応援広告市場が769億円に倍増/NECがRoblox広告で高アテンションを実証【週刊推し活ニュース 2025年11月7日号】

2025年10月31日〜11月6日の1週間から、企業の推し活マーケティング・ファンビジネスの注目ニュースをお届けします。
今週のハイライト
今週のキーワードは、推し活の実態が、初めて数字で語られたでした。
ファンが自主的に出稿する「応援広告」の市場は約769億円に達し、2023年比でおよそ2倍に拡大しました。JOYSOUNDを展開するエクシングの調査では、推し活をしている人の59%がカラオケでも推し活をした経験があると回答。NECはRoblox内の広告を対象にした実証実験で、視聴時間が一般的なWeb広告の3〜5倍にあたる7秒に達したと発表しています。
一方で、数字の裏側にリスクも見えました。ウマ娘とプロジェクトセカイのライブでは、フラワースタンド制作会社の対応不備が発覚し、Cygamesとプロセカチームが返金代行に乗り出しました。VTuber事務所「Vivid V」は、代表による会社資金の私的流用が原因で倒産手続きに入っています。テーマパークとアニメIPのコラボは、よこはまコスモワールド、浅草花やしき、東武動物公園の3施設で同時に動き出しました。
遊園地3施設が同時にアニメIPを冬の目玉に据えた
よこはまコスモワールド×ハイキュー!!、花やしき×東京リベンジャーズ、東武動物公園×カラフルピーチ — 遊園地がキャラクターの舞台になった
アニメ『ハイキュー!!』とよこはまコスモワールド・YOKOHAMA AIR CABINのコラボが2025年12月5日から2026年1月25日まで開催されます。日向翔陽、影山飛雄ら6キャラクターの描き下ろしビジュアルを使ったグッズを販売するほか、園内では日向(CV:村瀬歩)と影山(CV:石川界人)の録りおろしボイスが流れ、スタンプラリー(1,900円)も用意されます(超!アニメディア)。浅草花やしきでは『東京リベンジャーズ』とのコラボ「童話リベンジャーズ」が11月12日から12月28日まで実施され、スペシャルチケットは2,300円。声優登壇イベントも11月17日と12月21日の2回行われ、料金はそれぞれ9,350円、6,050円です(アニメ!アニメ!)。東武動物公園は、登録者230万人超のゲーム実況グループ「カラフルピーチ」とのコラボを11月1日から2026年2月23日まで開催。ウインターイルミネーション「2025-2026」を前期、動物園コラボを後期の軸に据えています(インサイド)。
研究所メモ: 3施設が同じ週に、似た構造のコラボを走らせています。声優登壇・キーワードラリー・限定グッズという型は共通していますが、来場動機は施設ごとに違う設計です。観覧車、老舗遊園地、動物園と立地の異なる施設が同じ手法を選んだことは、テーマパーク業界でこの型がすでに標準化しつつあることを示しています。推し活イベント企画の基本を読み直すと、共通する骨格が見えてきます。
食品各社のコラボがキャラクターを店頭の日常に置いた
モスバーガー×マイメロディ&クロミ、不二家ペコちゃん×サンリオキャラクターズ — 食品各社がキャラクターを棚に並べた
サンリオの「マイメロディ」「クロミ」とモスバーガーのコラボが11月12日から2026年2月下旬まで、一部店舗を除く全国で実施されます。2025年に50周年を迎えたマイメロディと20周年のクロミが、おそろいのモスバーガーカラーのリボンをつけて登場。コラボおもちゃは全5種類で、こども向けの「モスワイワイセット」(540円〜660円)などを購入すると1つ選べる仕組みです(アニメ!アニメ!)。不二家のマスコット「ペコちゃん」とサンリオキャラクターズのコラボ文具シリーズも、11月中旬から全国の雑貨店・書店で発売されます。手掛けたのは創業191年、岐阜県の紙製品メーカー・古川紙工で、レターセットは506円、和紙フレークシールは440円です(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: どちらも新商品を作らず、既存の売り場に別のキャラクターを足しただけの企画です。モスバーガーは子ども向けセットのおまけ、不二家コラボは文具メーカーの既存ラインという、追加コストの小さい枠にキャラクターを差し込んでいます。周年を迎えたIPほど、こうした「相乗り型」のコラボ相手を探しやすくなるという好例です。
推し活のリアルが、複数の企業調査で数字になった
応援広告市場769億円、JOYSOUND調査「推し活の59%はカラオケ」 — ファンの行動が可視化された週
ファンが計画・出資して街中に広告を掲出する「応援広告」の市場は、「推し活・応援広告調査2024」(ジェイアール東日本企画調べ)によると約769億円に達し、2023年比でおよそ2倍に増加しました。これは屋外広告・交通広告費4,487億円(2024年電通「日本の広告費」)の約17%に相当します。「応援広告に関する実態調査」(INFORICH調べ)では、応援広告を出したことがある人は推定35万人、今後は143万人に急増すると予想されています。4月にはFRUITS ZIPPER・真中まなさんの生誕祭で東急プラザ表参道一帯がメンバーカラーに染まり、6月にはBTSの活動再開に合わせてJR新大久保駅周辺にラッピングバスが走りました(AdverTimes.)。JOYSOUNDを展開するエクシングは、ユーザー1,621人を対象に9月19日から10月13日にかけて実施した「推しランキング2025」を発表。アニメ・ゲーム部門は「プロジェクトセカイ」が首位、男性アーティスト部門はSnow Man、女性アーティスト部門はME:Iが1位となり、推し活経験者の59%がカラオケでも推し活をしたことがあると回答しています(アニメ!アニメ!)。
アニメ!アニメ!読者調査「サブスク加入率75%」 — 視聴環境のデータも積み上がった
アニメ!アニメ!が10月20日から27日にかけて実施した読者アンケートには113人が回答。サブスクリプションサービスへの「加入している」との回答は75%にのぼり、加入サービスはAmazon Prime Videoが最多でした。一方で「断然リアタイ派」「録画している」との回答も約4割にのぼり、放送中の視聴とサブスク視聴が併存している実態が見えました(アニメ!アニメ!)。
研究所メモ: 769億円という応援広告市場の規模は、屋外・交通広告費全体の17%に相当する数字です。ファンが自分のお金で広告枠を買う構造は、企業から見れば無償のメディア出稿にほかなりません。カラオケの59%、サブスク加入率75%という数字も同じ構図で、企業が用意した場所や仕組みをファンが推し活の舞台に転用しています。場所を用意する側に回れるかどうかが、今後の差になりそうです。
ファンの熱量に頼った事業ほど、運営体制の甘さが響いた
フラスタ返金トラブル、VTuber事務所「Vivid V」倒産 — お金の透明性が問われた週
『ウマ娘プリティーダービー』と『プロジェクトセカイ』の公式Xが10月31日、それぞれのライブで発生したお祝い花(フラワースタンド)トラブルの続報を公開しました。10月18・19日に開催された「ウマ娘6th EVENT」「プロジェクトセカイ5th Anniversary感謝祭」で、制作会社フラスタの納品不備や破損事故が発生。フラスタ自身による全額返金が期間内に困難と判明したため、Cygamesとプロセカチームが返金代行を実施すると発表しました(インサイド、ITmedia、Game*Spark、ORICON NEWS)。VTuberプロジェクト「Vivid V」を運営する株式会社LinkUpは11月5日、倒産手続きの準備に入ると発表。代表取締役・西口昇太朗氏による会社資金の私的流用が原因と説明されており、ファンクラブは即日強制キャンセルとなり会費は返金、クラウドファンディングの支援金も11月10日から返金手続きが始まります(Mogura VR、GameBusiness.jp)。
研究所メモ: どちらもファンが前払いでお金を出す仕組みが裏目に出た事例です。フラワースタンドもクラウドファンディングも、支払いから受け取りまでの間にファンが事業者を信頼するしかない構造になっています。推し活市場が拡大するほど、この「先払い」を扱う事業者の資金管理体制がそのままブランドの信用に直結します。
日本発IPが、海外市場とゲーム業界に出口を広げた
「孤独のグルメ」ソウル初上陸、にじさんじ×タカラトミーのカードゲーム — IPが新しい市場に踏み出した
マンガ『孤独のグルメ』のPOP UP SHOPが韓国・ソウルに初上陸し、11月13日から16日まで開催されます。会場はソウルの大型商業施設「THE HYUNDAI SEOUL」B2Fの「HEIGHTS」で、パルコとの共同開催。会場で40,000ウォン以上購入すると、原作マンガ韓国版を抜粋したオリジナルZINEがプレゼントされます(PR TIMES)。VTuberグループ「にじさんじ」のカードゲームが、2027年春に発売されることが決まりました。タカラトミーとの共同企画で、2026年春に続報が公開される予定です(eeo)。
研究所メモ: パルコは「コンテンツ事業を新たな成長領域」と位置づけ、韓国展開を今後も続けると明言しています。にじさんじのカード化も、ホロライブの公式カードゲームが好調という前例があっての決断です。自社IPを一度海外や新業態で試し、反応を見てから追随する動きが、この週だけで2件重なりました。
自治体と企業が、メタバースを地域の接点に変えた
NEC×Roblox広告実証実験、豊田市×クラスター、新潟県三条市「バーチャルSANJO」 — メタバースが自治体・広告の実験場になった
NECはカッパ・クリエイト、Brave groupと共同で、Roblox内のゲーム「だるまゲーム」における広告効果を測定する実証実験を実施しました。2025年7月22日から8月24日まで配信し、1ユーザーあたりの平均視聴時間は7秒。一般的なWeb広告(約1〜2秒)の3〜5倍にあたるアテンション効果を確認しました。期間中は約80万人がログインし、約60万人が広告を視聴、総視聴時間は2,200時間を超えています(Mogura VR、PANORA)。愛知県豊田市とクラスター株式会社は、TOYOTA GAZOO Racingの協力で「次世代メタバース街づくりプロジェクト」を開始。第一弾として「バーチャル豊田スタジアム」でのレース体験を11月1日から公開し、第二弾では愛知県立豊田西高校の生徒を対象に、11月から12月のうち5日間の街づくりプログラムを実施します(Mogura VR)。新潟県三条市をテーマにしたVRChatワールド「バーチャルSANJO」がVer1.0で公開され、地域の名産品や文化をモチーフにした3Dオブジェコンテストも11月1日から始まりました。審査員には三条市長の滝沢亮氏が名を連ねています(Mogura VR)。
研究所メモ: 3件とも、広告・観光・教育という異なる目的でメタバースを使っていますが、共通するのは「まず小さく試す」という姿勢です。NECは1カ月強の実証実験、豊田市は高校生5日間のプログラム、三条市はコンテストという期間限定の企画から始めています。予算の大きいシステム投資ではなく、期間を区切った実験から入る設計は、自治体や大企業がXRに手を出す際の現実的な型になりつつあります。
今週の所感
今週は、推し活の輪郭が、数字とトラブルの両面から見えてきた週でした。
応援広告市場769億円、JOYSOUND調査のカラオケ推し活59%、NECのRoblox広告7秒。ファンの行動データが、企業のマーケティング資料として扱えるレベルで積み上がってきています。一方で、フラスタの返金対応やVivid Vの倒産は、ファンの信頼と前払いのお金で成り立つ仕組みが、運営側の管理体制ひとつで崩れることを示しました。数字が見えるようになったからこそ、その裏側の運営責任も同じ解像度で問われるようになっていると感じます。
テーマパークのコラボが3施設同時に走ったことも、この市場の型がすでに標準化していることの表れです。推し活マーケティングの設計原則や応援広告の手引きとあわせて、今週の動きを見てみてください。
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