カバーの売上96億円、前年比50%増/マクドナルドがハッピーセット配布を見送り【週刊推し活ニュース 2025年8月22日号】

2025年8月15日〜8月21日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードは、成長の数字と、現場の混乱が同時に見えたでした。
ホロライブを運営するカバー株式会社が、2026年3月期第1四半期の決算を発表。売上高は前年同期比50.1%増の96億2,900万円となり、VTuber事業の多角化とグローバル展開が業績を押し上げました。一方でマクドナルドは、「ポケモンカードキャンペーン」で発生した転売目的の大量購入・混雑を受け、次回ハッピーセット「ワンピースカードゲーム」の配布を見送ると発表。ファンビジネスの熱量が、そのまま店舗運営のリスクに直結する現実が浮き彫りになりました。
士郎正宗の展覧会「士郎正宗の世界展」は東京会場で5万5,000人超を動員して大阪へ巡回。ホラーゲーム『死印 -再霊-』のクラウドファンディングは1日で目標金額1,000万円を達成しました。博報堂はCJ ENMと合弁会社を設立し、K-POP発のグローバルビジネスに参入。数字が伸びる場所と、混乱が起きる場所が、同じ推し活市場の中で隣り合っています。
VTuber企業の決算とライブ展開が本格化した週
カバー — 売上高96億円で前年比50%増、VTuber事業の多角化が進む
カバー株式会社は、2026年3月期第1四半期(2025年4月〜6月)の決算を発表しました。売上高は前年同期比50.1%増の96億2,900万円、営業利益は16.5%増の9億7,200万円、純利益は11.9%増の6億9,300万円。VTuber轟はじめさんの生誕祭ライブでは同時接続数が10万人を超えX(旧Twitter)でトレンド1位を獲得したほか、猫又おかゆさんの2ndライブは会場8,000人以上・配信1万人超を集めました。マーチャンダイジング事業では大阪に公式店舗を開設し、モバイルゲーム「荒野行動」とのコラボも実施。2030年3月期までに売上高1,000億円を目指す中期経営目標を掲げています(Mogura VR)。
研究所メモ: 配信・グッズ・ライブ・ライセンスと事業を横に広げた結果が、決算の数字として初めて外部から見える形になりました。ファンビジネスは「盛り上がっている」で終わらせず、どの事業がどれだけ伸びたかを分解して語れるかが、投資判断や提携交渉の材料になります。
にじさんじとホロライブが、幕張とインドネシアへ舞台を広げる
ANYCOLOR株式会社は「にじさんじフェス2026」を発表。メイン開催は2026年5月16日・17日の2日間、会場は幕張メッセ展示ホール1〜8で、スペシャルステージは5月14日から17日までの4日間実施されます。5回目の開催で、音楽ライブに加えライバー制作の美術品展示や着ぐるみショーなど文化祭のような構成です(Mogura VR、にじさんじ、にじめん、eeo)。カバーは「ホロライブインドネシア」5周年を記念し、2025年11月15日に現地初のライブ「hololive Indonesia 5th Anniversary LIVE Chromatic Future」をインドネシアで開催すると発表。2020年の活動開始以来、これまでオンライン中心だったファンとの交流が、初めて現地会場でのライブに発展します(オタク総研)。
研究所メモ: 国内最大級の会場を確保する動きと、5年間オンラインで積み上げたファンにようやく現地で会いに行く動きが同じ週に重なりました。バーチャルで先にファンを増やし、リアルの場は満を持して用意する。この順番の逆転が、VTuber企業の拡大パターンとして定着しつつあります。
コンビニと外食チェーンが、混乱の後始末に追われた
マクドナルド — ポケカ配布の混乱を受け、ワンピースカード配布を見送り
マクドナルドは8月20日、8月29日から予定していたハッピーセット「ワンピースカードゲーム」の配布を見送ると発表しました。8月8日から配布された「ポケモンカードキャンペーン」では、転売目的の大量購入により店頭や周辺での混雑・混乱、注文商品の放置・廃棄が発生。8月11日の声明では「クルーの皆様、近隣にお住いの住民の皆様」に謝罪し、「購入数のより厳格な制限」や「フリマアプリ運営事業者との継続的な協議」を実施するとしています(インサイド)。
研究所メモ: キャンペーンの人気そのものが、店舗運営を止めかねないリスクになった事例です。ファン向け施策の成功指標を「配布数」や「話題量」だけで見ていると、現場の混乱という副作用を見落とします。数量限定施策には、転売対策を含めた運用設計をセットで考える必要があります。
極楽湯×鬼滅の刃、ローソン×NIKKE — 温浴と小売がコラボを継続
極楽湯はGK Marketingと共同で「アニメ「鬼滅の刃」×極楽湯・RAKU SPA」第4弾を2025年8月18日〜9月9日に開催。ufotable描き下ろしイラストのグッズや5種類のコラボ風呂、館内放送「極楽湯コソコソ噂話」を実施し、2,000円以上のグッズ購入で千社札シール(全19種)が付きます(インサイド)。ローソンは8月26日から『勝利の女神:NIKKE』とのコラボを開始。K-POP風衣装3体、ラグジュアリー衣装3体のイラストでアクリルスタンドや缶バッジを展開し、お菓子2点購入でクリアファイル(全6種)がもらえるほか、ローソンプリントでは限定ブロマイド全53種が登場します(インサイド)。
研究所メモ: 入浴施設とコンビニという、来店頻度もタイミングも違う2つの業態が同じ週にIPコラボを走らせています。買い物のついでに立ち寄る場所と、日常的に通う場所の両方にキャラクターを置くと、生活動線のどこかで必ずファンと接点が生まれます。既存の来店頻度を、そのままコラボの資産として使う発想です。
ゲームとサウナ、ゲームと新聞が異業種で手を組んだ
ポケモンスリープ×サウナイキタイ — 「ととのう」と睡眠の関係を実証実験
睡眠ゲームアプリ『Pokémon Sleep』は、サウナ検索アプリ「サウナイキタイ」と共同で実証実験プロジェクト「サとス」を2025年8月19日〜9月18日の期間で開始しました。サウナでの「ととのう」体験と睡眠の関係をユーザー協力のもとデータ収集する取り組みで、参加者は「サウナイキタイ」への活動投稿と『Pokémon Sleep』での10日以上の睡眠計測が条件。抽選で合計100名に、カビゴン柄の「サとス」オリジナルサウナハットがプレゼントされます(インサイド)。
研究所メモ: グッズを配って終わりではなく、ユーザーのデータ提供を条件にした点が特徴です。ゲームとウェルネスという離れた領域を「睡眠」という共通軸でつなぎ、参加のハードルを体験そのものに変えています。ノベルティ配布より一歩進んだ、行動データを巻き込む設計として参考になります。
FGO「OVER THE SAME SKY」— 47都道府県で地方紙とコラボする10周年広告
ラセングルは『Fate/Grand Order』10周年記念広告企画「OVER THE SAME SKY」の第3弾として、九州・沖縄エリアのイラストを8月17日・18日に公開しました。「サーヴァントが全国各地を旅したら」をテーマに、実際の名所の背景写真と描き下ろしサーヴァントを組み合わせ、各地域の新聞に掲載する47都道府県縦断企画です。福岡・長崎・大分・鹿児島・佐賀・熊本・宮崎・沖縄の8県で、太宰府天満宮や熊本城など実在の観光地を舞台にしたイラストが西日本新聞や熊本日日新聞など地元紙に掲載されました(ファミ通)。
研究所メモ: 47都道府県すべてに、その土地の名所とキャラクターを紐づけて地元紙に載せる。ネット広告では届きにくい層に、地方紙という媒体を使ってリーチしています。全国チェーンを持つ企業が地域ごとの反応を見たいとき、ゲームIPと地方メディアの組み合わせは応用できる型です。
アパレルブランドと展覧会が、限定と巡回展で稼いだ
アベイル×んぽちゃむ — しまむらグループが人気SNSキャラとコラボ
しまむらグループのアベイルは、「おぱんちゅうさぎ」の作者「可哀想に!」氏によるキャラクター「んぽちゃむ」とのコラボグッズを2025年8月30日より発売します。「んぽちゃむ」と親友「きみまろ」をキャビンアテンダントやアイドル姿でデザインし、エコバッグや巾着、買い物カゴ、サンダルといった普段使いアイテムから、マスコットチャームやステッカーまでを展開。店舗とオンラインストア同日発売です(インサイド)。
研究所メモ: SNS発のキャラクターを、衣料品ではなくエコバッグやサンダルといった生活雑貨に落とし込んでいる点が目を引きます。ファッションアイテムより単価が低く手に取りやすい分、コラボの入口として機能しやすい。人気IPの版権が高騰する中、SNSで育ったキャラクターは中価格帯の店舗にとって現実的な選択肢になっています。
士郎正宗の世界展 — 東京で5万5千人動員、大阪へ巡回・グッズ通販も継続
『攻殻機動隊』の作者・士郎正宗の大規模展覧会「士郎正宗の世界展」が世田谷文学館での東京会場を8月17日に閉幕。来場者は5万5,000人超を記録しました。ストリートウェアブランド「MEQRI」とのコラボTシャツなど会場限定商品は一部完売となり、その反響を受けて8月18日からMEQRI公式サイトでの通販が始まっています(アニメ!アニメ!)。展覧会は2025年9月5日から10月5日まで大阪・心斎橋PARCOへ巡回することも決定し、大阪会場からは新柄Tシャツや複製原稿セットなど新グッズも登場予定です(アニメ!アニメ!、超!アニメディア)。
研究所メモ: 会場限定で完売した商品を、閉幕後に通販で拾い上げ、さらに巡回展で新グッズを追加する。1つの展覧会を「東京の6週間」で終わらせず、複数の収益機会に分割しています。買えなかった人の不満を通販で解消しつつ、次の街ではまた新しい目玉を用意する。巡回展のグッズ設計として理にかなっています。
K-POPと広告会社が、新しいファンビジネスに参入した
キム・ジュンス「VOICE: COLOR OF SOUND」— 原宿ハラカドで没入型展示
K-POPアーティスト、キム・ジュンスさんによる没入型メディア展示「VOICE : COLOR OF SOUND」が、2025年8月20日から28日まで東京・原宿の東急プラザ原宿「ハラカド」4階で開催されます。声を色彩として空間全体で表現する構成で、VR映像を上映する「PRISM STAGE」、有料でホログラム風撮影ができる「HOLOGRAM STUDIO」、ファンのメッセージを展示する「ECHO NOTES」などを用意。チケットはファンクラブ先行2,000円、一般販売2,200円です(Mogura VR)。
研究所メモ: 声という耳で聞くものを、あえて視覚と空間の体験に変換しています。ライブでもグッズ販売でもない「体験展示」という第三の形式が、ファンの滞在時間と客単価をどちらも底上げする設計です。商業施設側にとっても、期間限定の集客装置として使える枠組みです。
博報堂×CJ ENM「Chapter-I」— K-POP発ガールズグループ誕生番組を共同制作
博報堂は8月19日、韓国のエンターテインメント企業CJ ENMと合弁会社「Chapter-I」を設立したと発表しました。協業第一弾として、グローバルガールズグループ誕生を目指す日韓合作サバイバルオーディション番組『HIP POP Princess』をCJ ENMの「Mnet」で共同制作し、2025年10月に放送を開始します。コンテンツ企画からファンの体験づくり、アーティスト育成、楽曲制作、LIVE、マーチャンダイジングまで一貫して手がける方針です(AdverTimes.、ORICON NEWS、PR TIMES)。
研究所メモ: 広告会社が番組の企画段階から関わり、育成からグッズ販売までを一気通貫で設計する体制です。単発のタイアップではなく、IPを生み出すところから収益化まで自社の中に持とうとする動き。ファンビジネスを外注先ではなく、自社事業として抱え込む流れが広告業界にも及んでいます。
ハーゲンダッツ — KCON JAPANで20万個の”差し入れ”作戦
ハーゲンダッツジャパンは5月1日、音楽やスポーツのイベントでクリスピーサンド「ザ・リッチキャラメル」を年間合計20万個無料配布する「#差し入れクリスピーサンド」プロジェクトを開始しました。第1弾として5月9日〜11日開催の「KCON JAPAN 2025」で実施し、イベント限定ロゴ入りカードとあわせて配布。SNSでは写真付きの投稿が広がり、「初めてクリスピーサンドを食べた」という声も多く聞かれたといいます(AdverTimes.)。
研究所メモ: 自社イベントを開くのではなく、すでに盛り上がっているファンイベントに「差し入れ」として入り込む発想です。フェス会場という気分が高まった場所で初めて商品を食べてもらうことで、通常の店頭サンプリングより好意的な体験として記憶に残ります。年間20万個という規模感が、単発のPRで終わらせない本気度を示しています。
クラウドファンディングと周年グッズが、熱量を示した
死印-再霊- — クラウドファンディングが1日で目標額1,000万円達成
エクスペリエンスは8月20日、ホラーゲーム『死印 -再霊(reboot)-』の開発応援クラウドファンディングが目標金額1,000万円を開始からわずか1日で達成したと発表しました。8月20日14時時点で860万円だった金額は同日18時30分に1,000万円を突破し、8月21日13時時点では約1,290万円まで伸びています。2017年発売の『死印』のリブート作品で、2027年のエクスペリエンス設立20周年と同社「心霊ホラー」シリーズ10周年を記念した企画です(インサイド)。
研究所メモ: 目標額到達までのスピードそのものが、ファンの支持を可視化する広報材料になっています。クラウドファンディングは資金調達の手段であると同時に、「これだけの人が待っていた」という事実を数字で示す装置でもある。発売前のIPが持つ熱量を測る指標として機能します。
BANANA FISH — 連載40周年で、エンタメくじ・ウエハース・POP UP STOREが連続展開
1985年から1994年に連載されたマンガ『BANANA FISH』が、連載開始から40周年を迎えました。8月12日にはローソン・HMV一部店舗限定で「BANANA FISHエンタメくじ」(1回770円)が発売され、ウエハースやPOP UP STOREなど新グッズ展開が8月以降続きます。2018年にはMAPPA制作でTVアニメ化され、内田雄馬さん・野島健児さんら人気声優陣が出演しました(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: 連載終了から30年以上経つ作品でも、40周年という節目を作れば新規展開の理由になります。くじ・ウエハース・POP UP STOREと購買単価の違う商品を同時期に並べることで、ライトなファンからコアなファンまで異なる予算感の人を同じ周年企画で拾えます。
ゲームショウが著名人とスポンサー企業で拡張した
東京ゲームショウ2025 — 本郷奏多がオフィシャルサポーター、TGS BOOSTERZ始動
東京ゲームショウ2025(9月25日〜28日、幕張メッセ)は、俳優でゲーム好きとしても知られる本郷奏多さんをオフィシャルサポーターに起用すると発表しました。あわせてインフルエンサー企画「TGS BOOSTERZ」も始動し、第1弾としてキャスターの林佑香さん、VTuberの猫宮ひなたさん、登録者500万人超のJunpei Zakiさんの3名が就任。特別協賛には通信サポートのNURO、体験ブースを展開するめぐりズム、デジタルサイネージのChargeSPOTが決定しました(Game*Spark)。
研究所メモ: サポーター、インフルエンサー、協賛企業をそれぞれ別の役割で起用し、発信のチャンネルを増やしています。1人の著名人にすべてを背負わせず、属性の違う複数の顔で会場前から話題を作る設計です。大型イベントの集客を、単一のアンバサダーに頼らない分散型に切り替える動きといえます。
「魔改造の夜 THE MUSEUM」— NHK人気番組のモンスターが秋葉原に集結
NHKの技術開発エンタメ番組「魔改造の夜」に登場したモンスターマシンを集めた「魔改造の夜 THE MUSEUM」が、8月25日から9月2日まで東京・ベルサール秋葉原で開催されます。展示に加え、開発に携わったエンジニアによる実演・解説講座(座席指定券が必要)や参加企業の無料ワークショップを実施し、初日にはファン待望の公式BOOKも発売。入場料は一般前売2,000円です(AdverTimes.)。
研究所メモ: 番組では見せていなかった開発秘話を、有料の解説講座という形で切り出しています。放送コンテンツのファンは「もっと知りたい」という欲求を持っていて、それを別料金の体験に変換できれば新しい収益源になる。テレビ局にとって、既存番組の熱量を展示イベント化する手法は横展開しやすいところです。
今週の所感
今週は、伸びている数字と、抑えるべきリスクが、同じ週に並んだ週でした。
カバーの売上高50%増という決算は、VTuber事業が広告や配信だけでなく、グッズ・ライブ・ライセンスと複数の収益源を積み上げた結果です。一方でマクドナルドは、人気キャンペーンそのものが招いた混乱への対応に追われました。どちらも「ファンの熱量が強すぎることで起きる」という点では地続きです。 士郎正宗の世界展の5万5千人動員や、死印のクラウドファンディングが1日で目標額に達した事実も、同じ熱量の裏返しといえます。
熱量をどう収益化し、どう制御するか。この2つを同時に設計できる企業だけが、推し活マーケティングの設計原則やファンマーケティングの手法を本当の意味で活かせるのだと、今週のニュースを見て感じました。
週刊推し活ニュースは、推し活×ビジネスの1週間を毎週まとめてお届けします。過去の号は推し活×ニュースカテゴリからどうぞ。



