特別セミナー

「推し活って一体何なの!?」AI時代に推し活が必要とされる理由

ファンと推しの違い、応援の歴史、AI時代に人の温度が選ばれる理由を、特別セミナー音源から記事として再構成します。

7章

EPISODE 5319:33

この回の最初の章推し活とは、「好き」を支える行動へ変えること

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推し活とは、「好き」を支える行動へ変えること

ファンと推し活は、きれいに線を引けるものではありません。ただ「好きだから見る」から、「この人の活動が続いてほしい」「成長を一緒に喜びたい」へ気持ちが進むと、応援には行動が加わります。

買う、広める、会いに行く、仲間と企画する。行動の大きさは人それぞれですが、中心にあるのは、相手の未来へ自分の時間や気持ちを少し預けることです。だから推し活は、単なる消費より長い関係になりやすいのです。

この線引きが曖昧なのは、本人の自覚とも一致しないからです。毎週ライブへ行っていても「ファンです」と言う人がいれば、月に一度配信を見るだけで「推しです」と言う人もいます。外から測れる基準はありません。

企業がこの言葉を使うときに気をつけたいのは、そこです。支出額や参加回数で線を引くと、当てはまらない人を排除してしまう。推し活という言葉は、行動の大きさではなく気持ちの向きを指していると考えるほうが実態に近いはずです。

ファンから推し活へ変わるとき

LIKE好きで楽しむ

作品や活動から、自分が喜びを受け取る。

SUPPORT続く未来を支える

応援や参加を通じて、相手の活動へ力を返す。

もう一つ知っておきたいのは、この移行が一方向ではないことです。強く応援していた時期があっても、生活が変わって距離を置くことはあります。離れたあとに戻ってくる人も多い。

だから運営やサービスの側は、離れる人を失敗として数えないほうがいい。いつでも戻れる状態を保っておくことが、長い目では最も効く施策になります。

推しという言葉を使うかどうかは、人それぞれです。毎回買う人だけを大切な顧客と見なすのではなく、友人に紹介する人、使い続ける人、静かに発信を読む人もいると考えると、企業が守るべき約束や用意する接点が具体的になります。

応援の歴史は、見る時代から一緒につくる時代へ

かつて応援は、テレビや雑誌を通じて遠くから見るものでした。次に、ライブやファンクラブで会いに行く時代が来て、SNSによって日常的に言葉を届けられるようになります。そして今は、ファンが拡散や企画、商品づくりにも関わる時代です。

この変化を、技術の進歩だけで説明することもできます。ただ実際に動いていたのは、もっと単純な欲求です。近くで見たい、直接伝えたい、力になりたい。手段が現れるたびに、その欲求が形を得てきました。

距離が近くなったぶん、喜びも責任も大きくなりました。推しの声がすぐ届く一方、ファンの期待もすぐ届きます。つながりを増やすことより、安心して続けられる距離を設計することが重要になっています。

4 ERAS応援が変わってきた4つの段階
  1. 見るテレビ・雑誌
  2. 会いに行くライブ・ファンクラブ
  3. 毎日つながるSNS・配信
  4. 一緒につくる企画・共創・コミュニティ

新しい段階が古い応援を消すのではなく、選べる関わり方が増えています。

応援の接点が増えるほど、ファンは自分に合う距離を選べます。同時に、運営側には情報量や参加ルールを整える役割が生まれます。

段階が進んでも、前の段階が不要になるわけではありません。いまでもテレビで初めて知る人はいますし、SNSを使わずに応援する人もいます。新しい方法が増えたぶん、選択肢が増えただけです。

むしろ問題になるのは、新しい方法にしか入口を用意しないことです。配信でしか告知しない、SNSでしか受付しない。接点を増やしたつもりが、実は入口を一つに絞っている場合があります。

AIで選択肢が増えるほど、人にしかない温度が目立つ

AIは文章、画像、接客、企画の下書きを速く作れます。商品や情報が増え、「便利」や「正しい」だけでは差がつきにくくなります。そんな時代に人が選ぶ理由として残るのが、誰が、どんな思いで続けているかという物語です。

実際、同じ品質のものが同じ価格で並んでいるとき、人は理由を探します。誰が作ったか、どんな経緯があるか。情報が多いほど、選ぶための物語が求められます。

失敗したときに逃げずに説明する。長く応援してくれた人を覚えている。現場で交わした言葉を次の改善へつなげる。人の温度は、効率の反対ではなく、信頼を作るための資産になります。

AIが不得意なのは、責任を引き受けることです。生成物の質は上がっても、約束を守る、間違えたときに謝る、次にどうするかを決めるのは人の仕事として残ります。

推し活の文脈でいえば、ファンが応援しているのは能力ではなく姿勢であることが多い。上手いから好きになった人も、続けている姿を見ているうちに、上手さとは別の理由で応援するようになる。この移り変わりは、性能では説明できません。

企業が推されるには、売る前に「応援する理由」をつくる

企業から推し活の相談を受けると、最初にグッズやキャンペーンの話が出がちです。しかし、ファンが見ているのは商品だけではありません。企業がその文化をどう理解し、誰を大切にし、終わったあともどう関わるのかを見ています。

とくに「終わったあと」は軽く見られがちです。企画期間中は熱心でも、終了後に問い合わせ先が消える、告知が下げられる。ファンはその落差を覚えています。

OSHI MAPのように、ファン、推される人、企業、地域の接点を整理すると、一度の販売では見えなかった関係が見えてきます。接点を増やす前に、それぞれにどんな良いことが残るかを考えることが、推される事業の土台です。

整理してみると、誰にも利益が残らない企画が意外に多いことに気づきます。企業は費用だけかかり、ファンは負担が増え、推される側には何も残らない。図にすると、それがはっきり見えます。

相談の場でよく出るのが、「うちの商材は推し活に向いていない」という言葉です。しかし実際には、飲食も金融も交通も、ファンが推しのために使っている場面があります。向いていないのではなく、使われ方を知らないだけであることが多い。

だから最初にやるべきなのは、企画を考えることではなく観察です。自社の商品やサービスが、すでにどう使われているかを見る。新しい用途を作るより、すでにある使われ方を邪魔しないほうが早いこともあります。

ORBIT推し活の中心と、企業が関われる場所
  1. 中心:推しと本人の活動企業が代われない部分
  2. 準備の時間調べる・買う・移動する
  3. 当日の体験会場・店舗・配信
  4. 記録と共有写真・感想・保存
  5. ファン同士の関係交換・交流・共同企画

推し活未来研究所による整理。企業が入れるのは周りの部分で、中心は本人とファンのものです。

中心に立とうとすると、たいてい無理が出ます。企業が推しの代わりになることはできません。

周りの不便を減らすだけで、応援はずいぶんやりやすくなる。そこに商売の余地があります。

OSHI BUSINESS推される企業になる3つの問い

一番大切なのは、「ファンを裏切らない」という約束

完売や話題化を急ぐと、販売数をしぼりすぎる、期待だけをあおる、説明を後回しにするといった判断が起こります。短期では数字が出ても、「好きな気持ちを利用された」と思われれば、次の企画にはつながりません。

ここで難しいのは、短期の数字が悪いこと自体は、その場では誰にも責められない点です。売り切れれば成功に見え、批判が出るのは数週間後。判断の時点では、良し悪しが分かりません。

BEFORE YOU LAUNCH「裏切らない企画」かを確かめる4つの問い

裏切らないとは、失敗しないことではありません。問題が起きたときに、何が起きたか、どう直すか、誰に返すかを早く伝えることです。信頼は完璧さではなく、失敗後の行動でも作り直せるのです。

この対応の速さは、事前の準備でしか作れません。何かあってから窓口や基準を決めていると、判断に日数がかかります。決めておけば、その日のうちに動けます。

推し活に関わる企画では、想定していない使われ方が必ず出てきます。起きないようにするより、起きたときに早く動ける状態を作るほうが現実的です。

裏切られたと感じた記憶は、長く残ります。しかも本人だけでなく、周囲にも共有されます。数年前の対応が、いまだに話題に出ることも珍しくありません。

逆に、誠実な対応も同じくらい記憶されます。あのときちゃんと説明してくれた、という評価は次の企画への信頼になる。信頼の貯金と借金は、どちらも複利で効いてくると考えるのが現実的です。

推す人、推される人、支える企業が幸せになる未来へ

PQuuutのように、ファンが現場を一緒に盛り上げられる仕組みは、企業が前へ出るのではなく、応援したい人の行動を助けます。主役はいつもファンと推しで、サービスはその間をなめらかにつなぐ存在です。

サービスが目立ちすぎると、応援の邪魔になります。ファンが撮りたいのは推しであって、企業のロゴではありません。裏方に徹する設計のほうが、結果として長く使われます。

イベントや展示会で直接話すと、数字だけでは見えない困りごとが分かります。推し活の未来は、新しい機能より、関わる人の声を聞き続けることから生まれる。この研究所も、音声、記事、現場を行き来しながら、その変化を記録していきます。

その無理は、しばしば見えにくいところに現れます。現場のスタッフ、推される本人、企画を回すファンの主催者。表側が盛り上がっているときほど、どこかに負担が寄っていないかを確かめたい。

推し活が文化として続くかどうかは、熱量の大きさではなく、関わる人が翌年も同じことをやりたいと思えるかにかかっています。

まとめ:「推される時代」に必要な三つの姿勢

  1. 関係を見る商品より先に、だれとだれをつなぐ企画かを考える。
  2. 温度を伝えるAIで増やせない、人の理由や約束を言葉にする。
  3. 信頼を守るファンの気持ちを短期の数字だけに変えない。

推し活は、特別な人の特別な趣味ではなくなりました。三人に一人が推しを持つという状況は、企業にとっては顧客の三分の一が誰かを応援しているという意味でもあります。

その事実をどう扱うかで、これからの事業の姿は変わります。応援の邪魔をしないか、応援を助けられるか。推されるかどうかは、結局そこで決まります。