推し活×ビジネス

ファンマーケティングとは?​推し活マーケティングとの​違いを​解説

「ファンマーケティング」と聞くと、SNSのフォロワーを増やすことや、ファンクラブを作ることを思い浮かべるかもしれません。

しかしファンマーケティングの本質は、人数を集めることではありません。すでに選んでくれている人が、なぜ好きでいてくれるのかを理解し、その理由を守り育てることです。

明るいオフィスでファンの声をもとに企画を考える様子

この記事ではファンマーケティングの基本と、混同されやすい推し活マーケティングとの違いを、実務で使える形に整理します。

ファンマーケティングとは

ファンマーケティングとは商品・サービス・企業に愛着を持つ人との継続的な関係を育て、再購入や紹介につなげるマーケティングです。

販促には新しい顧客に知ってもらう活動も、既存の顧客に再び選んでもらう活動もあります。ここでは比較のため、新規購入を促す活動と、継続的な関係を育てる活動を分けて整理します。

視点新規購入を促す活動継続的な関係を育てる活動
主な相手まだ買っていない人すでに利用・支持している人
時間軸今回の購入長く続く関係
主な打ち手広告、値引き、キャンペーン対話、体験改善、参加の場、物語の共有
見る数字表示回数、獲得数、売上継続、再購入、紹介、愛着の理由

広告や新規獲得が不要になるわけではありません。ファンマーケティングは新しい顧客と出会う活動と、出会った人との関係を育てる活動を並行して進める考え方です。

「顧客」と「ファン」は何が違うのか

顧客は、購入という行動をもとに捉えられます。一方、ファンには選ぶ理由と語りたい理由があります。

  • 便利だから買うだけでなく、その商品らしさを残してほしいと思う
  • 新商品が出ると、自分ごとのように楽しみにする
  • 誰かに薦めるとき、価格以外の魅力を自分の言葉で説明できる
  • 不満があっても、改善してほしいという期待を込めて伝える

ここで注意したいのは、購入額が大きい人だけがファンではないことです。生活の事情で頻繁には買えなくても、長年使い続けている人もいます。反対に、キャンペーン中に大量購入していても、値引きが終われば離れる人もいます。

ファンを理解するには、まず売上の大きさと愛着の深さを同じものとして扱わないことが大切です。

推し活マーケティングとの違い

研究所ではブランドへの愛着を育てる視点と、推しを応援する行動を支える視点を分けて考えています。実際の施策は両方に当てはまる場合があり、用語の境界が一律に決まっているわけではありません。

ファンマーケティング推し活マーケティング
出発点自社の商品・ブランドを好きな人すでにある推し活の文化・行動
主役ブランドとそのファン推しと、その推しを応援するファン
代表的な施策ユーザー座談会、コミュニティ、共創開発、周年イベント推しカラー、生誕祭、概念商品、グッズ撮影、コラボ
目指すこと自社が長く選ばれる関係ファンが推しを応援しやすい体験

たとえばコーヒー店が常連客の声を聞き、常連客と一緒に店の雰囲気やメニューを作っていくのはファンマーケティングです。同じ店が推し色のドリンクやアクスタ撮影用の席を用意するなら、推し活マーケティングの要素が強くなります。

推し活向けの取り組みを重ねた結果、ファンが「この店そのものを応援したい」と思うようになれば、2つは重なります。推し活マーケティングで出会い、ファンマーケティングで関係を育てるという流れも作れます。

公式事例:意見募集の先にある結果を見せる

無印良品:投票を商品の発売につなげる

良品計画は2026年8月19日、「みんなでつくるバウム」の4種の発売を発表しました。2025年に顧客と店舗スタッフから集めた2,519件のアイデアから13案を選び、投票で東日本・西日本それぞれ上位2案を商品化した企画です。全国では2026年8月26日から順次発売と案内されました。

りんご飴、焼きとうもろこし、サーターアンダギー、オリーブ塩を着想にした4種類のバウム
画像引用:良品計画の2026年8月19日付発表。投票を経て商品化された4種のバウム。© Ryohin Keikaku Co., Ltd. 写真は同社の公式商品画像です。

この事例で注目したいのは、募集した声を集計するだけでなく、どの案が商品になったかを参加者が確認できることです。自社で行うなら、募集時に選び方と結果を知らせる時期を決め、採用後の経過まで伝えると、何のために意見を求めたかが分かりやすくなります。

LEGO:ファンの原案を製品として仕上げる

LEGOは2021年1月18日の公式発表で、ファンのClemens Fiedler氏が提案した「中世の鍛冶屋」を紹介しています。原案への支持を経て、LEGOのデザイナーが製品化を担当した事例です。

木組みの家屋、鍛冶場、庭や人物を組み合わせたLEGO Ideas中世の鍛冶屋の公式製品写真
画像引用:LEGOの2021年1月18日付製品発表「Medieval Blacksmith(21325)」。ファンの原案をもとに商品化された完成製品です。© The LEGO Group. 当時の事例として掲載しており、現在の販売状況を示すものではありません。

写真では建物だけでなく庭や人物まで含めた完成品を確認できます。共創を進める際は、提案する人と、設計・品質・販売を担う企業の役割を分けて説明することが必要です。「案を募ること」と「すべてをそのまま採用すること」を混同させない案内にします。

いずれも企業が公表した企画・製品化の事例です。これだけで継続率や利益が改善したとは判断できません。自社で評価する際は、参加者の感想と、再購入などの行動を分けて確かめます。

なぜ今、ファンとの関係が重要なのか

商品を比較する情報が増え、機能や価格だけでは違いが伝わりにくくなりました。その中で「この会社の考え方が好き」「ここなら安心して薦められる」とファンが寄せる信頼は、他社が簡単にはまねできません。

また企業は、ファンの言葉から自社が見落としている価値に気づけます。企業側は性能を評価していても、利用者は「店員さんが名前を覚えてくれたこと」や「困ったときの対応」を好きな理由として挙げるかもしれません。

ファンマーケティングは応援を売上に変える技術である前に、自社の価値をファンから教えてもらう仕組みです。

始め方:小さく回す4ステップ

1. すでに支持している人を見つける

購入回数だけで絞らず、レビュー、問い合わせ、SNSの投稿、イベント参加など複数の接点を見ます。まずは「繰り返し選んでいる」「具体的な理由で薦めている」という人に注目します。

2. 好きな理由を聞く

「満足しましたか」と聞くだけでは、好きな理由は分かりません。

  • 最初に知ったきっかけは何か
  • 他社ではなく選んだ決め手は何か
  • 人に薦めるなら、どこを説明するか
  • なくなったら困るものは何か

この4つを聞くと、守るべき価値が見えやすくなります。

3. 参加できる余白をつくる

商品名の投票、試作品への意見、使い方の共有、周年企画など、関わり方には段階があります。全員に発信や購入を求めず、見るだけ・答えるだけでも参加できる方法を用意します。

4. 声をどう反映したか返す

集めた意見は集めっぱなしにしません。「この声を受けて、ここを変えました」「今回はこの理由で変えません」と返すことで、ファンは対話を信頼できるようになります。

失敗しやすい3つのパターン

ファンを「無料の広告塔」として扱う

紹介を頼むこと自体は悪くありません。しかし発信や拡散を当然の義務にすると、ファンにとって応援は急に仕事になります。ファンが紹介しない自由も含めて尊重する必要があります。

声の大きい人だけを「ファン代表」にする

SNSでよく発信する人の意見は見つけやすい一方、静かに長く利用している人の声は見えにくいものです。座談会だけでなく、個別インタビューや匿名アンケートも組み合わせます。

短期売上のために競争を煽る

ランキング、過度な限定、複雑な購入特典は、一時的に数字を伸ばせてもファンを疲れさせます。推し活疲れが起きる設計は、ファンマーケティングでも避けるべきです。

成果はフォロワー数だけで測らない

ファンマーケティングの成果はひとつの数字では判断できません。

  • 継続利用率・再購入率
  • 友人や同僚への紹介
  • イベントやコミュニティへの再参加
  • 改善提案や具体的な感想の増加
  • 「なぜ好きか」という自由記述の変化

施策の直後だけでなく、数か月後の様子も見ます。大きく盛り上がったかより、関係が続いたかを確認します。

推し活未来研究所メモ:ファンの熱量は預かりもの

研究所ではファンの熱量を企業が自由に使える資源ではなく、一時的に預かっているものと考えています。

そのため企業は売上が伸びる瞬間だけでなく、ファンが休める・離れられる・意見を言える状態まで設計する必要があります。ファンが自分のペースで関われる状態を守ることも、企業の仕事として考えます。

まとめ

ファンマーケティングは、好きでいてくれる理由を理解し、選び続けられる関係を育てる活動です。

自社のファンを理解する視点と、推しを応援する体験を支える視点は併用できます。まず、誰にどんな参加や利用の機会を届けるかを決め、その人が続けやすい方法を選びます。

企業の現状を整理したい方は5つの軸で分析する推され度チェックもご利用ください。ファンマーケティング・推し活施策のご相談は株式会社KAZAORIまで。

よくある質問

ファンマーケティングとは何ですか?

商品やブランドに愛着を持つファンとの関係を育て、継続利用や口コミにつなげる考え方です。短期的に多く売ることより、選び続けてもらう理由と対話の場をつくることを重視します。

ファンマーケティングと推し活マーケティングの違いは何ですか?

研究所ではブランドへの愛着を育てる視点と、推しカラーや生誕祭、布教など推しを応援する行動を支える視点を分けています。一つの施策が両方に当てはまる場合もあります。

ファンが少ない企業でも始められますか?

始められます。人数よりも、繰り返し選んでくれる人や具体的な理由とともに薦めてくれる人の声を丁寧に集めることが先です。小さな座談会や購入後アンケートからでも十分です。

ファンマーケティングで追うべき指標は何ですか?

フォロワー数だけではなく、継続率、再購入、紹介、コミュニティへの再参加、自由記述の推薦理由などを組み合わせます。関係の深さは単一の数字では捉えきれません。

ファンを増やすために値引きは必要ですか?

値引きも購入のきっかけになります。必要かどうかは目的や顧客によって異なるため、値引き後の継続利用や、価格以外に選ばれている理由も確認します。