帝国劇場の備品が家具に/不二家が約30年ぶりに新キャラ【週刊推し活ニュース 2026年1月23日号】

2026年1月16日〜1月22日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードは、捨てるはずだったものと、忘れられていたものに、もう一度値段をつけるでした。
東宝とカリモク家具が、一時休館した帝国劇場の建材と備品を家具やグッズに作り替えた「帝劇 Legacy Collection」を発売しました。6名のクリエイターが参加し、全30種を展開。東宝の演劇部には2022年6月に「IP戦略室」が立ち上がっており、興行とは別の収益スキームとして設計されています。
不二家は約30年ぶりに新キャラクター5体を追加しました。タカラトミーは1997年に約45万個を出荷した「ぬいぐるみピカチュウ1/1」を復刻します。すでに手元にある資産を、いま売れる形に組み直す動きが重なった週でした。
使い終わったものと、眠っていたIPに値段をつけ直す
帝劇 Legacy Collection — 劇場の備品を6名のクリエイターが家具に
東宝とカリモク家具が、帝国劇場のクロージング企画「帝劇 Legacy Collection」として、劇場の建材と備品をリメイクした商品を1月17日に発売しました。狩野佑真さん、小宮山洋さん、SAKUMAESHIMAさん、清水久和さん、ハイタイド、本多沙映さんの6名が参加し、椅子などの家具からジグソーパズル、キーホルダー、ボールペン、ブックカバーまで全30種を展開。販売は3月1日までZOZOTOWN内の「ZOZOVILLA」で行い、西麻布のKARIMOKU RESEARCH CENTERでは2月14日まで発売記念展示を開催しています(AdverTimes.)。
東宝演劇部IP戦略室の畑野秀明氏は「今から3年半前の2022年6月頃に、弊社演劇部内でIP戦略室という通常の演劇興行とは別の収益スキームを検討する部署が立ち上がったのが始まり」と語っています。
研究所メモ: 建物を壊すときに出る廃材が、ファンにとっては思い出そのものです。そこに気づいて専門部署を作り、3年半かけて商品にした。企業が持つ「捨てる予定のもの」の中に、ファンが値段をつけたいものが混ざっている可能性があります。閉店、移転、設備更新のたびに検討する価値のある視点です。
不二家 — 約30年ぶりの新メンバー5体で世界観を広げる
不二家が1月9日、「ペコちゃんポコちゃんとゆかいな仲間たち」として新キャラクター5体を発表しました。1995年に仔犬の「ドッグ」を追加して以来、約30年ぶりの新メンバーです。ねこにゃんが「自分らしさ」、うさぎちゃんが「やさしさ」と「感受性」、かめ吉が「努力」と「安心」、ことりちゃんが「夢」と「希望」、ハムおが「明るさ」と「親しみ」を象徴します。ペコちゃんは1950年に店頭人形として誕生し、1951年に「ミルキー」のパッケージへ登場しました(AdverTimes.)。
広報室の宮永奈津紀氏は「2025年はペコちゃん誕生75周年、ドッグ誕生30周年という節目の年でもあり、そのタイミングに合わせた取り組みです」と説明しています。
研究所メモ: キャラクターごとに象徴する価値を明文化しているのが要点です。見た目だけ増やすと世界観が薄まりますが、それぞれに役割を与えれば物語が生まれます。目的も「魅力を世界へ発信すること」と明快で、国内の看板を海外向けIPへ育て直す意思が見えます。
タカラトミー — 1997年に45万個を出荷したピカチュウを復刻
タカラトミーが「ポケモン30周年記念 おかえり!ピカチュウ1/1」を2月28日に7,480円(税込)で発売します。1997年に発売され約45万個を出荷した「ポケモン ぬいぐるみピカチュウ1/1」の復刻版で、フォルムとタグデザインを当時に近づけて再現。全高は約40センチです。撫でたり揺らしたりすると25パターンのボイスが流れ、ほっぺが光る「てのひらピカチュウ ぽけふわ」も2,200円で登場します。3月5日から11日には東武百貨店池袋本店で「タカラトミー Pokémon 30th POP-UP PARK」を開催します(インサイド)。
研究所メモ: 30年前の商品を、当時のフォルムとタグまで再現して出す。この徹底ぶりが、買う人の記憶に正確に刺さります。懐かしさを売るとき、中途半端に現代風へ寄せると「これじゃない」になる。復刻は、当時を知る人の記憶の精度に合わせて作り込むかどうかで結果が変わります。
広告が、タレントの「好きなもの」から企画を立てた
メルカリ×佐久間大介 — 「片っぽのイヤホン」も売れると伝える15秒
メルカリが1月10日から、佐久間大介さんを起用したテレビCM「ミニメル登場」篇の放映を開始しました。クローゼットから赤いフードの「メルカリおすすめお兄さん」が現れ、指先の相棒「ミニメル」が「もったいないメル」と声を上げる15秒の構成。佐久間さんは一人二役を務めています。「片っぽのイヤホン」「謎のネジ」など意外なものでも売れる可能性を示し、新生活前の出品需要期に向けた企画です(メルカリ)。
メルカリの山岸香織氏は「佐久間さんはご自身でもアニメやマンガなど好きなモノやコトがある方なので、メルカリと非常に親和性が高いと思っています」と起用理由を語っています。
研究所メモ: 起用理由が知名度ではなく「本人にも好きなものがある」という点に置かれています。モノを大切にする人がモノを手放す提案をするから、説得力が生まれる。前号のキリン×大谷翔平と同じく、タレントの人物像とサービスの価値観が重なるかが起用の核心になりつつあります。
はるやま×FRUITS ZIPPER — 受験の節目に合わせて7本を出し分ける
はるやま商事が、FRUITS ZIPPERを起用した縦型Web CM「褒められモーメント篇」全7本を2025年12月19日から順次公開しています。「クリスマス」「初詣」「共通テスト」「入試」「バレンタイン」といった節目ごとに公開し、2月27日まで段階的に展開。1月8日公開の3本目「共通テスト」篇では松本かれんさんが「今が1番大変な時期かもしれないけど諦めずに頑張れますように」とメッセージを届けます(AdverTimes.)。
担当者は、現在のフレッシャーズ世代が「10代をコロナ禍で過ごした世代」であることを意識し、「他者からの承認を通じて自己肯定感を後押しし」たいと述べています。
研究所メモ: 1本のCMを繰り返し流すのではなく、受験生の心境が変わる節目ごとに7本を出し分けています。同じ商品でも、届ける瞬間で刺さり方が変わる。ターゲットのカレンダーを先に描いてから制作本数を決める発想は、季節商材を扱う企業に応用が効きます。
ファミリーマート — 「結婚報告」風の投稿で375万表示
ファミリーマートが1月6日から、いちごスイーツ全16種を展開する「ファミマの白をまとったいちご狩り」を開始しました。2021年から毎年開催しているフェアで、今年のテーマは「白」。告知として1月4日に、指輪と手紙の写真を添えた「結婚報告」風の投稿をXで公開し、16日時点で375万件表示、190件以上のコメントを集めています。テレビCMには吉田鋼太郎さんと八木莉可子さんが出演しました(AdverTimes.)。
投稿には「中の人におめでたいことがあったのかと思った」「どこかと結婚(合併)されるので?」といった反応が寄せられました。
研究所メモ: 企業アカウントの投稿が、フォロワーに届く確率は下がり続けています。だからこそ「一瞬なんだと思わせる」設計が効く。ただし、いちごフェアという着地が用意されていたから成立した話でもあります。驚かせるだけで回収がないと、次から信用されません。
老舗ブランドと韓国発ファンダムが、それぞれの周年を仕掛けた
ぴよりん15周年 — 名古屋駅に旧店舗の2倍の拠点をつくる
ジェイアール東海フードサービスが、名古屋名物「ぴよりん」の誕生15周年を機に、2026年を「ぴよりん15thアニバーサリーイヤー」と位置づけました。テーマは「いちごいちえん(15一縁)」で、ロゴは水引をモチーフにしています。6月頃には新店舗「ぴよりんvillage」を開業予定で、店舗面積は昨年8月に閉店した旧店舗の約2倍。イートインカフェとグッズ販売スペースを併設し、グッズは100アイテム以上を用意します。コラボ第1弾は1月24日開業予定の「豊臣ミュージアム」と連動した「豊臣ぴよ吉」「豊臣ぴよ長」です(PR TIMES)。
研究所メモ: 生菓子で始まったブランドが、グッズ100アイテム以上と店舗面積2倍へ拡張しています。食べたら消えるものを売る事業は、リピートの間隔に上限がある。手元に残るグッズと滞在できる場所を足すことで、ファンとの接触頻度を増やしにいっています。地域名物を持つ企業には現実的な拡張の型です。
BABYMONSTER×クロミ — 2万円のスタジャンから800円のチャームまで
サンリオのクロミとYG ENTERTAINMENT所属のBABYMONSTERによるコラボアイテムが、1月21日18時からBABYMONSTER ONLINE SHOPで販売されました。クロミの頬にモンスターマークが入ったデザインで、黒と赤を基調に展開。スタジアムジャンパーが20,000円、ジップフーディが8,500円、一方でランダムのめじるしチャームやつながるアクリルチャームは各800円(すべて税込)と、価格帯を大きく広げています。2月7日からは博多マルイでPOP-UPも開催します(アニメ!アニメ!、WWDJAPAN、クランクイン!、WEBザテレビジョン)。
研究所メモ: 800円から20,000円まで25倍の価格差を1つのコラボに収めているのが特徴です。全部買いたい人にも、1つだけ記念に欲しい人にも入口がある。ランダムグッズを安価な帯に置き、確定商品を高価格帯に置く構成は、購入体験を分けたい企業に参考になります。
すみっコぐらし×コメダ珈琲店、銀魂×ヤマダデンキ
サンエックスが、コメダ珈琲店の人気メニューを前にしたすみっコぐらしのグッズを1月24日からロフトで発売しました。ミニタオル935円、あつめてぬいぐるみ各2,860円(税込)などを展開しますが、コメダ珈琲店では販売しません(アニメ!アニメ!、サンエックス)。ヤマダデンキは1月17日から2月13日まで『銀魂』とのキャンペーンを実施し、2,000円以上の購入で限定ノベルティ、15,000円以上の購入者から抽選100名にスタッフ風ジャンパーを贈呈。万事屋3人によるオリジナル店内放送も流しています(アニメ!アニメ!、超!アニメディア)。
研究所メモ: すみっコぐらし側は、コメダの世界観を借りながら販路をロフトに置きました。コラボ相手の店舗を使わない選択もある、という一例です。一方ヤマダデンキは店内放送という自社にしかない資産を使っています。どちらも「自社の何を貸し、何を借りるか」の線引きが明確です。
バーチャル空間が、買い物と鑑賞の場になってきた
BOOTH Festival VRChat Edition — カートに入れて袋詰めまでする即売会
BOOTHが、VRChat内のワールド「BOOTH Festival VRChat Edition」を1月25日まで開催しました。BOOTHで実際に販売中のVRChat向けアイテムを、ワールド内で見て回れる即売会型のイベントです。「ネコカート」がプレイヤーに追従し、荷台に商品を乗せるとカートに追加される仕組み。袋詰めエリアで商品をまとめ、「紙袋の中身をBOOTHで開く」を選ぶとPCブラウザ上のBOOTHサイトに商品が並び、購入できます。アバターの試着用の鏡も設置されました(Mogura VR)。
研究所メモ: ネット通販の効率を、あえて捨てている点が面白いところです。カートを押し、手に取り、袋に詰める。この手間が買い物の楽しさを作っていたことを、逆から証明しています。ECの回遊率に悩む企業にとって、便利さ以外の購買動機を考える材料になります。
東京タワー「プラド美術館所蔵品VR展」 — 45分・4,000円の常設型VR
AquaVisionが主催する「プラド美術館所蔵品VR展」が、東京タワー1階のタワーホールAで2025年12月23日から2026年4月12日まで開催されています。プラド美術館の全面協力と監修を受けた作品で、上海・アルゼンチンに続き日本開催は3か国目。体験時間は約45分で、うちVR体験は約30分です。PICO 4 Ultra Enterpriseを使用し、約9m×23mのエリアを歩き回れます。平日券は4,000円(税込)からで、4人まで同一グループとして同時スタートできます(Mogura VR)。
研究所メモ: 記事は課題も具体的に挙げています。鍵付きロッカーが場内にない、通路が狭く他の体験者と衝突しやすい、通信起因とみられる石像表示の不具合。体験施設は演出だけでなく、荷物と動線という地味な部分が満足度を左右します。前号のImmersive Journeyが年間12万人を集めたのも、この設計の差かもしれません。
ツイステ展 — 8つの期間限定イベントを5つの展示エリアで振り返る
「ディズニー ツイステッドワンダーランド展│Seasonal Memories」が、2026年3月6日から29日まで六本木ミュージアムで開催されます。愛知会場は4月17日から名古屋PARCO、大阪会場は8月19日から阪神梅田本店を巡回。入場エリアで「オンボロ寮」の空間を再現し、8つの期間限定イベントを5つの展示エリアで紹介します。2025年10月からディズニープラスで独占配信されているアニメの設定資料も展示予定です(超!アニメディア)。
研究所メモ: 期間限定イベントは、終われば見返せません。それを展覧会として物理空間に再現する発想が、ゲーム運営の資産活用として的確です。参加できなかった人には初見の体験、参加した人には思い出の確認になる。長く運営するタイトルほど、過去のイベントは展示可能な資産として積み上がっています。
今週の所感
今週のニュースを並べて見えたのは、新しいものを作るより、すでにあるものを組み直すほうが強い場面があるということでした。
帝国劇場は取り壊す建材を家具にし、タカラトミーは30年前のぬいぐるみをそのまま復刻し、ツイステ展は終わったイベントを展示に変えました。不二家の新キャラクターも、75年続いたペコちゃんの世界観があるからこそ意味を持ちます。
自社の中に、まだ値段のついていない資産がどれだけあるか。過去の商品、終わったイベント、使い終わった設備、社内に眠るキャラクター。ファンにとって価値があるかどうかは、企業側の想定とはずれていることが多いはずです。
推し活マーケティングの設計原則とあわせて、自社の棚卸しの視点で今週の動きを見てみてください。
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