Gaudiyがソニー・バンダイナムコと100億円提携/丸紅がIS:SUEでメタバース展開【週刊推し活ニュース 2025年5月16日号】

2025年5月9日〜5月15日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードは、ファンとの接点づくりに、大企業が本気の投資を始めたでした。
Gaudiyがソニーグループ、バンダイナムコホールディングスと戦略的パートナーシップを締結し、第三者割当増資で総額100億円を調達しました。IPとファンをつなぐ事業に、この規模の資本が動いています。丸紅もファッションメタバース「WEAR GO LAND」のアンバサダーにガールズグループ・IS:SUEを起用し、実証実験を経てアプリ配信に踏み切りました。
決算も動きました。ホロライブを運営するカバーは通期の純利益が前年比34.4%増の55億5,900万円、グリーはメタバース事業で過去最高の四半期売上高を記録しています。一方で外食やアパレルの現場では、くら寿司×にじさんじ、GU×ちいかわといった等身大のコラボも進み、規模の大小を問わずファンとの接点作りが続いた週でした。
商社と飲料ブランドが、ファンの好きな顔を起用した
丸紅「WEAR GO LAND」×IS:SUE — 実証実験を経てアプリ配信へ
丸紅が展開するファッションメタバース「WEAR GO LAND」は5月2日、オーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」発のガールズグループ・IS:SUEをアンバサダーに起用したと発表しました。5日から渋谷駅にビッグビジュアルを掲出し、IS:SUEの新曲「SHINING」とのタイアップも決定。5月16日にアプリがプレオープンします。前身となる2024年4月6日〜22日の実証実験では「X-girl」「9090」「louren」の3ブランドが出店し、バーチャルファッションショーなどを実施。同社が設定した評価指標をいずれも達成したことから、アプリでのサービス提供に踏み切りました。5月5日〜11日には渋谷でOOH広告を掲出し、7日には521枚のコラボステッカーを配布、当日中に配布終了しています(AdverTimes.)。
丸紅ライフスタイル戦略企画部の今村星斗氏は「アプリ配信開始のタイミングで盛り上がりをつくることを狙い、情報解禁前のティザー発信を皮切りに段階的に複数の施策を打っていくことを意識しています」とコメントしています。
研究所メモ: 商社が1年かけて実証実験の数字を積み上げてから、満を持してアイドルを起用しています。話題性だけで走らず、評価指標を達成した上でファンの力を借りる。この順番が、単発のコラボと事業として続くコラボの分かれ目です。
ZONe ENERGY×NI-KI、BOSS×ウマ娘 — 飲料ブランドが顔を差し替えた
エナジードリンク「ZONe ENERGY」は5月13日、主力商品「HYPER ZONe ENERGY」とゼロシュガー版のデザインを一新し、K-POPグループENHYPENの日本人メンバー・NI-KIを新ブランドアンバサダーに起用しました。5月12日にWebCM「ENHYPEN NI-KI in the ZONe cinematic angle」を公開し、渋谷を中心にプロモーションを展開。見出しでは「渋谷に150人のNI-KIが登場」と報じられています。ブランドが掲げる“才能の解放”というメッセージと、ENHYPEN最年少メンバーとして挑戦を重ねるNI-KIの姿勢が重なったことが起用理由です(AdverTimes.)。サントリー食品インターナショナルも6月3日から、主力コーヒー飲料「BOSS」5商品を『ウマ娘 プリティーダービー』とのコラボ缶にリニューアル。対象6缶パック購入者の中から抽選30名に「グランプリボスジャン」、500名に「コラボTシャツ」が当たるほか、二次元バーコード応募で当たるキャンペーンではオリジナル時計やトートバッグ、PayPayポイント10円分が98,500名に用意されています(インサイド)。
研究所メモ: 同じ飲料でも、アイドルの起用は「ブランドの世界観」を語り、ゲームIPの起用は「抽選の物量」で語っています。ファンに向けた投資の中身は業界の慣習で決まるわけではなく、ブランドが何を伝えたいかで手法が変わる。両方を見比べると、その使い分けがよく分かります。
公営競技が、ファンダムの外側にまで手を伸ばした
JRA×GENERATIONS — 「DERBY GENERATIONS」で競馬未経験者を狙う
JRAは6月1日の第92回日本ダービー(GI)に向け、6人組ダンス&ボーカルグループ・GENERATIONSとのコラボ企画「DERBY GENERATIONS」を5月8日から開始しました。特設サイトではメンバーが東京競馬場を巡る動画「MY GENERATION DERBY Ver.」や、競馬の魅力を学ぶ全4話のバラエティ動画「つかみとれ!ダービーキング」を公開。動画にはロックバンド・ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文が作詞作曲し、GENERATIONSの小森隼がプロデュースした新曲「MY GENERATION」を起用し、5月10日から6月1日まで全国のウインズと競馬場でも放映します。5月28日〜6月1日には池袋・渋谷・新宿で街頭イベント「街ナカでも DERBY GENERATIONS」を実施し、競走馬騎乗レース体験や応援メッセージガチャ、フォトパネルなど多彩なコンテンツを用意しています(AdverTimes.)。イベント会場には、通行人が行き交うターミナル駅周辺を選定したといい、プロモーションを手がけた読売広告社の担当者は「複数の方向から気兼ねなく入場できるよう、開放的なスペースでの実施を意識した」と説明しています。
研究所メモ: 競馬場ではなく、まず駅前にブースを置いたのが要点です。競馬に関心のある人を待つのではなく、関心のない人が通りかかる場所に出向いている。ファン層の外側に届けたい企業ほど、会場選びの段階で「誰が偶然通るか」を設計に入れる必要があります。
外食チェーンが、期間限定メニューで来店動機を作った
くら寿司×にじさんじ、マクドナルド×ちいかわ — 好物とクルー姿でファンを呼ぶ
くら寿司は5月16日から全国店舗(一部除く)で、VTuberグループ「にじさんじ」とのコラボキャンペーンを開催します。人気ユニット「SMC組」「3SKM」「メイフ」の好物を使ったオリジナルメニュー3品を販売し、ゲーム「ビッくらポン!」の景品には「めじるしチャーム」など限定グッズを用意。会計2,500円ごとにもらえるクリアファイルなどのプレゼントは、いずれも先着30万名限定です(インサイド)。日本マクドナルドは5月16日から約4週間、ハッピーセット「ちいかわ」を全国で販売します。マクドナルドクルーのユニフォームを着たキャラクターたちがデザインされた、ドリンクカップペンたてやトレイフォトフレームなど日常使いできるおもちゃ全8種がラインナップ。同日発売の「マインクラフト ザ・ムービー」ハッピーセットとあわせて、1人4セットまでの購入制限が設けられています(インサイド)。
研究所メモ: どちらも、キャラクターのデザインを「自社の制服」に寄せています。にじさんじのメニューは推しの好物で構成し、ちいかわのグッズはマクドナルドクルーの制服姿で作られました。IPをそのまま貼るのではなく、自社の業態に合わせて一手間加える。この一手間が、既存ファンにも新鮮さとして伝わります。
アパレルと小売が、周年企画でキャラクターと組んだ
GU×ちいかわ — コラボ第4弾は「夏休み」がテーマ
ジーユーは5月23日より、「ちいかわ」とのコラボレーション第4弾を全国店舗とオンラインストアで販売します。「ちいかわたちの夏休み」をテーマに、アロハシャツやTシャツ、ソックス、ポーチなどを展開。夏休みシーンを描いたサテンパジャマはウィメンズとキッズのデザインがリンクしており、親子コーデを楽しめる作りになっています(インサイド)。
研究所メモ: 第4弾まで続くコラボは、単発の話題づくりではなく定番シリーズとして育っています。ウィメンズとキッズのデザインを揃えたのも、親子で買う前提の設計です。長く続くコラボほど、単品の完成度より「毎回買う理由」をどう更新するかが問われます。
しまむら×パックマン45周年、niko and…×きかんしゃトーマス80周年 — 周年を新作の口実にする
しまむらは5月10日、45周年を迎えた『パックマン』のグッズを全国店舗とオンラインストアで販売開始しました。ゲームステージをデザインしたTシャツやルームウェアに加え、敷きパッドや冷感ハーフケット、ダイカットクッションなど生活雑貨まで幅広く展開しています(インサイド)。アダストリアが運営する「niko and …」も5月14日、原作出版80周年を迎えた「きかんしゃトーマス」とのコラボアイテムを発売。原作絵本「The Railway Series」からインスピレーションを得た切手風・説明書風・ヴィンテージマップ風のデザインで、プリントTシャツやジャガードトートバッグ、刺繍キャップなどを揃えています(アットプレス)。
研究所メモ: 2社とも「新商品の理由」を周年に借りています。パックマンは45周年、トーマスは80周年。長寿IPほど周年の年が定期的に巡ってくるので、コラボの企画会議で「今年は何周年か」を先に洗い出しておくと、口実に困らなくなります。
テーマパークが、非日常の体験にXR技術を持ち込んだ
USJ×SPY×FAMILY — 史上初のVRコースターが7月始動
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、開催10周年を迎えた「ユニバーサル・クールジャパン」の一環として、2025年7月1日から2026年1月4日まで『SPY×FAMILY』とのコラボレーションを実施します。目玉は作品史上初のVRコースター「SPY×FAMILY XRライド〜オペレーション・ハイパードライブ〜」で、フォージャー家とともにスパイミッションに挑む内容。初開催の「ストーリー・ライド」や、公式LINEを使ったパーク周遊型クイズラリーも用意されています。原作コミックスは14巻で累計3,800万部を突破し、2023年公開の劇場版は興行収入62.6億円・観客動員464万人を記録しました(超!アニメディア)。
研究所メモ: 2019年連載開始からわずか数年のIPが、テーマパークの目玉アトラクションに起用されています。歴史の長さより、今どれだけ広い層に届いているかで起用が決まる。原作の巻数や興行収入という数字が、企画の説得材料として機能した好例です。
富士急ハイランド×東京タワー「戦慄迷宮XR:迷」 — 実在のお化け屋敷をXRで10倍に拡張
富士急ハイランドの人気アトラクション「戦慄迷宮」が、XR技術を使ったホラー体験「戦慄迷宮XR:迷(めい)」として2025年7月19日から東京タワーで始動します。開発・運営はXRコンテンツ制作会社ABALが担当。約900mの実在する戦慄迷宮の世界観を、独自プラットフォーム「Scape」を使って10フロア・全長約1kmのバーチャル空間に拡張し、最大50人が同時にアバターとして参加できます(Mogura VR)。制作にあわせてMakuakeでクラウドファンディングを5月9日から6月13日まで実施しています。
研究所メモ: リアルの施設をそのままVR化するのではなく、物理的な広さの制約をXRで超えています。900mの実物が1kmのバーチャル空間になる。リアル拠点を持つ企業がXRに乗り出すとき、複製ではなく「現実にはできない拡張」を作れるかが分かれ目になります。
大阪・関西万博が、ファンイベントと伝統工芸の舞台になった
大阪・関西万博×VTuber音楽フェス「XNAMBA」 — MR技術でグリーティングも実施
EXPO2025大阪・関西万博のEXPOホールでは5月27日、『XNAMBA MUSIC FESTIVAL -showcase-』が開催されます。600インチのフルスクリーンと270度のプロジェクションマッピングを使い、白玖ウタノ、松永依織、まりなすなど5組7名のVTuberがステージパフォーマンスを披露。株式会社Mawariが提供する「Mawari Network」を活用し、Meta Quest 3などのMR対応ヘッドセットを装着してVTuberとリアルタイムに交流できる「バーチャル・ミート&グリート」も体験者45名限定で実施します(Mogura VR)。入場券とプレミアム席、ミート&グリート抽選優先権が付く「EXPO2025メモリアルサポーター」枠は15,000円で数量限定販売されています。
研究所メモ: 無料観覧枠と1万5千円の優先枠を同時に用意し、ファンの熱量に応じて課金の入り口を分けています。全員に同じ体験を提供するのではなく、より深く関わりたい人向けの上位プランを別立てで作る。会場を持たないVTuberが、限られた枠を高単価で売る設計として参考になります。
ガンダムグッズ×西川庄六商店 — 1585年創業の扇子ブランドと万博コラボ
バンダイのアパレルブランド「STRICT-G」は、大阪・関西万博のパビリオン「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」の新作グッズとして、ミニポーチと扇子を発売します。扇子は1585年から続く近江商人の扇子ブランド「西川庄六商店」とのコラボで、パビリオン内の映像世界に登場する機体をモチーフにしたデザインなど2種類を用意。ミニポーチは5月10日、扇子は5月24日に発売され、価格は扇子が6,050円・3,080円、ミニポーチが2,200円です(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: 創業440年の老舗と、宇宙世紀という架空の未来を組み合わせています。伝統工芸の企業がキャラクターと組む場合、技術やブランドの格を保ちながら新しい客層に触れる機会になる。老舗にとってIPコラボは、若い層への露出を買う手段として機能します。
IPビジネスが、決算と人気投票で市場の熱量を数字にした
グリー、カバー — メタバース事業とVTuber事務所が過去最高益
グリーは5月9日、2025年6月期第3四半期(1〜3月)決算を発表。全体の売上高は146億2,000万円と前年同期比15%減でしたが、REALITYを中心とするメタバース事業は過去最高の四半期売上高・営業利益を記録しました。決済手数料率の改善でREALITYの収益性が高まり、近日中に全世界2,000万ダウンロードを達成する見込みです(Mogura VR)。ホロライブを運営するカバーも5月9日、2025年3月期の通期決算を発表。売上高は前年比43.9%増の434億100万円、純利益は34.4%増の55億5,900万円となり、いずれも大幅増を達成しました。中でもトレーディングカードゲーム「hololive OFFICIAL CARD GAME」を含むマーチャンダイジング分野は64.6%増の205億3,900万円と、想定を上回る実績です(Mogura VR)。
研究所メモ: 2社とも、グッズやカードゲームといった「ファンが手元に置けるもの」の伸びが利益を押し上げています。配信の視聴回数では見えない収益源が、決算という形でようやく数字に表れました。ファンビジネスの規模を語るなら、視聴数より物販の粗利率を見るべきだと分かる決算です。
Gaudiy×ソニー・バンダイナムコ — 100億円調達でIPのグローバル展開へ
ソニーグループ、バンダイナムコホールディングス、Gaudiyの3社は5月15日、エンターテインメントとテクノロジー分野での戦略的パートナーシップを発表しました。Gaudiyはソニーとバンダイナムコを引受先とする第三者割当増資を実施し、総額100億円を調達。「グローバル」「IP創出・次世代クリエイターの育成」「データ利活用」「ブロックチェーン」「生成AI」の5分野で連携し、ソニー傘下の「Crunchyroll」やGaudiy傘下の「MyAnimeList」を組み合わせて日本IPの海外展開を加速するとしています(Mogura VR、PR TIMES、AV Watch、ITmedia)。Gaudiyは2018年設立のスタートアップで、バンダイナムコの「ガンダムメタバースプロジェクト」の開発パートナーを務めています。
研究所メモ: 大手2社が、7年目のスタートアップに100億円をつけました。IPを持つ側(バンダイナムコ)と配信網を持つ側(ソニー)が、ファンとの接点を作る技術を持つ側(Gaudiy)に出資する構図です。ファンビジネスは今、コンテンツと配信網だけでなく、その間をつなぐ技術に資本が集まり始めています。
サンリオキャラクター大賞 — 昨年は歴代最多5,707万票
サンリオキャラクターの人気投票イベント「2025年サンリオキャラクター大賞」の中間順位(1〜20位)が発表され、9年ぶりの1位を狙う「ポムポムプリン」が暫定首位、5連覇中の「シナモロール」が2位につけています。1986年に始まったこのイベントは今年で40周年。450を超えるキャラクターがエントリーし、昨年の総投票数は歴代最多の5,707万4,053票を記録しました。結果発表イベントは6月29日、パシフィコ横浜の「SANRIO FES 2025」Day2内で行われます(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: 5,700万票という数字は、投票という行為だけでファンを毎年動かせることを示しています。新商品もイベントも介さず、順位を発表するだけで話題化する。自社のキャラクターやブランドが複数あるなら、それらを競わせる仕組みそのものが、コストの低いファンエンゲージメント施策になります。
今週の所感
今週は、ファンとの接点を作る「仕組み」そのものに、大きな金額が動いた週でした。
Gaudiyへの100億円出資は、コンテンツでもグッズでもなく、IPとファンをつなぐ技術への投資です。丸紅がWEAR GO LANDを1年がかりの実証実験を経てアプリ化したのも、目先の話題ではなく仕組みへの投資でした。カバーやグリーの決算で伸びているのが物販やグッズの粗利率だったことも、同じ構図を裏側から示しています。ファンビジネスの重心は、単発の企画から、繰り返し使える仕組みへ移っている。
一方で、くら寿司×にじさんじやGU×ちいかわのように、等身大のコラボが着実に積み上がっているのも今週の特徴です。100億円の提携と、250円の期間限定メニューが同じ週に並ぶ。この振れ幅の大きさに、推し活マーケティングという市場の裾野の広さが表れていると思います。
自社のファンとの接点は、単発の企画で終わっていないか。推し活マーケティングの設計原則やZ世代の消費行動とあわせて、今週の動きを見てみてください。
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