ぶ、港町らしい空間が広がります。
劇中ではほのかが煙草を吸う場面がありますが、実際の店は禁煙のため、ルールを守って撮影されたと店主の白石丈二さんが明かしています。ネルドリップのアポニーブレンドやウインナーコーヒー、地元産ハチミツのトーストを味わえ、店内のカウンターにはロケ地スタンプラリーのNo.10が置かれています。
- 場所
- 愛媛県今治市共栄町2丁目2-58 共栄町ビル2階
- 作品との関係
- ほのかが暁海に櫂の近況を知らせる場面のロケ地
- 営業時間
- 10時〜19時、水曜・第1・3火曜・年末年始休み
- スタンプ設置
- 店内カウンターにNo.10、営業日のみ
3今治国際ホテル|人気作家になった櫂が泊まるホテル

今治の市街地にそびえる地上23階建てのホテルで、人気作家となった櫂が帰郷して泊まるホテルとして撮影されました。使われたのは、瀬戸内海と来島海峡大橋を一望する上層階のロイヤルスイートルームです。撮影前には監督とキャストが部屋を下見し、場面のイメージを話し合っていたと、総支配人の浅山典之さんが振り返っています。
上の階からは今治城やしまなみ海道、夏にはおんまく花火も望めます。高い吹き抜けとシャンデリアが印象的なメインロビーを抜け、正面入口を入って右奥の売店にロケ地スタンプラリーのNo.9があります。
- 場所
- 愛媛県今治市旭町2丁目3-4
- 作品との関係
- 人気作家となった櫂が帰郷して泊まるホテルのロケ地
- 見どころ
- 上層階から望む今治城、しまなみ海道、夏のおんまく花火
- スタンプ設置
- 正面入口を入って右奥の売店にNo.9、7時〜21時、年中無休
出典:今治特設サイト・今治国際ホテル、同・ロケを支えた人たち
4椋名海岸|海沿いを走る二人と、来島海峡大橋

大島の椋名(むくな)海岸は、櫂と暁海が自転車や車で海岸沿いを走る場面などに、作中で何度も登場する海岸です。今治地方観光協会は、物語の重要な局面を彩る場所として案内しています。
海岸の道からは、大島と今治の市街地を結ぶ世界初の三連吊橋・来島海峡大橋が見えます。海の向こうに橋が架かり、その先に別の島と街がある。島を出て東京へ向かう櫂と、家族のために島に残る暁海の物語に、この距離感は重なります。
同協会がこの海岸の見どころに挙げるのは、夕焼けから、海に沈む夕日、そして空が深くなるころに光り始める夕星(ゆうづつ)までの移り変わりです。夕星は宵の明星のこと。RADWIMPSが映画のために書いた主題歌も「夕星 −ゆうづつ−」と名付けられています。
- 場所
- 愛媛県今治市吉海町椋名
- 作品との関係
- 櫂と暁海が自転車や車で海岸沿いを走る場面のロケ地
- 見どころ
- 来島海峡大橋を望む海沿いの景色と、夕焼けから夕星までの空の移り変わり
5亀老山展望公園|作中に登場する、大島南端の眺め

大島の南端、標高307.8メートルの亀老山(きろうさん)の山頂にある展望公園で、作中にはここから見た景色も登場します。隈研吾が設計したパノラマ展望ブリッジからは、来島海峡大橋と瀬戸内の島々を見渡せます。日没後は展望台がナイト照明で彩られ、来島海峡大橋のライトアップの実施日には、光る橋と今治の夜景を眺められます。
入園は無料で駐車場があり、24時間開放されています。山頂へ向かう道には道幅の狭い区間があり、大型車の通行は控えるよう案内されています。
- 場所
- 愛媛県今治市吉海町南浦487-4
- 作品との関係
- 作中に山頂からの景色が登場
- 料金・時間
- 入園無料、24時間開放、駐車場あり
- アクセス
- 山頂への道に道幅の狭い区間あり、大型車は通行を控える
6名駒海岸(民宿名駒)|二人の「いつもの砂浜」

二人が海を眺めながら語り合う「いつもの砂浜」は、大島の名駒海岸です。物語の中で何度も登場する浜で、砂浜や防波堤からは対岸の今治市街や瀬戸内の島々を望めます。
砂浜の目の前に建つ料理民宿の民宿名駒では、来島海峡の魚を使った舟盛りや郷土料理の宝楽焼き、鯛めしを味わえます。宿泊も食事のみの利用も、電話での予約が必要です。宿を営む矢野京子さん・和胤さんは凪良ゆうのファンでもあり、海に浮かぶ伯母島や竜神島、対岸の石鎚連峰を望むこの浜の景色が一番好きだと話しています。
- 場所
- 愛媛県今治市吉海町名駒
- 作品との関係
- 二人が語り合う「いつもの砂浜」のロケ地
- 民宿名駒
- 昼11時30分〜14時、夜17時30分〜20時、不定休、食事のみも電話予約
- スタンプ設置
- フロントのカウンター前にNo.6、休業日は正面玄関の前
7Cafe Shozan|瞳子のカフェ兼ギャラリー「YU-NAGI」

刺繍作家の瞳子が営むカフェ兼ギャラリー「YU-NAGI」として登場するのが、大島・吉海町の海沿いにあるCafe Shozanです。大きな窓の向こうに穏やかな瀬戸内海が広がる木調の店内には、映画に登場した空間の面影が残ります。
神奈川県から移住して店を営む広田裕子さん・俊雄さんは、原作を読んだ翌日に「絶対映画化されると思う」とInstagramに書いていたそうです。撮影では、美術スタッフがほんの一瞬の場面のためにも長い時間をかけて店内を作り込みました。
- 場所
- 愛媛県今治市吉海町福田119
- 作品との関係
- 瞳子のカフェ兼ギャラリー「YU-NAGI」のロケ地
- 営業時間
- 10時〜16時、火・水・木曜定休
- スタンプ設置
- 入口近くの棚の上にNo.5、定休日は入口の玄関前
出典:今治特設サイト・YU-NAGI(Cafe Shozan)、同・ロケを支えた人たち
8友浦サイト|海を望む「瞳子の家」

宮窪町友浦のレモン通り沿い、みかん畑の中に赤い屋根が現れるカフェ・レストランで、劇中では瞳子が暮らす家として描かれました。撮影では、海を望むテラスと室内に、瞳子のアトリエ兼住居のセットが一から組まれています。
枝を組んだ入口のアーチに撮影時の面影が残り、建物の前には芝生とテラスが広がります。宮窪近海のサザエを使ったパスタや季節の生搾り柑橘ジュース、自家焙煎コーヒーを味わえます。
- 場所
- 愛媛県今治市宮窪町友浦664-2(レモン通り)
- 作品との関係
- 劇中の「瞳子の家」のロケ地
- 営業時間
- 12時〜16時(水〜日曜)、月・火曜と不定休
- スタンプ設置
- 店舗入口の扉の横にNo.4、定休日は敷地入口のアーチ横(アーチの奥へは入らない)
出典:今治特設サイト・瞳子の家(友浦サイト)、同・ロケを支えた人たち
9宮窪漁港|ほのかが漁師から魚をもらう港

大島の宮窪漁港では、ほのかが漁師から魚をもらう場面が撮られました。宮窪町漁協の関洋二さんによると、今治ロケ本番の最初の撮影場所がこの漁港で、組合員がエキストラとして参加し、撮影で使う釣り小屋も美術スタッフと一緒に一から作ったそうです。
漁船が並び、漁網やいけすに漁の日常が見える、島々と海に囲まれた港です。漁業関係者の作業場所のため、現地の案内に従い、作業の妨げにならないよう配慮が求められています。
- 場所
- 愛媛県今治市宮窪町(宮窪漁港)
- 作品との関係
- ほのかが漁師から魚をもらう場面のロケ地、今治ロケ本番の最初の撮影場所
- 見学の注意
- 漁業関係者の作業場所。現地の案内に従い、作業の妨げにならないようにする
10しまなみ高校伯方キャンパス|二人が出会う高校

伯方島の愛媛県立しまなみ高等学校伯方キャンパス(愛媛県立今治西高等学校伯方分校)は、櫂と暁海が通う高校として登場し、二人が出会う場面をはじめ、物語の始まりを形づくる学校生活の場面が撮影されました。校舎のそばに瀬戸内海が広がる、島ならではの学校です。
分校長の松浦仁昭さんは、ロケハンで監督やスタッフ、キャストを校内に案内し、一つの場面のために何度も打ち合わせとリハーサルが重ねられたと振り返っています。教育施設のため敷地内への立ち入りは禁止されており、校外から静かに眺める場所です。
- 場所
- 愛媛県今治市伯方町有津甲2358
- 作品との関係
- 櫂と暁海が通う高校のロケ地
- 見学の注意
- 敷地内は立ち入り禁止、校外から眺める
出典:今治特設サイト・しまなみ高校伯方キャンパス、同・ロケを支えた人たち
11ヒャッホー坂|北原先生が自転車で下る坂

大三島の「ヒャッホー坂」は、二人が乗ったバスが通り、北原先生が自転車に娘を乗せて下る場面が撮られた坂です。柑橘畑の間を下り始めると、目の前に瀬戸内の海と島々が一気に広がり、夕日の時間帯もすすめられています。
大山祇神社から約10キロ、車で15分ほどの一般の生活道路です。車も通るため、写真を撮るときは道路の中に立ち止まらないよう案内されています。自転車で向かう場合は、神社から距離があり坂道も続くことから電動自転車がすすめられ、下りではスピードの出しすぎへの注意が呼びかけられています。
- 場所
- 愛媛県今治市大三島町
- 作品との関係
- 二人が乗るバスが通り、北原先生が自転車で下る場面のロケ地
- アクセス
- 大山祇神社から約10キロ、車で約15分
- 見学の注意
- 一般の生活道路。道路の中で立ち止まって撮影しない
12ローソン今治大三島町宮浦店|バスを降りて、アイスを分け合う

大三島の宮浦にあるローソンは、二人がバスを降りてアイスを分け合う場面の撮影場所です。大山祇神社から歩いて行ける距離にある、島の人が日々使う店。名所ではない店先が、二人の高校時代の時間を映し出しています。
店長の村上清志さんは観光協会のインタビューで、いつもの店がたくさんのカメラとスタッフで一気に撮影現場へ変わっていった驚きを振り返っています。走り去るキャストが一瞬ほほえみかけてくれたことが、忘れられない思い出になったそうです。
店はロケ地スタンプラリーのNo.2で、スタンプは店内のレジカウンター前にあります。今治市内のローソンでは、2026年8月から、櫂をイメージした「Ver.K」と暁海をイメージした「Ver.A」の今治コラボTシャツ(各2,500円)を販売し、店内のマルチコピー機では映画のステッカーを2026年12月21日まで購入できます。
- 場所
- 愛媛県今治市大三島町宮浦5112-1
- 作品との関係
- バスを降りた櫂と暁海がアイスを分け合う場面のロケ地
- 営業時間
- 24時間営業・年中無休
- 関連企画
- ロケ地スタンプラリーNo.2、店内マルチコピー機で2026年12月21日まで映画ステッカー販売
出典:今治特設サイト・島のローソン、今治特設サイト・ロケを支えた人たち、今治特設サイト・コラボTシャツ
13大山祇神社|映画の大ヒット祈願が行われた、伊予国一宮

大三島の大山祇(おおやまづみ)神社は、花火大会の翌日、2026年8月10日に藤井道人監督も合流し、横浜流星、広瀬すずと3人で本殿に並んで大ヒット祈願の祈祷を受けた場所です。横浜は、20代最後の作品を形に残せたことへの感謝を口にしています。
同じ日から、神符授与所で映画公開記念御朱印の頒布が始まりました。作品に登場する「夕星」などの星をモチーフにした、半透明の用紙の御朱印で、受付は9時〜17時です。神符授与所に向かって右奥の自動販売機の横には、ロケ地スタンプラリーのNo.3も置かれています。今治市街からは、しまなみ海道を渡って車で約40分かかります。
古くから海を渡る人の安全を守ってきた伊予国一宮で、全国に一万社あまりある大山祇神社・三島神社の総本社です。境内の中央には、小千命(おちのみこと)が手植えしたと伝わる樹齢約2,600年の大楠がそびえ、境内の楠群は国の天然記念物に指定されています。奥の院へ向かう途中には、根元から二本に分かれて門のようになった樹齢約3,000年の大楠「生樹の御門」もあります。
宝物館・紫陽殿と国宝館には、源頼朝や源義経、鶴姫らが奉納した甲冑や刀剣など、全国で国宝・重要文化財に指定された武具類の約8割が保存・展示されています。御田植祭(旧暦5月5日)と抜穂祭(旧暦9月9日)には、力士が目に見えない稲の精霊と相撲を取る「一人角力」が奉納され、県の無形民俗文化財になっています。
- 場所
- 愛媛県今治市大三島町宮浦3327
- 作品との関係
- 2026年8月10日に藤井道人監督・横浜流星・広瀬すずが大ヒット祈願を受けた神社
- 授与品・スタンプ
- 神符授与所で映画公開記念御朱印を頒布・受付9時〜17時、右奥の自動販売機横にスタンプNo.3
- アクセス
- 今治市街からしまなみ海道経由で車約40分
出典:今治特設サイト・大山祇神社、今治特設サイト・映画公開記念御朱印、大山祇神社公式
編集者の故郷・今治から生まれた物語
担当編集者の思い出と出身地が、創作の手がかりに
凪良ゆうは、担当編集者との打ち合わせを通じて題材を探っていく作家です。『汝、星のごとく』の刊行時、講談社の対談で、当時の担当編集者・河北壮平が自分の過去の恋愛経験を語ってくれたことと、その出身地である今治を舞台にしたことが、物語のヒントになったと明かしています。河北は、高校時代に夕暮れの海辺で過ごした時間や、船や橋で本土とつながる島の距離感を凪良に伝え、そこから櫂と暁海の15年間が形になっていきました。
今治市によると、凪良は執筆前に今治を訪れた体験が物語につながったと語っています。作品の完成後もたびたび今治を訪れ、2025年には今治市から今治エール大使「IMABALINA Ambassador」を委嘱されました。映画公開前の2026年9月12日に今治で開かれた記念講演会では、河北との出会いが今治との縁や映画化につながったと振り返っています。
出典:講談社・凪良ゆうと担当編集者の対談、今治市・凪良ゆうと今治の縁
自分を養う力と、人生を選ぶ力
凪良は同じ対談で、一度は真剣にリアルな恋愛小説を書いてみたかったと語っています。小説は櫂と暁海それぞれの視点で進み、恋愛だけでなく、それぞれの母親との関係のままならなさも描かれます。書き始めたときは恋愛小説のつもりでも、できあがってみると、瀬戸内の島で育った女の子が自立した強さを身に付けていく物語にもなった、と。
物語の中では、暁海の父の恋人である林瞳子も、高校の化学教師・北原草介も、自分で自分を養う力の大切さを口にします。作者自身、自由でいるための力を持たないうちは何も選べないと、書きながら感じていたそうです。ただし、何でも好きに決めればよいわけではない。暁海は終盤で大きな決断をしますが、そこへ至るまでに途方もない痛みと葛藤を重ねています。
出典:講談社・作品に込めた思い
夏と冬に撮影し、今治で過ごした日々
今治での撮影は、夏と冬に行われました。横浜流星は、夏は暑く冬は寒い現場で汗が止まらず、周りを待たせてしまうこともあったと振り返り、広瀬すずも、すごくストイックで過酷な現場だったけれど、今となっては少し愛おしいと話しています。藤井監督は、市民からジュースの差し入れをもらい、夏の撮影では暑さ対策にも協力してもらったと、街と一緒に映画を作った感覚を語りました。
特設サイトのインタビューでは、横浜が、撮影が早く終わった日に近くの銭湯やサウナで気持ちを切り替え、鯛めしをよく食べたことを、広瀬が、地元の人ばかりのパン屋や焼き鳥の店、海鮮の店に通ったことを明かしています。2026年8月10日の今治市長・徳永繁樹への表敬訪問には凪良ゆうも加わり、試写では小さなティッシュでは足りず、箱ティッシュをもらうほど泣いたと話しました。徳永市長は、今治の海と島々の風景がスクリーンの中で生きていることに謝意を伝えています。
出典:今治特設サイト・横浜流星と広瀬すずのインタビュー、今治特設サイト・凱旋キャンペーンと市長表敬訪問
櫂と暁海を取り巻く人々と、今治で撮られた場面
映画は今治の島々と市街地で多くのロケを行い、市民エキストラも出演しました。今治地方観光協会の特設サイトでは、各登場人物の場面と撮影に協力した地元の人々の証言が公開されています。
島で出会う二人と、その家族
青埜櫂|横浜流星
漫画原作者としてプロを目指す青年。恋人を追って島へ移り住んだ母とともに転校し、暁海と出会います。卒業後は上京し、暁海と遠距離恋愛に。横浜流星は原作を読み、瀬戸内の景色の中で櫂として生きたいと考え、凪良と藤井監督に映画化への思いを伝えました。人気作家となった櫂が帰郷して泊まるのは、③今治国際ホテルの上層階の部屋です。
井上暁海|広瀬すず
島で育ち、いつか自分の力で島を出たいと思いながら、家族のために島で働く女性。瞳子を通じて刺繍に惹かれていきます。暁海の職場の場面は、今治市天保山町の青果市場・丸今青果の事務所で撮影されました。劇中では造船関係の会社という設定で、入社式の場面もここで撮られています。ふだんは殺風景だという事務所が撮影に向けて造船会社のオフィスへ模様替えされ、社員もエキストラとして参加しました。代表取締役の砂田和彦さんと専務の武田さんは、短い場面でも藤井監督が納得のいくまで何度もアングルを変えて撮り直していた姿が印象に残ったと話しています。市場の敷地は業務用のため関係者以外立ち入り禁止です。
青埜ほのか|尾野真千子
櫂の母で、スナックのママ。恋人を追いかけて瀬戸内に移り住み、幼いころから櫂を振り回します。ほのかが漁師から魚をもらう場面は⑨宮窪漁港、暁海に櫂の近況を知らせる場面は②アポニーで撮られました。尾野真千子は、今治でのロケや地元の人たちの温かさが、そのまま役の深みにつながったとコメントしました。
井上志穂|木村佳乃
暁海の母。夫が瞳子と関係を持って家を出たことで心を病み、暁海が島を離れられない理由の一つになります。木村佳乃は、以前にも映画の撮影で長期滞在したことのある島だったと振り返っています。
二人を見守る大人たち
林瞳子|石田ゆり子
オートクチュールの刺繍作家で、暁海の父の不倫相手。自立した生き方が、暁海に憧れと憎しみの両方を抱かせます。石田ゆり子は役のために髪を短く切り、フランス刺繍の技法であるリュネビル刺繍を一から習いました。今治には20年ほど前、テレビドラマの撮影で長期滞在したことがあるそうです。瞳子のカフェ兼ギャラリー「YU-NAGI」は⑦Cafe Shozan、瞳子の家は⑧友浦サイトで撮影されています。
北原草介|長谷川博己
櫂と暁海が通う高校の化学教師で、卒業後も二人を気にかけます。幼い娘と二人で暮らしています。北原が自転車に娘を乗せて下る坂は⑪ヒャッホー坂、高校の場面は⑩しまなみ高校伯方キャンパスで撮られました。
久住尚人|松村北斗
櫂と組んで同じ夢を追う相棒で、漫画の作画担当。櫂にしか明かしていない秘密を抱えています。尚人と櫂の才能を信じた二人の編集者、植木渋柿(濱田岳)と二階堂絵理(中村アン)の物語は、続編『星を編む』の表題作で描かれます。
出典:映画公式・キャストとコメント、今治特設サイト・丸今青果、同・ロケを支えた人たちのインタビュー、同・丸今青果のインタビュー
小説、映画、主題歌に重なる15年の時間
2023年の本屋大賞から、映画まで
京都市在住の凪良ゆうは、2007年に初めての著書を出し、BLジャンルで「美しい彼」シリーズなどを書いてきました。2017年の『神さまのビオトープ』から一般文芸でも支持を集め、2020年に『流浪の月』で本屋大賞を受賞しています。『汝、星のごとく』の単行本は2022年8月に講談社から刊行され、第168回直木賞と第44回吉川英治文学新人賞の候補になり、翌2023年、二度目の本屋大賞を受賞しました。シリーズ累計は200万部を超えています。講談社文庫版は2025年7月15日刊行、456ページです。
映画化を望んだのは横浜流星でした。監督には『正体』で組んだ藤井道人に打診し、脚本にはNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」の安達奈緒子が加わっています。暁海役の広瀬すずと横浜は、同じ凪良原作の映画『流浪の月』に続く共演です。安達は、この小説が女性が自分自身として生きることの難しさを描き切っていると感じる一方、役割と自由の間で引き裂かれてきたのは女性だけではない、全ての人々の苦闘の物語だと気付かされたとコメントしています。横浜は今治のインタビューで、自分の信じたものを大切にし、たとえ間違っていても自分で決断したならそれでいい、という二人の生き方に背中を押されたと話しました。
出典:講談社・原作の書誌、映画公式・イントロダクションとスタッフ、今治特設サイト・横浜流星と広瀬すずのインタビュー
予告編と、RADWIMPS「夕星」
主題歌の「夕星 −ゆうづつ−」は、RADWIMPSが映画のために書き下ろした曲です。RADWIMPSは新海誠監督の『君の名は。』『天気の子』『すずめの戸締まり』の音楽全般を担当し、日本アカデミー賞最優秀音楽賞を3度受賞しています。RADWIMPSの野田洋次郎は、生まれる場所も親も環境も選べないけれど、自分の幸せは自分で決められる、という希望をこの作品から受け取ったとコメントしています。椋名海岸の夕暮れに光る夕星と、曲の題名が重なります。
東宝の公式チャンネルは、この主題歌を使った予告②を公開しています。
続編『星を編む』で、周囲の人の時間へ
2023年11月8日に刊行された『星を編む』には、三つの物語が収められています。北原先生が秘めてきた過去を描く「春に翔ぶ」、櫂と尚人の才能を信じ続けた二人の編集者がつないだものを描く表題作「星を編む」、そして暁海のその後を描く「波を渡る」です。いずれも講談社の文芸誌「小説現代」に掲載された後、単行本にまとめられ、2024年の本屋大賞でもノミネートされました。
出典:講談社・『星を編む』
今治の街が、映画を迎えた方法
今治市は「広報いまばり」2026年10月号(63,000部)の表紙に映画のポスターを使い、主演の二人へのインタビューや、凪良と河北のメッセージを4ページの特集で載せました。公開日の10月9日からは今治地方観光協会が聖地巡礼ガイドブックを配り、ロケ地スタンプラリーを始めました。ガイドブックは、観光協会、今治市役所観光課、今治駅前観光インフォメーションセンターとスタンプラリーの対象箇所で、各応募期間に一人1冊配られ、郵送はしていません。スタンプは、マリンオアシスはかた、大三島のローソン、大山祇神社、友浦サイト、Cafe Shozan、民宿名駒、能島水軍、観光協会、今治国際ホテル、アポニーの10か所。2027年3月31日まで、付属のはがきで応募すると、集めた数に応じて今治タオルや地域特産品などのオリジナルギフト抽選に参加できます。
コラボ商品には、八木酒造部の今治生まれの純米大吟醸「山丹正宗 夕星」、母恵夢本舗の「うずしおパイ 瀬戸内レモンティー」、瀬戸内産の天然真鯛を使った「瀬戸内鯛めし」の限定パッケージがあります。スタンプラリーのNo.1は、伯方・大島大橋のたもとにある道の駅「マリンオアシスはかた」です。白い砂浜の伯方ビーチに面し、伯方の塩を使った塩ソフトクリームや塩ラーメンを味わえます。松山空港でも、公開に合わせて国内線の入口に映画の壁面広告とデジタルサイネージが期間限定で掲出されました。
村上海賊の拠点だった能島を望む大島・宮窪の「能島水軍」は、ロケ地ではありませんが、夏の撮影中にキャストとスタッフへ料理を届けました。今治名物の焼豚玉子飯や、撮影の合間に食べやすい冷しゃぶうどん、宮窪産の釜揚げしらす丼などです。代表の村上さんと料理担当の矢野さんは、暑い夏のロケを食事で支えようとメニューを工夫したと語っています。建物の左奥には撮影時のセットを再現したフォトスポットとスタンプラリーNo.7が設けられ、潮流体験船で能島周辺の最大10ノットに及ぶ速い潮の流れを間近に見ることもできます。
出典:今治市・広報いまばり特集号、今治特設サイト・コラボ商品とお知らせ、今治特設サイト・ガイドブック、今治特設サイト・スタンプラリー、今治特設サイト・マリンオアシスはかた、同・松山空港、今治特設サイト・能島水軍、同・ケータリングのインタビュー
原作の刊行から映画公開まで
- 2020年凪良ゆう『流浪の月』が本屋大賞を受賞原作
- 2022年8月単行本『汝、星のごとく』を講談社が刊行原作
- 2022年10月続編の一編「春に翔ぶ」を小説現代に掲載原作
- 2023年第20回本屋大賞を受賞原作
- 2023年11月8日続編『星を編む』を刊行原作
- 2025年凪良ゆうが今治エール大使に就任今治
- 2025年7月15日講談社文庫版を刊行原作
- 2026年8月3日最新予告とRADWIMPSの主題歌を発表映画
- 2026年8月9日主演の二人がおんまく花火大会に登場今治
- 2026年8月大山祇神社で大ヒット祈願今治
- 2026年9月12日凪良ゆうと河北壮平が今治で講演今治
- 2026年9月25日広報いまばり10月号が映画特集今治
- 2026年10月9日映画公開、ロケ地スタンプラリー開始映画
小説の刊行から3年余りで、映画のロケ地となった今治では、原作者と市の交流、撮影、公開前のイベントが重なっていきました。
研究所メモ|ビジネスの視点から
今治の特設サイトは、ロケ地と、祈願やケータリングで映画を支えた関連地を分けて案内しています。学校や青果市場のように立ち入れない場所には外から見る条件を明記し、店や宿には「ロケを支えた人たち」のインタビューを添えました。撮影に協力した人の言葉が、訪問者と店をつなぐ入口になっています。
ローソンのTシャツ、地元の酒や菓子のコラボ商品、スタンプラリーは、撮影地を巡る動線と地域の買い物を一つにする工夫です。担当編集者の故郷という原作の出発点から、作家の大使就任、映画のロケへと縁を重ねたことが、公開時の受け入れの厚さにつながっています。
出典
映画公式サイト / 映画『汝、星のごとく』×今治特設サイト / 講談社・凪良ゆうインタビュー / 今治市・広報いまばり特集号 / 大山祇神社
よくある質問
『汝、星のごとく』の映画はいつ公開されましたか?
2026年10月9日に公開されました。横浜流星と広瀬すずが主演し、藤井道人が監督、安達奈緒子が脚本を担当しています。
二人がアイスを分け合うローソンはどこですか?
愛媛県今治市大三島町宮浦5112-1のローソン今治大三島町宮浦店です。大山祇神社の近くにあり、ロケ地スタンプラリーのNo.2にもなっています。
大山祇神社は映画のロケ地ですか?
公開前に藤井監督と横浜流星、広瀬すずが大ヒット祈願を行った場所で、映画公開記念御朱印を頒布しています。
二人の「いつもの砂浜」はどこですか?
大島の名駒海岸です。砂浜の目の前に料理民宿の民宿名駒があり、宿泊や食事(要予約)で利用できます。
原作の舞台はなぜ今治なのですか?
当時の担当編集者・河北壮平の出身地が今治で、凪良ゆうは対談で、その出身地を舞台にしたことが物語のヒントになったと語っています。執筆前に今治を訪れた体験も物語につながりました。
高校のロケ地は見学できますか?
愛媛県立しまなみ高等学校伯方キャンパスは教育施設のため、敷地内には入れず、校外から眺める場所として案内されています。
主題歌は誰が歌っていますか?
RADWIMPSの「夕星 −ゆうづつ−」です。夕星は宵の明星のことで、ロケ地の椋名海岸では夕暮れに光る夕星が見どころとして紹介されています。
続編はありますか?
2023年11月に刊行された『星を編む』です。北原先生の過去、二人の編集者、暁海のその後を描く三つの物語が収められています。



