たまごっちが推し活視点で出荷1億個/日清食品がチャージマン研を魔改造CMに起用【週刊推し活ニュース 2025年9月19日号】

2025年9月12日〜9月18日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードは、企業がファンの文化を、そのまま施策にしたでした。
バンダイは8月28日、携帯型デジタルペット「たまごっち」シリーズの国内外累計出荷数が1億個を突破したと発表しました。2018年の「Original Tamagotchi」復刻時には「推し活の要素」を取り入れた告知を行い、若年層の需要を押し上げた経緯があります。2026年の30周年を前に、Z世代が「推しのカラー」のたまごっちを身につける光景も広がっているといいます。
食品・飲料でもファン文化の取り込みが目立ちました。日清食品は「魔改造カップヌードル」のWebCMに、SNSで悪魔的な人気を誇るカルトアニメ「チャージマン研!」を起用。伊藤園は大谷翔平選手の”リフティングミーム”を描いた新CMをAIで制作し、3月放送分の続編として公開しました。サッポロビールが6月に実施した「男梅サワー」のX投稿キャンペーンも、大喜利のようにファンが盛り上がった様子が9月にあらためて紹介されています。
スポーツの応援を、ブランド体験に翻訳する動きが続いた
セイコー×東京2025世界陸上 — 銀座線ジャックとコラボカフェで”瞬間”を伝える
セイコーグループは9月13日開催の「東京2025世界陸上競技選手権大会」にあわせ、国立競技場近くのロイヤルガーデンカフェ青山でコラボカフェ「Seiko 0.001 cafe」を9月11日から21日まで展開しています。銀座線ジャックや競技場周辺の展示、子ども向け短距離教室もあわせて実施し、ブランドメッセージ「A TRUE MOMENT」を若者・女性・インバウンド層に伝えます。店内には19大会連続で世界陸上のオフィシャルタイマーを務めてきた歩みを展示し、約2,000人の選手にも案内を行う予定です(AdverTimes.)。
常務執行役員の金川宏美氏は「スタートの静けさやゴールの瞬間に込められた思いを千分の1秒で刻むことが私たちの役割」と語っています。
研究所メモ: セイコーは看板広告一本で終わらせず、コラボカフェ・銀座線ジャック・競技場周辺の展示・子ども向け教室という複数の接点を「A TRUE MOMENT」という一つのメッセージでつないでいます。19大会連続のオフィシャルタイマーという実績も、数字の告知ではなく展示という体験に変えて見せています。協賛の歴史を持つ企業ほど、それを一方向の告知ではなく回遊できる場に変換できるかが問われます。
伊藤園×大谷翔平選手 — AIで描く”リフティングミーム”続編CM
伊藤園は9月22日より、大谷翔平選手が出演するテレビCM「お~いお茶 LEMON GREEN日米同時発売」篇を放映します。2025年3月のCMで話題になった大谷選手の”リフティング”シーンの続編で、AIを活用し、子どもや動物、宇宙飛行士までもがリフティングに挑戦しはじめるという映像を制作しました(PR TIMES)。
担当者は「常識にとらわれない映像表現に挑戦した」とコメントしています。
研究所メモ: セイコーは「瞬間」を器(カフェ)で伝え、伊藤園は「瞬間」を拡散する仕掛け(AIミーム)で伝えました。どちらもアンバサダーや大会の権威をそのまま使うのではなく、ファンが自分の感覚で追体験できる形に翻訳しています。応援を見せるだけでなくやってみたくなる設計に変えられるかが、スポーツマーケティングの分かれ目になっています。
ファンの投稿を、商品づくりの材料に変える企業が現れた
日清食品×チャージマン研! — カルト人気アニメを魔改造したWebCM
日清食品は「カップヌードル」の定番フレーバーを自ら改造した「魔改造カップヌードル」4種類を9月8日に発売し、翌9日に公式YouTubeでWebCM「チャージマン研!魔改造」篇を公開しました。1970年代放映のSFアニメ「チャージマン研!」は2000年代後半にSNSで注目を集め、クラウドファンディングでリマスター版が制作された経緯を持ちます。CMは人気回「頭の中にダイナマイト」を下敷きに、「頭の中にニンニクとニラ」というタイトルで制作されました(AdverTimes.)。
企画を担当した森昭太氏は「拡散力のあるコンテンツやネタを探した」と経緯を語っています。
研究所メモ: 日清食品は新商品発売の翌日にWebCMを公開するスピード感に加え、SNSで再評価されクラウドファンディングでリマスターされたという「チャージマン研!」自体の来歴を起用理由にしています。人気回のパロディという構造にしたことで、原作ファンにも伝わる作りになっている点も特徴です。有名タレントではなく、ファンコミュニティが育ててきたコンテンツを起用先に選ぶという発想が参考になります。
サッポロ「男梅サワー」— X上の大喜利で生まれた表現募集キャンペーン
サッポロビールは6月20日から7月18日まで、「男梅サワーの味をどうにか表現してほしい」というテーマでアイデアをX上で募集するキャンペーンを実施しました。単に飲用を勧めるのではなく、20代を中心とする若年層に自分事として参加してもらうことを狙い、SNS上の”界隈消費”も意識してインフルエンサーを起用しています。投稿へのリポストやいいねは想定を超え、生成AIを使った表現や音による表現も現れました。秀逸な投稿は今年冬発売の缶デザインに反映される予定です(AdverTimes.)。
研究所メモ: 日清食品は既存のカルトファン層を、サッポロは自社ブランドの飲用者層を、それぞれSNS上の表現に巻き込みました。共通するのは、企業が完成品を届けるのではなく、ファンの反応そのものを次の企画やパッケージの材料にしている点です。推し活の市場規模が語られる裏側で、ファンの投稿を商品開発の入力情報として扱う設計が広がっています。
周年を迎えたブランドが、体験で歴史を語り直した
BMSG — 正体を伏せた渋谷の黒塗りレコードショップで設立5周年
SKY-HI氏が率いるマネジメント/レーベル「BMSG」は、9月16日から22日まで渋谷スクランブル交差点前にレコードショップ「BLACK RECORDS」を期間限定でオープンしました。カバーアートなどビジュアル情報を一切排除し、音楽そのものと出会う体験を提供する店舗で、主催者情報も伏せたまま展開し、レーベル設立日の9月18日に「BMSG STREET GALLERY」という5周年記念プロジェクトの一環だったことを明かしました(AdverTimes.)。
担当者は「人は情報の80%を視覚から得ているといわれる時代に、視覚的要素を取り去ったらどうなるかを実験したかった」と話しています。
研究所メモ: BMSGは主催者情報もビジュアル情報も伏せたまま店舗を展開し、正体を明かすタイミングを設立記念日にそろえることで、体験そのものを話題化させています。情報を出し惜しみすることを宣伝効果に変える、いわば逆張りの設計です。周年施策を告知先行で終わらせず、謎解きのように来店動機へ変えている点が参考になります。
バンダイ「たまごっち」— 推し活視点の告知で出荷1億個、30周年へ
バンダイは8月28日、「たまごっち」シリーズの国内外累計出荷数が1億個を突破したと発表しました。1996年の発売から8カ月で1,000万個を突破し、海外出荷が全体の50%以上(アメリカ33%、ヨーロッパ16%など)を占めるIPに成長しています。2018年の「Original Tamagotchi」復刻では、自分に合ったデザインを選べるファッションの視点や推し活の要素を取り入れて告知し、若年層の需要を押し上げました。2026年の30周年を控え、最新作「Tamagotchi Paradise」では「たまごっちラボ」をテーマにした映像やイベントブースを展開しています(gamebiz)。
研究所メモ: BMSGは自社の歴史を隠すことで注目を集め、たまごっちは推しのカラーを身につけるという顧客の行動をそのまま告知の切り口にしました。周年施策は年表を見せる展示になりがちですが、どちらも顧客が能動的に関わる仕掛けを主役に据えています。推し色を身につける消費行動は、キャラクター以外のロングセラー商品にも応用できる視点です。
アパレル・下着ブランドが、キャラクターと配信者を日常着にした
サンリオ「いちご新聞」×Maison de FLEUR — 創刊50周年の限定バッグ
サンリオの機関紙「いちご新聞」創刊50周年を記念し、ライフスタイルブランド「Maison de FLEUR」とのコラボアイテムが9月23日より全国店舗とECサイト「STRIPE CLUB」で発売されます。メインキャラクター「いちごの王さま」がハローキティやシナモロールとともに初登場し、チャーム(全7種・各3,700円)、フリルトートバッグ(全2種・各7,000円)、いちごショルダーバッグ(13,200円)、いちごポーチ(4,700円)を展開します(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: いちご新聞50周年という機関紙の節目に合わせ、単独では前面に出てこない「いちごの王さま」を人気キャラクターと初共演させています。チャーム・バッグ・ポーチと価格帯の異なるラインナップにしたことで、コラボ限定の一点だけでなく複数の購入機会も作っています。周年を記念グッズの発売だけで終わらせず、キャラクターの露出機会そのものを広げる設計と言えます。
ハローキティ×PEACH JOHN妹ブランド、アベイル×カラフルピーチ — 下着と雑貨にキャラクターを
サンリオ「HELLO KITTY」とPEACH JOHNの妹ブランド「GiRLS by PEACH JOHN」がコラボし、下着3型・ルームウェア1型を9月24日より発売します。ブラセットは2,980円(税別)からで、キャミソール部分にはハローキティの刺繍が入ります(アニメ!アニメ!)。アパレル大手アベイルは9月20日より、UUUM所属の人気ゲーム実況グループ「カラフルピーチ」とのコラボグッズを全国店舗とオンラインストアで発売。巾着やトートバッグなど日常使いできるアイテムを、1商品1人1点の購入制限つきで展開します(インサイド)。
研究所メモ: いちご新聞は50周年という節目を、下着ブランドは毎日身につけるという接点をそれぞれ使い、キャラクターやタレントを日用品に落とし込んでいます。カラフルピーチの購入制限は、転売対策であると同時に一人ひとりが本当に使うために買うという前提を作る仕掛けにもなっています。推し活の市場規模と合わせて、日常に溶け込むグッズ設計の幅を見ておきたいところです。
コンビニと外食チェーンが、劇場公開にあわせて客を呼んだ
ダンダダン×ローソン — クリアファイル無料配布とSNS引用ポスト企画
TVアニメ『ダンダダン』とローソンのキャンペーンが9月23日より全国で始まります。対象のお菓子を3点購入すると、先着・数量限定でオリジナルクリアファイル(全6種)がその場でもらえるほか、公式Xアカウントをフォローして指定ワードで引用ポストすると抽選で1名に1万円分のQUOカードが当たります。マルチコピー機ではL判300円・2L判500円(税込)のオリジナルブロマイドも販売されます(アニメ!アニメ!、超!アニメディア)。
研究所メモ: ローソンは来店特典(クリアファイル)、SNS拡散(引用ポスト企画)、追加購入(有償ブロマイド)という3段階の接点を一つのキャンペーンに組み込んでいます。無料の先着特典で来店を作り、SNS投稿で拡散させ、欲しい人には有償グッズも用意するという設計です。来店・拡散・購入という異なる行動を、それぞれ別の仕掛けで狙い分けている点が参考になります。
劇場版『チェンソーマン レゼ篇』×まこと屋 — 全国86店舗で先着ノベルティ
大阪発「牛骨ラーメンまこと屋」は、9月19日の劇場版『チェンソーマン レゼ篇』公開にあわせ、9月19日から11月24日まで全国86店舗で限定メニュー3種を販売します。「白チェンソー麺」(税抜2,000円)、「赤チェンソー麺」(税抜2,110円)を注文すると先着5万名にオリジナルステッカーを、「ボムの爆弾チャーハン」(税抜1,500円)には先着2万名にクリアファイルを配布。渋谷店・心斎橋店は劇場版仕様に装飾されます(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: どちらも来店してもらうための理由を、数量限定のグッズという形で用意しています。ローソンはSNS拡散までセットで設計し、まこと屋は67日間という長めの実施期間で来店の分散を許容しています。劇場公開という一度きりの山場を、店舗施策でどれだけ長く引き延ばせるかという工夫の違いが見えます。
ゲームIPが、小売の棚と生活空間に置き場所を広げた
原神×ドン・キホーテ — 新キャラ実装記念のクリアカード特典
ドン・キホーテは9月13日、『原神』新地域「ナド・クライ」実装を記念した新商品を全国の対象店舗で発売しました。新キャラクター「ラウマ」「フリンズ」「アイノ」の立絵を使ったアクリルスタンドや缶バッジを展開し、対象商品を2,200円(税込)購入するごとに、ドン・キホーテ限定のクリアカードをランダムで1枚進呈します(インサイド)。
研究所メモ: ドン・キホーテはゲーム内アップデートのタイミングに合わせて店頭商品を展開し、購入額に応じたランダム特典で複数点の購入を後押ししています。ゲームのストーリー進行と店頭施策を同期させたことで、アップデートを追っているファンほど反応しやすい設計になっています。ランダム性のある特典は、コンプリート欲求を利用して客単価を底上げする仕掛けとしても機能します。
ニトリ×モンハンワイルズ/スト6 — ゲーミングチェアを先行予約
ニトリは、『モンスターハンターワイルズ』の「海竜ラギアクルス」「オトモアイルー」、『ストリートファイター6』の「ジュリ」をイメージしたコラボゲーミングチェア3商品の先行予約を、公式オンラインショップで開始しました。価格はラギアクルスとジュリが29,990円(税込)、オトモアイルーが39,990円(税込)です(インサイド、Game*Spark)。
研究所メモ: ドン・キホーテは購入特典、ニトリは家具そのものと、同じゲームIP×小売でも接点の作り方が異なります。特にニトリは、グッズではなく3万円前後の家具にIPを載せた点で、ファンの生活空間そのものを商品化の対象にしています。推し活マーケティングの設計原則を考えるとき、接点を店頭の一角に置くか生活の中心に置くかは重要な選択です。
周年企画とゲームプラットフォームが、新しい接点を開いた
PEANUTS誕生75周年×東京駅 — 期間限定ショップとスマホ壁紙配布
ソニー・クリエイティブプロダクツは、東京駅一番街 東京キャラクターストリートいちばんプラザにて、「PEANUTS」コミック誕生75周年を記念した期間限定ショップ「HAPPINESS IS 75 YEARS OF PEANUTS」を9月19日から10月2日まで開催します。通路の壁や柱にピーナッツ・ギャングを描いた特別装飾を施し、二次元コードから日替わりで5種類のスマホ壁紙をダウンロードできるようにしました(インサイド)。
研究所メモ: PEANUTSは店舗什器だけでなく通路の壁や柱まで装飾範囲を広げ、購入しなくても足を止められる空間を作っています。二次元コードの壁紙を日替わりにしたことで、期間中に何度も立ち寄る理由も用意しています。原作のキャラクター資産を、購買機会だけでなく通行客との接点作りにも活用している点が参考になります。
リラックマ、8番出口 — 人気IPがRobloxに進出
サンエックスとイマジニアは9月17日、「リラックマ」の公式ゲーム「リラックマのおやつハント」をRoblox上で世界同時配信しました。Robloxは平均デイリーアクティブユーザー1億1,180万人を抱えるプラットフォームで、ゲーム内にはリラックマデザインのアバターアイテムも用意されています(Mogura VR、サンエックス)。日本のゲームスタジオMyDearestは、ホラーゲーム「8番出口」をRoblox向けに移植した「8番出口 for Roblox」を配信。最大8人のマルチプレイやRoblox限定の異変に対応し、8月末に公開された実写映画ともあわせて注目を集めています(Mogura VR)。
研究所メモ: PEANUTSは駅という日常動線に周年を差し込み、リラックマと8番出口はRobloxという既存の巨大プラットフォームに乗り込みました。どちらも自社で場所を作らないという発想が共通しています。1億人規模のユーザーがすでにいる場所にIPを持ち込む動きは、今後さらに広がりそうです。
今週の所感
今週は、企業がファンの熱量や文化を、そのまま施策の材料にした週でした。
たまごっちは推しのカラーを身につけるというZ世代の行動を告知の起点にし、日清食品とサッポロビールはSNS上の魔改造や大喜利という遊び方を商品や販促にそのまま取り込みました。BMSGは自社の情報をあえて伏せることで5周年の物語を作り、リラックマや8番出口は自社で場所を作らずRobloxという既存の人気プラットフォームに接点を求めています。企業が主導権を握りすぎない設計のほうが、結果としてファンの熱量を借りられるという共通点が見えた週です。
一方で、セイコーや伊藤園のようにアンバサダーや大会の権威を土台にした施策も、AIや空間演出という新しい手段で更新され続けています。老舗も新興ブランドも、ファンとの接点を作る技術は年々細分化していると感じます。推し活マーケティングの設計原則や推し色の消費行動とあわせて、今週の動きを見てみてください。
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