推し活聖地巡礼

『ドライブ・​マイ・​カー』​の​聖地巡礼|広島の​中工場と​瀬戸内で、​赤い​サーブの​記憶を​たどる​【推し活×聖地巡礼】

銀色の配管が並ぶガラスの通路を抜けると、その先に瀬戸内(せとうち)海が開けます。映画『ドライブ・マイ・カー』を見た人には、広島市中工場(なかこうじょう)の風景が、家福(かふく)とみさきの会話と一緒に思い出されるかもしれません。

中工場のガラス通路を歩く二人の女性の水彩イラスト

広島の劇場、海辺、島へ。十の撮影地

10
広島と瀬戸内の映画ゆかりの10か所広島県広島市・広島県呉市(くれし)・広島県東広島市
実写ロケ地

① 中工場(なかこうじょう)

海へ抜けるガラス通路が登場。護岸(ごがん)の一部は工事による立ち入り制限中。

中工場を詳しく

② 国際会議場

演劇祭の場面を思い出す、街の中心の会議施設。

国際会議場を詳しく

③ プリンスホテル

車寄せと最上階のバーが撮影に使われたホテル。

プリンスホテルを詳しく

④ 黄金山(おうごんざん)

映画にも映る仁保(にほ)ジャンクションの夜景を眺めた山。

黄金山を詳しく

⑤ 御手洗(みたらい)の町並み

潮待ち・風待ちの港町を、公道や公開施設から歩く。

御手洗の町並みを詳しく

⑥ アステールプラザ

演劇祭の場面を支えた、稽古(けいこ)場とホールが集まる文化施設。

アステールプラザを詳しく

⑦ くらら

400人のエキストラが参加し、公演場面が撮影された大ホール。

くららを詳しく

⑧ 安芸灘大橋(あきなだおおはし)

赤いサーブが瀬戸内(せとうち)の島へ渡る道と、橋を見渡す海辺の公園。

安芸灘大橋を詳しく

⑨ おりづるタワー

赤いサーブが相生橋(あいおいばし)を走る場面を撮った、原爆ドーム東隣の展望施設。

おりづるタワーを詳しく

⑩ 小谷(こだに)SA

家福(かふく)がコーヒーとパンを手に休憩し、広島へ向かう場面の撮影地。

小谷SAを詳しく

1広島市中工場(なかこうじょう)|海へ抜けるガラスの通路

配管が見える中工場のエコリアム

中工場は、家庭から出たごみを焼却する稼働中の工場です。建築家の谷口吉生(たにぐちよしお)が設計し、2004年2月に竣工(しゅんこう)しました。建物の中央にあるガラス張りの通路「エコリアム」は、市街地側から海側へ抜けています。通路の両側には、金属の配管や機械を収めた空間が見えます。

エコリアムの公開は9時〜16時30分です。12月29日〜1月3日を除いて、予約なしで入れます。入口は2階です。工場の機械を近くで見る内部見学とは受付が異なるため、映画に登場した通路だけを見るなら、まずこの公開通路へ向かいます。

2026年10月現在、南側・西側の護岸(ごがん)では工事に伴う立ち入り制限があります。広島市の案内では、工事は2026年5月上旬〜2027年2月中旬の予定です。

谷口は、工場らしい金属の素材感を隠さず、機械を見せる建築にしました。その一方、ガラス越しの植栽や海への抜けを設けています。広島県の建築紹介では、市街地と海の間を通る軸を建物の中心に置いた設計だと説明されています。銀色の設備と海景が同じ視線に入るのは、その構成によるものです。

内部見学も希望する場合、平日の個人・10人未満の自由見学は6階事務所で受け付けます。受付は9時〜16時で、祝日・年末年始・8月6日を除きます。職員の案内を希望する見学や10人以上の団体は別の事前申込制です。偶数月の第3日曜日には、定員25人の休日見学も設けています。

公共交通では、広島バス24号線の吉島(よしじま)営業所方面に乗り、「南吉島(みなみよしじま)」から徒歩約5分です。市中心部の平和記念公園付近から、海側へ移動する位置関係です。

場所
広島県広島市中区南吉島1丁目5-1
作品との関係
家福(かふく)とみさきが訪れるロケ地、中央のガラス通路エコリアムが登場
公開時間
エコリアムは9時〜16時30分、予約不要、12月29日〜1月3日休み
アクセス
広島バス24号線・南吉島バス停から徒歩約5分
所在地南吉島1-5-1。エコリアムは公開、南・西側護岸の一部は2027年2月中旬まで工事予定。

出典:広島市・2026年8月更新の見学案内
広島市・護岸の通行制限
広島県・中工場の建築紹介
広島市・中工場の見学案内入口
広島県観光公式サイト・施設案内

2平和記念公園・広島国際会議場|演劇の場面が置かれた街の中心

ガラスとコンクリートの柱が並ぶ広島国際会議場の外観

家福(かふく)が演出を依頼された演劇祭の会場として登場するのが、平和記念公園南側の広島国際会議場です。広島県のロケ地紹介は、地下へ続く車道や円形のアプローチも撮影場所として挙げています。大きな建物の全景だけでなく、車が人を送り届ける動線が映画に使われました。

この場所には1955年、丹下健三(たんげけんぞう)が設計した広島市公会堂が建てられました。現在の国際会議場は、市制施行100周年にあたる1989年に建て替えられたものです。平和記念資料館と並ぶ位置にあり、川や橋とともに、市中心部の場面を支えています。

会議場のホールや会議室は催事のための貸出施設です。映画のロケ地として建物を訪れる場合も、催事の入場券が必要な場所と、外観を見られる場所を区別します。地下車道は見学用の歩道ではないため、外からの確認にとどめます。

場所
広島県広島市中区中島町(なかじまちょう)1-5
作品との関係
家福が演出を務める演劇祭の会場および車道アプローチの撮影地
建築
1989年竣工(しゅんこう)、平和記念公園内のコンベンション施設
見学時の注意
ホール・会議室は催事貸出施設のため外観と公開区域から見学
所在地中島町1-5。平和記念公園内、室内の常時見学施設ではありません。

出典:広島市・映画のロケ地を紹介する広報紙
広島県観光公式サイト・ロケ地紹介

3グランドプリンスホテル広島|会話の舞台になった最上階のバー

瀬戸内海に面するグランドプリンスホテル広島の建物

グランドプリンスホテル広島では、23階のスカイラウンジ「トップ オブ ヒロシマ」が撮影に使われました。映画のバーの場面を選ぶ条件には、店内のカウンターに加え、車寄せも含まれていました。海に面したホテルと、赤いサーブが人を運ぶ場面をつなげられる場所が求められていたのです。

撮影を受け入れたホテルの担当者によると、撮影は営業が終わった後に行われました。ホテル側の広報担当者もバーテンダー役で参加しています。撮影隊がこのホテルを宿泊拠点にしたわけではなく、ロケ場所として協力したという証言です。

現在のバー営業は17時30分〜22時30分、ドリンクのラストオーダーは22時です。日曜〜木曜の料理は原則21時までで、一部のつまみは22時まで注文できます。ディナーブッフェは別の時間設定で、2026年秋のプランは17時30分〜21時30分の90分制です。バー利用と食事の予約は、ホテルの店舗案内でそれぞれ扱っています。

カウンターの席を撮影時と同じ条件で確保できるという案内はありません。夜の海や市街地を見下ろす23階の店で、飲食そのものを楽しむ訪れ方になります。ホテルは元宇品(うじな)の海沿いにあり、中工場(なかこうじょう)と同じく広島市の南側ですが、両者の間には川と港の施設があります。

場所
広島県広島市南区元宇品町(もとうじなまち)23-1 グランドプリンスホテル広島23階
作品との関係
車寄せと23階スカイラウンジ「トップ オブ ヒロシマ」でバーの場面を撮影
バー営業時間
17時30分〜22時30分・ドリンクラストオーダー22時
見どころ
夜の瀬戸内(せとうち)海と広島市街を見下ろす最上階ラウンジ
所在地元宇品町23-1。23階ラウンジは飲食施設として利用。

出典:西武ロケーションサービス・撮影協力者の対談
トップ オブ ヒロシマ公式案内

4黄金山(おうごんざん)|車で走った街を、少し離れて眺める

黄金山から見渡す仁保ジャンクションと広島湾

黄金山は標高222メートルの山です。広島フィルム・コミッションが関わる映画ロケ地紹介では、山上から見える広島高速の3号線・4号線を、劇中のドライブの風景と結び付けています。車内から見た道路を、今度は高い場所から街の一部として見渡せる地点です。

山頂の展望台からは、仁保(にほ)方面の夜景や、港へ延びる宇品(うじな)大橋が見えます。海沿いの高速道路が住宅地と工場の間を通り、橋へ上がっていく広島の地形をつかめます。映画で明るい街の光と暗い海面が交互に現れる背景には、この沿岸の道路網があります。

黄金山は、かつて「仁保島」という島でした。広島市の散策案内は、戦国時代には海を見渡す山城があったと紹介しています。いまは市街地に囲まれた山ですが、山上から広く海を見渡せる理由を、昔の地形からも理解できます。

徒歩の場合、市の案内は「東本浦(ひがしほんうら)」バス停から途中の三叉路まで約30分、そこから山頂まで約40分としています。山の入口から短時間で上がれる展望スポットではありません。広島駅からのバスは4号線・仁保車庫行です。車道の夜間通行制限もあるため、車での夜景見学は道路の案内に合わせて計画します。

場所
広島県広島市南区黄金山町
作品との関係
劇中のドライブ場面で走る広島高速3号線・4号線を見渡す標高222メートルの展望地
眺望
山頂展望台から仁保方面の高速道路や宇品大橋を一望
アクセス
広島バス4号線・東本浦バス停から山頂まで徒歩約70分
所在地南区黄金山町。高速道路の走行風景を見渡す展望地。

出典:広島市・黄金山の散策案内
広島県観光公式・黄金山
広島高速道路公社・映画に登場する道路と眺望

5大崎下島(おおさきしもじま)・御手洗(みたらい)町並み保存地区|街の速度が変わる港町

瓦屋根の家々が並ぶ御手洗の路地

大崎下島の御手洗は、劇中で家福(かふく)が滞在する場所として使われた港町です。広島市中心部とは別の島にあり、赤いサーブの移動が、都市の道路から海辺の道へ広がる場所でもあります。呉地域のロケ地紹介は、御手洗と、その手前の安芸灘大橋(あきなだおおはし)を撮影地として挙げています。

御手洗の町並みは17世紀中頃から形づくられ、瀬戸内(せとうち)海を行き交う船の中継港として発展しました。風や潮を待つ船を受け入れた商家、茶屋、船宿などが、限られた土地に集まっています。町は数度の埋め立てを重ね、中心路から細い生活路が枝分かれする構成になりました。

港には、大きな防波堤である大波止(おおはと)、石橋、高燈籠、石垣の護岸(ごがん)、船へ乗り降りする階段状の雁木(がんぎ)などが残ります。町の輪郭をつくっているのは家並みだけではなく、海の高さや船の出入りに合わせた土木施設です。1994年には重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。

散策の受付となる御手洗休憩所は、御手洗65番地にあります。県観光サイトでは観光協会の営業時間を9時〜16時30分、火曜休みとしています。町全体に門や開館時刻があるわけではありません。案内所が休みの日も生活は続いており、住宅の入口や細い路地を撮影のために塞がないようにします。

場所
広島県呉市(くれし)豊町御手洗
作品との関係
劇中で家福が滞在する瀬戸内海の港町のロケ地
文化財指定
1994年選定の重要伝統的建造物群保存地区
案内所
御手洗休憩所・御手洗65番地、9時〜16時30分、火曜休み
所在地豊町御手洗。大崎下島に残る江戸時代以来の港町。

出典:呉市・御手洗町並み保存地区
広島県・里山と里海のロケ地紹介
御手洗町並み保存地区の案内

6JMSアステールプラザ|広島の演劇を支える稽古(けいこ)と上演の場所

灰色のタイル壁とガラスの入口があるアステールプラザ

広島市のロケ地紹介には、加古町(かこまち)のJMSアステールプラザも載っています。国際会議場より南にあり、ホール、練習室、図書館、宿泊施設などが集まる文化施設です。国際会議場と同じ市の中心部にあります。

建物には大ホールと中ホールだけでなく、リハーサル室、音楽室、舞踊の練習に使う部屋があります。公演当日の客席からは見えない、声や身体を整えるための場所を備えています。『ドライブ・マイ・カー』が舞台の完成形とともに描いた、稽古の時間に対応する実際の施設です。

アステールプラザは、広島を拠点にした舞台制作にも取り組んでいます。「演劇引力廣島」では、公募した俳優と演出家による公演を継続しています。2027年2月19日〜23日は、福名理穂を迎えた『跡先』の再創作公演を予定しています。2026年10月時点の案内では、チケット発売は12月12日です。

映画のために一時的につくられた劇場ではなく、いまも広島で演劇をつくっている場所です。作品に登場した空間を訪ねることと、ここで生まれる別の舞台を客席から見ることがつながります。館内の練習室やホールは利用者のための区域で、ロケ地見学の常設ツアーとしては案内されていません。

広島駅から市内電車なら「舟入町(ふないりまち)」から約400メートル、「市役所前」から約600メートル。広島バス24号線の「加古町」からは約200メートルです。中工場(なかこうじょう)へ向かう24号線と合わせて移動しやすい位置にあります。

場所
広島県広島市中区加古町4-17
作品との関係
広島市の公式ロケ地紹介に掲載された文化施設
施設構成
大・中ホール、リハーサル室、練習室、図書館などを併設
アクセス
広島バス24号線・加古町から約200メートル、市内電車・舟入町から約400メートル
所在地加古町4-17。ホールや練習室を備える文化施設。

出典:広島市・映画のロケ地紹介
JMSアステールプラザ・施設一覧
主催事業と公演案内
アクセス

7東広島芸術文化ホールくらら|400人が参加した舞台の撮影

吹き抜けとガラスの手すりがあるくららの公共ロビー

家福(かふく)たちの公演会場として使われた「くらら」は、東広島市の西条に2016年に開館したホールです。映画の中では同じ演劇祭を構成する場所が、現実には広島市と東広島市の二つにまたがっています。

くららの上映会の告知によると、大ホールでの撮影には400人のエキストラが参加しました。舞台に立つ俳優だけでなく、客席にも地域の人々が入り、上演の場面を支えています。大ホールは4層・1,206席で、そのうち6席は車椅子用です。両側に張り出したバルコニー席が、舞台を囲む形をつくっています。

舞台の開口部を額縁のように囲むプロセニアム形式で、演劇と音楽の双方に対応します。音楽公演では反射板を使い、舞台の奥行きや響きを調整する構成です。映画の映像に残る客席の高さや舞台との距離には、このホール自体の特徴が表れています。

2022年10月16日には、撮影した大ホールで『ドライブ・マイ・カー』を上映する催しも開かれました。10時30分と14時30分の2回で、告知ではホワイエの撮影風景パネルも案内されています。これは受賞後に企画された過去の上映会で、現在も同じパネルが常設されているという案内ではありません。

JR西条駅から徒歩約4分。JR広島駅から西条駅までは電車で約40分と施設が案内しています。山陽新幹線の東広島駅は別の場所で、そこからはタクシー約15分です。駅名の「東広島」だけで宿や列車を選ぶと、徒歩で着けると思っていた場所から離れてしまいます。

一般来館者向けの敷地内駐車場はなく、提携駐車場を利用します。施設利用時の2時間無料処理は、総合窓口で駐車券を提示する方式です。総合窓口の受付は9時〜19時で、年末年始や点検日は休みです。公演を見る場合の入場時刻と料金は、公演ごとに設定されています。

場所
広島県東広島市西条栄町(さいじょうさかえまち)7-19
作品との関係
400人のエキストラが参加して舞台上演の場面を撮影した大ホール
最寄り駅
JR山陽本線西条駅から徒歩約4分
窓口受付
9時〜19時、公演の入場時刻・料金は催事ごとに設定
所在地西条栄町7-19。JR西条駅から徒歩約4分。

出典:広島県のロケ地紹介
2022年10月のロケ地上映会
くらら・ホールガイド
アクセスと提携駐車場

8安芸灘大橋(あきなだおおはし)・白崎園(しらさきえん)|島へ渡る赤い車の道

白崎園の岸辺の岩に座り、海峡をまたぐ安芸灘大橋を眺める二人のイラスト

安芸灘大橋は、本土から下蒲刈島(しもかまがりじま)へ渡る吊り橋です。御手洗(みたらい)へ向かう途中の、安芸灘とびしま海道の入口にあたります。呉地域のロケ地案内が、御手洗と並べて『ドライブ・マイ・カー』の撮影地として紹介しています。

2000年1月18日に開通しました。橋そのものの長さは1,175メートル、塔の高さは海面から約130メートルです。「女猫(めねこ)の瀬戸(せと)」と呼ばれる海峡をまたぎ、七つの島を七つの橋でつなぐ道の、最も本土寄りに位置します。映画の中の車の移動をたどるときにも、島の入口をつかむ目印になります。

橋を眺めるなら、下蒲刈島側の白崎園が適しています。休憩所、東屋、トイレ、駐車場があり、海峡を望めます。道路公社の案内では、駐車枠は普通車8台、大型車2台、障害者用1台で、島側の駐車場から橋と海峡を落ち着いて見渡せます。

安芸灘大橋は有料道路で、普通車は片道730円、軽自動車は570円です。現金または回数通行券で支払い、ETC、クレジットカード、電子マネーは使えません。料金所は本土側にあるため、島へ入るときは橋を渡る前、戻るときは渡った後に支払います。

歩行者と自転車は無料で通れます。ただし、強風時には通行規制があり、道路公社は10分平均の風速15メートル毎秒以上で歩行者・二輪車を通行止めにすると案内しています。島の天気だけでなく、橋の交通情報が移動の可否に直接関わる場所です。

場所
広島県呉市(くれし)下蒲刈町(しもかまがりちょう)下島・白崎園
作品との関係
御手洗へ向かう途中に渡る、安芸灘とびしま海道入口の吊り橋
通行料金
普通車片道730円、軽自動車570円、現金または回数通行券のみ、歩行者・自転車無料
展望場所
下蒲刈島側の白崎園に休憩所・トイレ・駐車場あり
所在地下蒲刈町下島。有料の吊り橋を島側の白崎園から望む。

出典:呉地域・ロケ地案内
安芸灘大橋と白崎園
通行料金
歩行者・自転車の案内
道路交通情報

9おりづるタワー|相生橋(あいおいばし)を渡る赤いサーブを撮った場所

おりづるタワーの木の屋根の展望台から、原爆ドームと川、相生橋を眺める二人

広島フィルム・コミッションのロケ地マップによると、赤いサーブ900が相生橋を走り抜ける場面は、おりづるタワーから撮影されました。原爆ドームの東隣に建つ施設で、屋上展望台「ひろしまの丘」からは、原爆ドームと平和記念公園、遠く宮島の弥山(みせん)まで見渡せます。

屋上へは、広島の歴史を振り返りながら歩くスロープ「散歩坂」でも上れます。展望台の入場料は大人2,200円、中・高生1,400円、小学生900円。営業は10時〜18時が基本で、当日券の販売と入場は閉館の30分前までです。広島電鉄の「原爆ドーム前」電停からすぐです。

場所
広島県広島市中区大手町(おおてまち)1丁目2-1
作品との関係
赤いサーブが相生橋を走る場面の撮影場所(広島フィルム・コミッションのロケ地マップ)
展望台
大人2,200円、中・高生1,400円、小学生900円
所在地大手町1-2-1。「原爆ドーム前」電停からすぐ。

出典:広島フィルム・コミッション・デジタルロケ地マップ
おりづるタワー・料金
おりづるタワー・アクセス

10小谷(こだに)SA(下り)|家福(かふく)がコーヒーとパンで一息つく場所

小谷SAの白い屋根の広場で、紙コップのコーヒーとパンの袋を手に立つ男性

山陽自動車道の小谷サービスエリア(下り)は、家福が休憩する場面の撮影地です。ロケ地マップでは、家福がコーヒーとパンを手に休んだ後、国際演劇祭が開かれる広島へ赤いサーブを走らせる場面と紹介されています。

東広島市にあるサービスエリアで、フードコートやレストラン、土産の売り場があります。下り線は広島方面へ向かう車が立ち寄る側で、映画の家福と同じ向きに走る旅の途中で寄れます。

場所
広島県東広島市 山陽自動車道 小谷SA(下り)
作品との関係
家福が休憩した後、広島へ車を走らせる場面の撮影地
利用
山陽自動車道の下り線(広島方面)から
所在地山陽自動車道の下り線。東広島市。

出典:広島フィルム・コミッション・デジタルロケ地マップ
ドラぷら・小谷SA(下り)の施設

どうして広島が、物語の場所になったのか

ロケ地を案内した言葉が、脚本へ入った

西武ロケーションサービスが公開する対談では、広島フィルム・コミッションの担当者が、ロケ地決定の経緯を語っています。当初は韓国・釜山(プサン)での撮影が予定されていましたが、渡航できなくなり、国内の候補地を探す中で広島が訪問先になったそうです。

広島への変更を決める過程で、フィルム・コミッションは中工場(なかこうじょう)を案内しました。監督は当初、広島が持つ歴史を十分に学ばずに撮影することをためらっていたと、担当者は振り返っています。中工場のガラス通路や、平和記念公園から海へ続く軸について説明したことが、舞台を考えるきっかけになりました。

視察から約2週間後、舞台を広島とした台本が届いたそうです。街を別の場所に置き換えるだけでなく、案内で交わした言葉が台本に入りました。中工場は、撮影が始まってから付け加えた名所ではなく、広島で映画をつくる判断に関わった建物でした。

出典:西武ロケーションサービス・撮影地選定秘話

ロケ地マップには、制作を支えた人の視点がある

広島フィルム・コミッションは、2021年7月19日にロケ地マップの公開を発表しました。国内公開の8月20日より前です。赤いサーブ900が走る道、写真、撮影のエピソードを地図へまとめ、映画の場面と地域の場所をつなぎました。

2022年6月には、撮影支援の取り組みがジャパン・フィルムコミッションのJFCアウォード最優秀賞を受賞しています。評価されたのは、台本が完成する前からの誘致に加え、地元企業や交通関係者との調整、公開後のマップなどです。ロケ地を提供した一度きりの協力にとどまらなかったことが、受賞の説明に挙げられています。

出典:JFCアウォード受賞の報告

広島フィルム・コミッションのデジタルロケ地マップ案内

車の中の会話と、舞台の上の言葉

家福(かふく)とみさき、それぞれが抱えているもの

西島秀俊(にしじまひでとし)が演じる家福悠介(かふくゆうすけ)は、妻の音を失った舞台俳優・演出家です。広島の演劇祭へ向かった家福は、三浦透子(みうらとうこ)が演じる運転手・渡利(わたり)みさきと出会います。物語では、二人が同じ車内で過ごしながら、少しずつ互いの過去に触れていきます。

家福が広島で取り組む舞台は、チェーホフの『ワーニャ伯父(おじ)さん』です。参加する俳優は、全員が同じ言葉を話すわけではありません。声の言語に加えて韓国手話も交わされる稽古(けいこ)が、車内での会話と並ぶ映画の大きな場面になります。

西島秀俊(にしじまひでとし)

妻の音を失った舞台俳優・演出家、家福を演じました。本読みでは感情を大きく載せず、句読点や読む速度をそろえて読み続けたと語っています。

三浦透子(みうらとうこ)

寡黙(かもく)な専属ドライバー、みさきを演じました。この役のために運転免許を取り、同乗者が心地よく過ごせる運転に集中したと話しています。

岡田将生(おかだまさき)

物語を大きく動かすキーパーソン、高槻(たかつき)を演じました。

霧島(きりしま)れいか

家福の妻で、秘密を残して突然この世を去る音を演じました。

濱口竜介(はまぐちりゅうすけ)

原作に惚れ込んで映画化を熱望し、自ら脚本も手がけた監督です。家福が車内で座る席を少しずつ変える演出を、脚本の段階から考えていました。

村上春樹(むらかみはるき)

原作の短編「ドライブ・マイ・カー」の作者です。短編集『女のいない男たち』に収められ、映画には同じ本の「シェエラザード」「木野」の要素も投影されています。

出典:映画公式サイト・作品紹介

家福(かふく)が座る場所が、少しずつ変わっていく

家福が最初に座るのは助手席の後ろで、みさきの運転や表情を確かめられる位置です。次に運転席の後ろへ移り、やがて助手席に座ります。監督は、座席の変更を脚本段階から考えていたと話しています。相手を見張れる位置から、見えなくても任せられる位置へ移り、最後に横に並びます。その変化を車の狭い空間で表しています。

出典:神戸映画資料館・濱口竜介(はまぐちりゅうすけ)監督インタビュー

みさきの静けさは、運転という仕事から生まれる

みさきを演じた三浦透子(みうらとうこ)は、この役のために運転免許を取りました。トーキョー女子映画部の取材では、監督から運転練習を役づくりと捉えるよう伝えられ、実際に運転と向き合うことで人物を知っていったと話しています。

三浦は、免許取得前から車が好きだったと話しています。役づくりの第一歩は、家福(かふく)を乗せる車を自然に運転できるようになることでした。運転中のみさきは、感情を抑える演技を意識するよりも、同乗者が心地よく過ごせることへ集中したそうです。

この説明を踏まえると、みさきが必要以上に話さない場面にも、仕事の具体性があります。相手の沈黙へ割り込まず、急な操作で身体を揺らさず、目的地へ運びます。三浦の役づくりは、人物の過去を想像することと、運転という実際の技術を身につけることの両方にありました。

出典:トーキョー女子映画部・三浦透子インタビュー

本読みは、相手の声を聞くための時間でもある

西島秀俊(にしじまひでとし)は、濱口監督との本読みについて、まず感情を大きく載せず、文章を正確に読み続けたと語っています。句読点や読む速度をそろえ、繰り返すうちに言葉が身体に入ってくる方法です。台本の読点が句点へ変われば、息を置く場所も変わります。

稽古(けいこ)では、映像に登場しない過去の出来事も演じたそうです。監督からの質問には、西島自身としてではなく、家福(かふく)として答えます。完成した場面の台詞だけで人物を組み立てず、その人物が別の日にも生きていた感覚をつくる準備でした。

西島は、国や言葉の異なる俳優との稽古についても振り返っています。分からない言語の台詞を合図だけで受け取る状態から、意味を理解し、もう一度その言葉を聞き直します。その過程は、映画の中で家福が行う演出と、実際の撮影準備が重なる部分です。

出典:映画.com・西島秀俊インタビュー

手話の場面では、言葉が身体にあることを感じる

ユナを演じたパク・ユリムは、出演が決まってから韓国手話を学びました。濱口監督は、感染拡大による中断期間もあり、彼女が長く練習を続けられたことを話しています。撮影現場では、演出部の渡辺直樹らが各言語のやり取りを支えました。

ユナの手話は、日本語の音声を手で置き換えたものではありません。声を伴わない俳優も、ほかの俳優と同じ稽古(けいこ)の時間を持ち、身体の動きで台詞を届けます。西島は、本読みで感情を抑えていた動きが、本番で大きな力を持ったと振り返っています。

出典:濱口竜介(はまぐちりゅうすけ)監督インタビュー
西島秀俊(にしじまひでとし)インタビュー

原作の短編と、179分の映画を往復する

原作「ドライブ・マイ・カー」は、村上春樹(むらかみはるき)の短編集『女のいない男たち』に収録されています。映画には、同じ短編集の「シェエラザード」「木野」の要素も投影されています。

出典:文春文庫『女のいない男たち』
映画公式サイト・原作について

音楽と風景を、少しゆっくり受け取る

二つのテーマから、映画の時間が広がる

石橋英子(いしばしえいこ)による音楽は、大きく二つのテーマを軸につくられました。冒頭と最後に流れる曲も、異なる物語を付け足すのではなく、同じ素材のテンポや楽器の組み合わせを変えて、映画の時間へ合わせています。

石橋は最初、脚本からハードボイルドな雰囲気を受け取って曲をつくったと語っています。監督とのやり取りでは、音楽が映像に密着しすぎず、観客に近い場所で鳴る距離感が話題になりました。撮影の延期で準備期間が延び、脚本や映像からいったん離れた後に旋律が浮かぶこともあったそうです。

録音では、簡潔な譜面を演奏者へ渡し、何種類かのパターンを収録しました。ドラムの違う演奏などを持ち帰り、石橋が組み立てています。あらかじめ一つの完成形を全員でなぞるだけではなく、演奏の選択肢を残して映画へ近づける作業でした。

出典:CINRA・石橋英子が語る映画と音楽

夜の車窓が、黒い背景になった理由

長い車内の会話を撮るには、車を一定の速さで走らせ続ける必要がありました。監督は、市街地の明るい道では信号による停止や減速が起こり、編集と演技の集中の両方に影響すると説明しています。高速道路が選ばれ、暗い窓の外を背に顔が浮かぶ画面につながりました。

監督自身は、俳優へ直接声を掛けられるよう、サーブの後部に設けた狭い空間でモニターを見ていたそうです。車外の別車両から無線だけで指示する方法より、撮影直後に肉声で話せる距離を重視しました。静かに続く会話の裏に、走る場所とスタッフの居場所の工夫があります。

出典:濱口竜介(はまぐちりゅうすけ)監督が語る車内撮影

予告編で確かめる、赤い車と広島の距離

配給元ビターズ・エンドの90秒予告では、広島の道を走る赤い車と、舞台の稽古(けいこ)が交互に現れます。中工場(なかこうじょう)の直線的な通路や車内で交わす短い言葉、演劇の台詞が重なり、映画が広島の風景だけを見せるのではなく、移動と稽古を行き来する作品であることが伝わります。

映画会社ビターズ・エンド公式・90秒予告

作品が広島へ届くまでの歩み

原作・映画・ロケ地の記録
  1. 1994年御手洗(みたらい)が重要伝統的建造物群保存地区に選定地域
  2. 2004年2月中工場(なかこうじょう)の建物が竣工(しゅんこう)建築
  3. 2013年短編ドライブ・マイ・カー発表原作
  4. 2014年4月短編集「女のいない男たち」刊行原作
  5. 2016年10月同短編集の文庫版刊行原作
  6. 2021年7月カンヌで脚本賞など4賞受賞映画
  7. 2021年7月19日広島FCがロケ地マップ公開を発表地域
  8. 2021年8月20日日本で映画公開映画
  9. 2022年2月インターナショナル版映像ソフト発売映像
  10. 2022年3月アカデミー賞国際長編映画賞受賞映画
  11. 2026年5月〜2027年2月中旬予定中工場の護岸(ごがん)の一部で工事・通行制限現地

出典:文藝春秋・単行本情報
広島フィルム・コミッションの2021年の発表
カルチュア・パブリッシャーズ・映像ソフト情報
広島県観光公式サイト・アカデミー賞受賞とロケ地

研究所メモ|撮影後に生まれた、ホテルのもてなし

ホテル側の証言では、2022年にアカデミー賞の候補になったことをきっかけに、スタッフが赤いサーブをイメージしたカクテルを考案しました。撮影に使われたバーで提供し、受賞後に多くの注文を受けたと振り返っています。

授賞式の日には、ホテルの一室でフィルム・コミッションと記者が発表を見守りました。スタッフは飲み物だけでなく、報道用の写真にも残せるくす玉を準備しました。撮影場所を貸す協力から、地域で映画の受賞を迎える場づくりへ関係が続きました。

この事例で特徴的なのは、架空の街を大掛かりに再現するのではなく、撮影した店と、そこで働く人の経験を生かしたことです。映画を見た人が実際のバーを訪れ、受け入れた側の記憶とも出会います。ロケの後に生まれる接点が、一本の作品とホテルの関係を長くしています。

出典:西武グループ・撮影支援担当者とホテル担当者の対談

よくある質問

中工場の見学には予約が必要ですか?

エコリアムの通路は予約不要で、9時〜16時30分に公開されています。年末年始は休みです。職員が案内する内部見学や団体見学は申込方法が異なります。

黄金山にはバス停からすぐ上がれますか?

広島市の徒歩経路では、「東本浦」から山頂まで約70分です。山の上まで運行する路線バスを案内したものではありません。歩いて登る場合は、往復の時間を見込んでください。

くららは広島市内にありますか?

東広島市にあります。最寄りはJR山陽本線の西条駅で、駅から徒歩約4分です。広島駅から西条駅までは、施設のアクセス案内で電車約40分とされています。

安芸灘大橋でETCは使えますか?

使えません。支払いは現金か回数通行券で、普通車は片道730円です。クレジットカードと電子マネーも非対応と道路公社が案内しています。

中工場の海沿いも、映画のように自由に歩けますか?

南側・西側護岸の一部は、2027年2月中旬まで工事に伴う立ち入り制限があります。映画に登場するガラスの通路エコリアムは、9時〜16時30分に予約なしで公開されています。

御手洗は広島市中心部からすぐですか?

御手洗は大崎下島にあり、広島市中心部の散策とは移動の規模が違います。県の観光案内では、JR呉駅からバスで約90分、JR広駅から約60分です。

ホテルでは、撮影に使った席を見学できますか?

現在の店舗は予約を受け付けていますが、撮影時と同じ席を確保できるとは案内されていません。バーや食事の利用として予約し、席の希望は店舗へ相談してください。