ドール×JO1・INIコラボで売上30倍/ANYCOLOR営業利益2.6倍で通期予想を上方修正【週刊推し活ニュース 2025年9月26日号】

2025年9月19日〜9月25日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードは、ファンサービスが、単発の販促からビジネスモデルへ進化したでした。
ドールはJO1の佐藤景瑚さんとINIを起用した「バナ活」「プル活」で、果物売り場の売上を大きく伸ばしました。ローソンは推しコラボの拡大を続け、コンビニならではの「身近な場所で推せる」設計を明かしています。VTuber業界では、ホロライブが年会費6,600円の新ファンクラブを10月に開始するほか、UUUMとKONAMIが新サービスを相次いで投入しました。
決算にも動きがありました。「にじさんじ」を運営するANYCOLORは、第1四半期の営業利益が前年同期比約2.6倍の70億300万円に拡大。にじさんじWORLD TOUR 2025などイベントの売上が前期比100倍の21億1,700万円に達したことが牽引しました。造幣局は「ドラゴンボール」40周年記念の貨幣セットを、スクウェア・エニックスは「SQEX PETs」でペット用品市場に参入するなど、IPライセンスの応用範囲も広がっています。
コンビニと果物売り場が、推し活の応援消費を取り込んだ
ドール×JO1佐藤景瑚、INI — 果物売り場をファンの「イベント会場」にした
ドールは4月にJO1の佐藤景瑚さんを「Doleバナ活サポーター」に、8月にはINIを「Doleプル活サポーター」に起用しました。店頭ではオリジナルビジュアルのPOPを設置し、佐藤さんの楽曲「BANANA」やINIの「Pineapple Juice」を電子サイネージで放映。東京・大阪・名古屋では屋外広告も掲出し、佐藤さん起用の企画では店頭でオリジナルトレカを配布、渋谷のラッピングバナナ自販機も期間限定デザインに変更しました。見出しでは「売上30倍」と報じられています(AdverTimes.)。
同社マーケティング部の堀田拓哉氏は、若年層の果物離れを背景に、企画のテーマは「果物売り場をファンにとっての“イベント会場”にすること」だったと説明しています。
研究所メモ: 「バナ活」「プル活」という言葉自体が、企業発ではなくファン発の造語のように機能している点が巧みです。商品名ではなく行動に名前をつけることで、ファンは”参加している”感覚を持てます。スーパーの売り場という日常空間をイベント化する発想は、推し活の市場規模が拡大するなかで、リアル店舗を持つ小売業全般に応用できる余地があります。
ローソン — 推しコラボが売れる理由は「身近な場所で推せる」設計
ローソンはアーティスト・Mrs. GREEN APPLEやアニメ『ウマ娘 シンデレラグレイ』とのコラボを実施するなど、様々な領域とのコラボ企画を継続しています。ウマ娘とのコラボでは、オリジナルアクリルスタンド付きの「はちみードリンク」を販売しました。同社マーケティング戦略本部の本間晶氏は、推し活を意識した「応援消費」の市場について「絶えず拡大している」と話し、対象がコロナ前のアニメキャラクター中心から、アーティストや動画配信者、ゲームのキャラクターへと広がっていると説明しています(AdverTimes.)。
研究所メモ: ローソンの強みは、コラボの中身より「コンビニという到達点の近さ」にあります。ライブ会場やポップアップに行かなくても、通勤・通学路のコンビニで推しに触れられる。応援消費の対象が拡大しているなら、店舗網の密度こそが競争力になります。全国に店舗を持つ企業ほど、この「近さ」を武器にできる余地が大きいはずです。
アパレルとキャラクターIP市場が、若い世代への接点を作った
バナナ・リパブリック×岸優太 — 日本上陸20周年記念ポップアップストア
Number_iの岸優太さんがブランドアンバサダーを務める「バナナ・リパブリック」が、日本上陸20周年を記念し、東京・虎ノ門ヒルズを皮切りに福岡・天神VIORO、名古屋・ZERO GATEでポップアップストアを開催します。1978年にカリフォルニアで創業した同ブランドは、2005年9月に日本1号店をオープン。ポップアップでは、アーカイブカタログのイラストからインスパイアされたグラフィックTシャツなど、探求心に基づくアーカイブアイテムを展示します。岸さんは2025年1月に日本初のブランドアンバサダーに就任し、虎ノ門ヒルズ店を訪問して「ブランドのストーリーやデザイン、情熱に触れてほしい」とファンに呼びかけました(AdverTimes.)。
研究所メモ: 20周年という「ブランドの歴史」と「アンバサダーの共感」を同時に見せている点が効いています。単なる新作発表ではなく、1978年の創業からのアーカイブを展示することで、ファンは商品だけでなくブランドの物語ごと消費できる。周年企画を持つ企業にとって、アンバサダー本人にその歴史を語らせる構成は再現しやすい型です。
ダイアナ×サンリオ — メタバースアバター向けコラボシューズを発売
海外ファッションブランドの輸入販売を手がけるダイアナ株式会社は、VRChatアバター向けに「サンリオキャラクターズ」とのコラボシューズを9月19日に発売しました。「DIANA」ブランドからはハローキティをモチーフにしたリボンヒールチュールパンプス、「+diana」ブランドではハローキティ、シナモロール、マイメロディ、ポムポムプリンをイメージした厚底プラットフォームスニーカーを展開し、いずれも3Dモデル化してアバターに着用できます。9月19日〜28日開催の「Sanrio Virtual Festival」会場にもダイアナのブースが出展し、9月23日のランウェイイベントにもコラボシューズが登場しました(Mogura VR、PANORA)。
研究所メモ: 現実の靴ブランドが、履けないはずのメタバースにわざわざ商品を出す判断が興味深いところです。「美足文化の創造」という自社の理念を、身体を持たないアバターにまで拡張している。実店舗や自社ECだけでなく、ファンが集まるバーチャル空間そのものを新しい売り場として捉える発想は、アパレル以外の業種にも転用できます。
韓国発「エスターバニー」、中国ポップマート「クライベイビー」 — 次のラブブ争奪戦
キャラクターブランド・ライセンス協会が8月に発表した「日本キャラクター大賞2025」で、ニューフェイス賞に選ばれたのが韓国系アメリカ人デザイナーによるウサギのキャラクター「Esther Bunny(エスターバニー)」です。2023年に日本へ本格上陸し、マルイやパルコでのポップアップ、2025年にはSHIBUYA109やPLAZA、ヴィレッジヴァンガードでのポップアップが相次いでいます。一方、ラブブを手がける中国の玩具大手・ポップマート社は、次なる看板IPとして「CRYBABY(クライベイビー)」を育成中です。同社の2025年上半期決算では、ラブブを含む「THE MONSTERS」シリーズが約990億円(48億元)を売り上げました(AdverTimes.)。
研究所メモ: 990億円という数字が示すのは、1つのIPに依存しない「次の一手」への投資余力です。ヒットが出てから次を探すのではなく、ヒットの最中に次を仕込んでいる。ブラインドボックスという売り方自体もセットで輸出されている点は、単発コラボで終わらせず「型」として繰り返せる企業が強いことを物語っています。
VTuber業界に、新しいグループとサービスが次々参入した
ホロライブ「hololive FANCLUB」、UUUM「イリクス学園」、KONAMI「きゅん♡Tube VR Live」 — VTuber新事業ラッシュ
ホロライブは、新たな公式ファンクラブ「hololive FANCLUB」を2025年10月15日から開始します。年会費6,600円(税込)で、シリアルナンバー入り会員証やオリジナルパスケースが入会特典として配布され、ライブやイベントのチケット先行抽選に申し込めます。旧ファンクラブは2026年3月末で新規受付を終了します(Musicman)。UUUMはAKA Virtualと共同で新VTuberプロジェクト「イリクス学園」を発表し、1期生4名が9月25日にリレー形式でデビュー配信を行いました(Mogura VR、eeo)。KONAMIは9月25日から10月5日まで、VRサービス「きゅん♡Tube VR Live」のテスト配信を開始。独自の「VR270」フォーマットで、アイドルと1対1で会話できる「VRおはなし会」などを提供しています(Mogura VR)。
研究所メモ: 3社がほぼ同時に、それぞれ違う切り口でVTuber・アイドル領域に参入しました。ホロライブは既存ファンの囲い込み、UUUMは新規IPの育成、KONAMIは体験の没入度で勝負しています。同じ推し活市場でも、会員化・新規開発・技術体験化という3つの入り口があることを示す週でした。自社の強みがどの入り口に近いかを考える材料になります。
VTuberが、決算と広告・映像の主役になった
ANYCOLOR — 営業利益2.6倍、にじさんじWORLD TOURが牽引
「にじさんじ」を運営するANYCOLORの2026年4月期第1四半期(2025年5月〜7月)は、売上高が前年同期比112.1%増の157億6,800万円、営業利益が同157.6%増の70億300万円となりました。会社予想の上限(売上高146億円、営業利益57億5,000万円)を上回り、通期業績予想も上方修正されています。コマース(グッズ等)の売上は2.2倍の103億9,400万円に拡大。7周年記念の大型ライブ「にじさんじWORLD TOUR 2025」を5月の仙台開催を皮切りに各都市で展開し、イベント売上は前期の2,100万円から100倍の21億1,700万円に伸びました。営業利益率は44.4%です(インサイド、GameBusiness.jp)。
研究所メモ: 前期はグッズの発送遅延という「足元のオペレーション問題」で業績が伸び悩んでいました。今期の急回復は、コンテンツ人気そのものより製造・発送体制の立て直しが効いた面が大きい。ファンビジネスは熱量だけでなく、注文から手元に届くまでの実務精度が収益を左右することを、この決算は数字で示しています。
にじさんじ×「ボーダーランズ4」、Kizuna AI×「SWAN LAKE」 — VTuberが広告と映画の主役に
2Kは、9月12日発売のシューティングRPG「ボーダーランズ4」の日本オリジナルWebCMを公開しました。にじさんじ所属の叶、葛葉、ローレン・イロアスが出演し、実写とゲーム映像をシームレスに融合。楽曲はなとりの「IN_MY_HEAD」を起用し、視聴者役を演じる俳優がVTuberに誘われて配信内でプレイに加わる構成です。発売記念でX上のフォロー&リポストキャンペーンも実施されました(AdverTimes.)。一方、Kizuna AIが主演するイマーシブフィルム「SWAN LAKE」は12月26日から全国の映画館でロードショー公開されます。チャイコフスキーの「白鳥の湖」を題材に、翌年以降は空中映像装置やハプティクスデバイスを使った体験型バージョンの公開も予定されています(Mogura VR)。
研究所メモ: どちらも、VTuberを配信の中から連れ出す試みです。ゲームCMでは境界線をあえて見せることで没入感をつくり、映画では劇場という完全にリアルな場に主演として立たせています。VTuberというフォーマットが、広告表現と興行という異なる収益源をまたいで機能し始めていることが分かります。
長寿アニメと造幣局が、記念企画で新しい客層に会いにいった
京阪電車×響け!ユーフォニアム — 10周年、コラボ駅名標が初登場
アニメ『響け!ユーフォニアム』と京阪電気鉄道のコラボ企画「京阪電車×響け!ユーフォニアム2025」が10月1日から実施されます。2015年放送開始で2025年に10周年を迎えた同作は、舞台の宇治を走る京阪電車宇治線が作中に多数描かれており、今年は例年のデジタルスタンプラリーやラッピング電車に加え、黄檗駅に初のコラボ駅名標が登場します。ホテル京阪 京都 グランデでのコラボカフェ、ニデック京都タワー展望室でのイベント、京都タワーホテルアネックスのコラボルーム第2弾も同時開催されます(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: 駅名標という、普段は誰も欲しがらないはずの設備をコラボの目玉にした発想が際立ちます。舞台となった路線を一過性の聖地巡礼で終わらせず、ホテルやタワーまで含めた複数施設で毎年更新し続けている。10年続くコラボは、単発の話題づくりではなく、沿線全体を巻き込む年中行事として設計されている点が参考になります。
造幣局×「ドラゴンボール」 — 40周年記念、孫悟空デザインの貨幣セット
造幣局は「ドラゴンボール」原作40周年を記念したアイテム2商品の予約抽選を、9月25日まで受け付けています。「プルーフ貨幣セット」(16,500円)は令和7年銘の6種の貨幣に、孫悟空をデザインした銀メダルを添えて特製革ケースに収納。「貨幣セット」(3,100円)は6種の通常貨幣に、孫悟空をデザインした年銘板を組み合わせています(インサイド)。
研究所メモ: 国の造幣局という、キャラクタービジネスから最も遠いはずの機関がIPコラボに参入しています。額面以上の価値を持つコレクター商品として設計することで、ファンにとっては「使えないが手放したくない」記念品になる。公的機関との協業は信頼性の担保になり、長寿IPが次の世代に届く新しい入り口を作れます。
IPライセンスが、ペット用品とAI生成に広がった
スクウェア・エニックス「SQEX PETs」 — ドラクエ・FFデザインのペット用品を発売
スクウェア・エニックスは、ペットグッズブランド「SQEX PETs」から『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』『キングダム ハーツ』シリーズのグッズを9月27日に発売します。ドラクエデザインのペットカートやキングダムハーツをイメージしたリードなどを展開し、10月12日・13日には「チワワEXPO 2025 HALLOWEEN」「ポメラニアンフェスティバル2025 HALLOWEEN」への出展も決定。会場ではペットカート「スライム」の試用も可能です(インサイド)。
研究所メモ: 長年ゲームファンだった層が今、ペットを飼う年代に差しかかっている。IPの拡張先を「新しい世代」ではなく「既存ファンの生活の変化」に合わせた点が堅実です。ファン層の年齢構成が上がっている企業ほど、ライフステージの変化を先回りしたグッズ展開に商機があります。
「ブラックジャックによろしく」公式AIイラスト生成ツール — 商用ライセンスで提供
モーションエレメンツは、佐藤漫画製作所との公式コラボレーションとして、漫画「ブラックジャックによろしく」(作者・佐藤秀峰)のAIイラスト生成ツールを公開しました。商用利用可能なライセンスで提供され、プロの作風を学習したイラストや動画を短時間で生成できるとしています。現在は期間限定の無料キャンペーンを実施中で、今後は公式コラボによるスタイルやIPの拡充も予定しています(インサイド)。
研究所メモ: 作者本人が公式にライセンスを許諾した点が、無断学習をめぐる懸念とは一線を画しています。IPを「グッズ化する」のではなく「素材として貸し出す」新しい収益モデルです。版権を持つ企業にとって、キャラクターを使った制作ツールそのものをファンやビジネス利用者に提供する道が、コラボ商品の次の選択肢になり得ます。
AR技術とゲーム経済が、ファン体験を押し広げた
初音ミク「夜空プログラム2025」 — 遊園地でAR音楽花火、3日間で2,300人
「初音ミク 夜空プログラム2025」が9月13日から15日、新潟県の遊園地「サントピアワールド」で初開催され、3日間で約2,300人が来場しました。スマートフォンアプリ「ホロモデル」を使ったARと実際の花火を連動させる「スペシャルAR音楽花火」が中心コンテンツで、ARグラス「XREAL」を使った特別体験も提供されました。VRChatに再現された観覧車での体験には約2万人が参加し、好評を受けて配信は10月27日まで延長。チェキブランド「instax」協賛のグリーティングも実施され、チケットは完売しました(PR TIMES)。
研究所メモ: 現地来場2,300人に対し、VRChat上の体験参加は2万人と一桁多い規模になっています。物理的な会場のキャパシティに縛られず、同じ体験をオンラインで並走させる設計が、動員の天井を取り払っています。会場運営コストをかけずにファンの母数を広げたい施設にとって、参考になる比率です。
フォートナイト — ゲーム内アイテム販売を解禁、クリエイター還元を強化
「フォートナイト」は2025年12月から、クリエイターが自身の島(ゲームマップ)内でアイテムを直接販売できる仕組みを導入します。対象は耐久アイテムや消耗品で、2025年12月から2026年末までの初期段階では販売価値の100%をクリエイターに還元。通常時の還元率は50%です。11月にはディスカバリー機能に、資金を投じて島の掲載順位を競える「スポンサー列」も追加されます(Mogura VR)。
研究所メモ: プラットフォーム側がファン=クリエイターを、単なる利用者から収益パートナーへ格上げした動きです。ファンが作ったコンテンツを企業が一方的に消費する関係ではなく、収益を分け合う関係に切り替えている。ユーザー参加型の企画を持つ企業にとって、参加者への還元設計そのものがコンテンツの継続力を左右する時代になっています。
今週の所感
今週は、VTuberという業態が、配信の外側でも収益を生み始めた週でした。
ホロライブ、UUUM、KONAMIがほぼ同時にVTuber・アイドル領域の新サービスを投入し、ANYCOLORは決算で営業利益を2.6倍に伸ばしました。Kizuna AIは映画館という新しい舞台に立ち、にじさんじはゲームのWebCMに主演しています。配信で生まれたキャラクターが、決算・広告・興行という別々の収益源をまたいで働いているのが、この1週間の共通点です。
一方で、ドールの果物売り場やローソンのコンビニ、京阪電車の駅名標、造幣局の貨幣セットのように、リアルな生活動線にファンを呼び込む動きも変わらず活発でした。バーチャルとリアル、どちらか一方に寄るのではなく、両方を同時に太くする企業が、この週の応援消費を最も広く取り込んでいます。
自社のファンがどの動線に集中しているのか。推し活マーケティングの設計原則やファンマーケティングの基本とあわせて、今週の動きを見てみてください。
週刊推し活ニュースは、推し活×ビジネスの1週間を毎週まとめてお届けします。過去の号は推し活×ニュースカテゴリからどうぞ。



